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「志」を旗頭に、新たな価値を量産する

構想を語り合う場、構想が混じり合う場を作ろう!

author: 長島 聡date: 2021/10/23

2021年5月末、日経新聞の「読者の提案」というコーナーが目に止まった。その時のお題は、「新型コロナが私たちに気づかせたものとは?」だった。20人近くの読者、世代は10-20代が中心だが、60代までの幅広い読者の声が次々に紹介されていた。比較的長い記事だったが、瞬く間に読み切ると、溢れ出す「未来を切り開くアイディア」から、たくさんの勇気をもらうことができた。

最初の提案はこうだ。「Z世代と呼ばれる私たちはこれまで、政治判断に翻弄される側だった。SNS上で議論を深め、おじさん世代では考えつかないアイディアを生み出し、政治にインパクトを与えたい」だ。山崎さんは、立ち止まって国の政治と自分の生活に向き合う中で、彼自身が未来を切り開く重要性を感じたのだと思う。

上田さんの提案にも同意しかない。「当たり前の日常に対して、疑問を持つこと。常に疑いの目を持ち続けること」の重要性を改めて気づかせてくれた。人、社会、地球に対して、真に優しいことはなんなのか。常に自らに問いかける癖を持ちたいと思った。

小田さんの提案は、「非言語の魅力発信」だ。コミュニケーションとは、「相手に聞く気持ちにさせることができなければ意味がない」と、極めて本質的で、でも忘れがちなことを語ってくれた。「内面からにじみ出る人間性を醸成すること。相手に関心を持ち、その期待に応える努力を怠らないことが求められる」と、日常から一歩一歩、みんなと一緒に未来を紡いでいきたいという気持ちが伝わってくる。

そうした気持ちとシンクロしたのか、鵜飼さんからは「弱さに寄り添うことの重要性」を教えてもらった。「人間の脆弱さを出発点として、弱い者同士が支え合い助け合う」。これは未来を描いていく上で、なくてはならないと思う。そして日本が本来得意とする考え方なのではないだろうか。

「助け合い、共助の精神を失わせているのは、人間の不寛容性だ」と語るのは、大村さんだ。「コロナが人間を不寛容にした。人々は他人の言動に敏感になり、社会規範からはみ出さないように監視している」との洞察には、強く同意する。確かに、この2年で「批判」、「批評」といったいわゆる「ダメ出し」、「それによる自粛」が増えた気がする。それも誰かが意図的に増やしているようにさえ感じる時がある。「今こそ、制限や制約を逆手に取り、できることを模索する時。そのためには不寛容性と向き合い、それを寛容していく必要がある」という言葉には大いに賛成だ。「こうしたらどうだろうか。こうした方がみんなで楽しめる」と、前に進む、結束に向かう流れを生み出していく勇気を持ちたいと思った。

岡本さんの「ただの私」という響きも素敵だ。ゆとりや安らかさを感じる。改めて、「ただの私、ありのままの私」でいることが普通で、無理など強いないことが当たり前である日常が、多様で優しい社会の実現への道なのだと気づかせてくれた。大塚道生さんの「人間らしい能力を大切にし、他者と協同する力を磨かなければならない」という言葉には、以前から自らが大事にしてきた「人間力を磨き続け、協同を能動的に進めていく」という意思を再認識させてくれた。また、協同を進めていく際には、飯田さんの言われている「自分の伝えたいことを丁寧に簡潔に話すという心がけ」も大事だ。ギクシャクは覚悟しつつも、考えを誤解なくしっかりと伝えながら、世代を跨いだ交流を増やしていきたい。

大塚遥香さんが見出した「取捨選択の果てにあった真に大切なもの」、佐竹さんの「不要不急か、大切か」など、大切なもの、本質的なものに立ち返る動きが、嬉しいことに、確実に生まれている。瀬川さんの「時間はプライスレス!」、和田さんの「"STAY HOME"から"STAY ACTIVE!”へ」からは、生きている「この瞬間瞬間」の大事さや、時間が貴重であることをしっかりと認識して、そうした時間を、未来を切り開くためにこそ使っていこうという意思を感じた。過去の振り返りばかりしていても何も生まれない。過去の振り返りは、「想い描いた未来」を、巧く切り開いていくために使える「先人の知恵」や「成功例、失敗例」を見つけ出すためにやれば良いのではないだろうか。

コロナ禍で、日本も世界も経済が大打撃を受けた。中小、中堅の企業の倒産もかなりの数に及んでいる。その一方で、ここでご紹介した方々のように、未来をしっかりと見据えて、力を蓄えたり、既に走り始めたりしている人もいる。こうした人は彼ら彼女らだけではない。日本中の至る所にいると思う。

これまでSNSといえば、不寛容性の象徴とも捉えられる「炎上」の話題が多く取り上げられてきた。でも、これからはもっと楽しく、もっと豊かな使い方をしたいと思う。巧く使えばポジティブの連鎖を必ずや生み出せるはずだ。この2年で個々人の中で育んできた想い、考え、そして構想を掲げて、対話を始める時が来たのだと思う。批判も批評もない、構想を聞いて、構想を膨らませて、構想に貢献して、構想を混じり合わせて「みんなの社会」を生み出す対話を始めていきたいと思う。

あ、Beyond magazineは、こんなコトを起こせるメディアではないだろうか。さあ、「未来志向の構想しばり」で、世代や分野を超えたつながりの連鎖を生み出していこうじゃないか。私も精一杯頑張ってみたいと思う。

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きづきアーキテクト代表
長島 聡

早稲田大学理工学部にて材料工学を専攻し、各務記念材料技術研究所(旧・材料技術研究所)にて助手として、研究に携わるとともに教鞭も執る。欧州最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーに参画し、東京オフィス代表、グローバル共同代表を務める。2020年には、きづきアーキテクトを設立。「志を旗頭に得意技を集め、新たな価値を量産する」をコンセプトに、共創を梃子にした事業創出の加速化を目指す。経済産業省、中小企業政策審議会専門委員など政府関係委員を歴任。スタートアップ企業、中小企業のアドバイザー、産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト WG3 産業構造転換分野 委員、Digital Architecture Design Center アドバイザリーボード、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特任教授などを務める。
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