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“布の使い”の深淵なる嗜好の世界

人を魅了する愛すべき世界の布たち

author: 澤村 尚徳date: 2022/04/07

布の使い手。そんな言葉があるか分からないけど、布の使い方が上手な人はオシャレだ。これは間違いない。例えば、一般的に馴染み深い布のひとつ、マフラー。色や柄、服との合わせ方、巻き方次第でオシャレアイテムか、ただの防寒布になるか。その差は大きい。

もちろん布は、首に巻くストールだけでなく、壁に飾るタペストリー、床に敷くラグなど、日常に浸透。オシャレのアイテムであり、生活を豊かにする装飾品であり、実用品でもある。

世界中は布で溢れている

世界を見渡せば、多種多様な布(織物)が存在し、地域や部族によって織り方やモチーフ、素材、使い方は大きく異なる。

例えば、コンゴの「クバクロス」、マリの「ボゴランフィニ」、イランの「ギャッベ」、トルコの「キリム」、ウズベキスタンの「スザニ」、インドネシアの「バティック」、インドの「ルンギー」、カンボジアの「クロマー」……個性あふれる布は枚挙にいとまがない(国名を記載したが、その国のみでなく周辺エリア一帯で作られている布は多い)。

またひと口に布といっても、手織り(手作業)か機械織りかでも大きく異なる。手織りは伝統を受け継ぐものが多く、長年にわたり愛されてきた。その分高価で、装飾品としての価値が高い。

実用品としても装飾品としても使われるスザニは、主にウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタンの中央アジアで作られている布。もともと嫁入り道具として母から娘へ受け継がれてきた。だから未完成の場所があり、受け継いだ者はそこを縫って完成させるのだ。
染め物も手法としては多い。上はタイ・モン族のインディゴ染めの刺繍が施された布。下はマリの泥染め。黒地に幾何学模様が特徴で、細い幅に織られた帯がベースで、それをつなぎ合わせて一枚の大きな布を作る。ともにコットンだが、手織り布の素材としてはこのほか、シルクか羊毛。天然素材が基本だ。
インドは土地が広大な分、布文化も多様。ルンギーのように機械織りで日常的に使うものも多いが、刺し子やブロックプリント、パシュミナなど、手作業で作られている布も多い。上写真がカットワーク、下写真が刺し子が施されたシルクのカンタ。気の遠くなるような仕事が施されている。
インドの布産地のひとつサンタンデールはブロックプリントが有名。ブロックを版画のように重ねて押していき、布を仕上げていく。
ブロックも市販品ではなく、オリジナルのデザインを起こし、彫り、できたスタンプを押していく。スタンプの絶妙なズレ加減も個性のひとつ。

ポップでカラフルな万能布「カンガ」

手作りの布は味わい深く、同じものがひとつとないためコレクションにはいいが、やはり日常使いには機械織りの布がぴったり。中でも万能なのが、ケニア・タンザニア周辺で使われている「カンガ」だろう。「キテンゲ」や「キコイ」、西アフリカの「パーニュ」もあるのだが、使いやすさとバリエーションの豊富さでは随一だ。

カンガはコットンに柄がプリントされたもの。現地では女性が身にまとっている姿をよく見るが、それだけでなくモノを包んだり、背負子にしたりと汎用性が高く、一枚あると重宝する。

オシャレで知られるマサイ族は、前にマントのように巻いていた。ちなみにマサイ族のブランケット(この中では横ストライプのもの)は軽くて丈夫。サイズも2.0×1.5mと大きく、ベッドカバーにもぴったり。
カンガの巻き方や使い方は、『カンガ・マジック 101』に詳しい。日本語版も出ているので興味のある方は参照されたい。こんなにアレンジができるなんてと驚くはずだ。 ちなみに日本で売られているカンガは、およそ160×110cmの一枚布だが、現地では同じ柄が2つ連なって一枚。それを切って端をかがって使うことが多い。 それだけならただの大判の布だが、最大の特徴はスワヒリ語でメッセージが書かれていること。これは「カンガセイイング」と呼ばれ、格言や諺、愛の言葉が書かれており、現地の人はこの言葉で布を選んでいるほど。
カンガセイイング。上から「ずっと一緒にいることを忘れないでいましょう」「物事は両面から考えることが大切よ」「母は家庭の光」。書かれていることは実に多彩だ。
ケニアのモンバサ、タンザニアのダル・エス・サラームには、カンガ店が軒を連ねる。壁一面カンガでびっしりだが、デザインは豊富なので、一度買い逃すと同じデザインのものは買えないともいわれる、一期一会の布なのだ。
デザインは、縁取りの柄“ピンド”と中央の“ムジ”、カンガメッセージの“ジナ”で構成されている。デザインは無数だが、自然のものをモチーフにしたものが多い。
ケニアとタンザニアとでは、デザインテイストが異なる。色使いはケニアの方がポップでワックスがきつめにかかっているため艶やか。タンザニアの方が落ち着いて素朴な面持ち。どこで作られたかもプリントされているが、実は昔、日本でも一時期カンガが作られ、輸出されていたことがある。
パーニュは、カンガのように決まった構成のデザインではなく、パターンがプリントされているため、メートル単位で購入可能だ。

日本では衣装としてなかなか着られないが、では何に使っているかといえば、まさになんでも。押入れの目隠しに部屋の仕切り、キャンプでのテーブルクロス、冬のストール、レジャーシート代わりの敷布、寒いときの掛布、風呂上がりの腰巻き、湯たんぽカバーなど。大きさといい素材といい、ちょうどいいのだ。

天然素材で作られて、繰り返し使えて、何にでも応用できる布は、昔ながらの生活を今に伝える存在。“布の使い手”とは、見た目を繕うだけではなく、ほころびを繕いながら大事に使うSDGsな人のことかもしれない。


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編集者
澤村 尚徳

大学卒業後、雑誌、書籍をはじめ、さまざまな紙媒体の編集に携わる。2017年、全国誌の編集長からITベンチャーに転職。コンテンツ作成、イベントプランナー、オウンドメディア編集長を経て、現在、出版社系Webメディア編集長。コンテンツ作りや体制作り、データの分析・活用など、企業メディアにおけるお悩み解決もしている。
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