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香りの世界への誘い

香水月間

author: なかやま ひろdate: 2021/12/27

10 月 1 日は日本フレグランス協会が制定した香水の日ではあったのですが、10 月はまさに香水月間だったんではないかというくらい、久しぶりに、それも日本国内で、多くの香水に触れるひと月となりました。GINZA SIX にて、10 月後半に開催された La touche finale parfumée と伊勢丹新宿店で開催された Salon de Parfum。自粛期間も明け、多くの方々が街に出かける様子もみられる中、日本の香りの現在地を主催者と出展ブランドに伺いました。

La touche finale parfumée

10 月後半、7 日間に渡って GINZA SIX の 2F のシジェーム ギンザにて開催された La touche finale parfumée は、“まだ見ぬ新たな香り”ニッチブランドの素晴らしさを知って頂くきっかけのイベントです。今回で 2 回目の開催となり、国内外から 11 ブランドが出展しました。

百貨店のようなリテール環境での開催は、香水愛好家だけでなく、アパレル商品やアクセサリーを求めて来店したお客様にも触れてもらえる、新しい客層を取り込むメリットがあります。GINZA SIX 自体が従来の百貨店よりはエッジの効いたリテール環境、シジェーム ギンザは人生経験を重ね、本質を極めつつしなやかに生きる大人の女性をターゲットにしていることから、「目の肥えたアラフィフだけではなく、フレグランスのライトユーザーやニッチブランドに興味を持つ若年層も視野に入れておりました」と語るのは主催者の白石 謙さん。

箱を開けるとフレグランスが好きのコアな方々、特に 20 代後半 ~ 30 代のお客様が多かったそうです。 

一定以上のフレグランス好き、特にニッチフレグランスブランドのファンによるリピート来場も多く、一方では今年新たに出展したブランドのファンが新規顧客として来場し、他のブランドにも関心を示していたようです。

私がお伺いした時にも感じましたが、前述したように、一昨年よりも 20-30 代の方々が多くいらしていたようです。

今年は香水だけでなく、ルームフレグランス商品も見かけました。お香業界の大手、日本香堂さんの社内プロジェクトから始まった、日本の良さをラグジュアリーに、香りにのせたブランド KITOWA は 3 つの日本の「木」の香りに焦点を当て、さまざまな商品展開をしています。「ディフューザーやお香など、そのギフト性に関心が集まったようです」と、ご担当の保科裕之さん。

主催者の白石さんは「一昨年は自粛期間でショッピングを控えていた消費者の購買欲が強く見られたが、今年は La touche finale parfumée の開催の後に、Salon de Parfum も控えていたこともあり、少々お財布の口が締まっていたようだった」と話します。

今でこそ、ブランドストーリーだけで購入決定されることも多くなった香り商品ですが、やはり試香はしたいもの。一昨年は Salon de Parfum より後に開催されたので、そちらで買いそびれた消費者が、同じブランドではなかったとしても、自粛期間で溜めていた購買欲に後押しされて購入に繋がったのが一昨年の感想のようです。

他のイベントとの関連性がイベント開催に重要なのは香りの世界だけではないですが、ニッチブランドはその希少価値にも魅力があり、少しお値段が上がるものもあり、消費者は少し慎重になる傾向があるかもしれません。また、日本でニッチフレグランスブランドの後押しをしているミレニアル世代や Z 世代は、多くを手に入れるよりも、自分に合った一点を手にしたい思いが大きいようで、吟味されているかもしれません。

日本に引っ越してきてから気づいたのですが、香りの商品を吟味する際、肌にはのせますが、サンプルをもらってじっくりとはいかないようです。これにはサンプル製作にコストがかかるが、売上には直結しないという課題があり、特に小さなブランドには負担が大きいです。戦略的には購入確率の高いお客様、つまり購入いただいたお客様にサンプルを渡し、次の購入に繋げると考えられます。

また、オンラインで香りをのせたムエット(試香紙)の販売や小分け販売を行っている事業者もあり、香りに関心の強い消費者は増加しても、そこで満足してしまう。ブランドからの直接購入までのハードルはまだ高いのかもしれません。

店舗まで出向くとなると、自分の肌に香りをのせてしっかり吟味したいもの。できれば、実際に使用したいシーンでの体験も提供できるといいのですが、購入に至らなかったカスタマーにサンプルは渡せなくても、コフレや小さいサイズをお手頃価格で提供するといいのかもしれません。

「ブランド別ではなく、例えばフローラル、ウッディーなどのカテゴリー別、香料別や世界観別など、フレグランスライブラリーのような空間演出をしたい」と白石さん。より教育的な見せ方となり、香りの素晴らしさを異なるアングルで伝える方法です。

白石さんとお話ししている中で、調香師やクリエーター別のショーケースというアイデアも上がりましたが、これは国内ではまだ時期尚早かもしれません。

夢は大きく、来年に向けて、白石さんは新しい切り口を模索中とのことでした。

Salon de Parfum

Salon de Parfum は伊勢丹新宿店で 10 月後半から 11 月初めに開催される「年に一度の香りの祭典」です。百貨店で取り扱いのあるブランドを中心に、デザイナーズブランドやメゾンブランドが出展します。

ちなみに、伊勢丹新宿店はどこよりもいち早くニッチフレグランスのコーナーを設置した背景があります。ニッチは尖ったイメージがあるのですが、「メインストリームやニッチを問わず、当百貨店の香りのトレンドはブレずにフローラル系」と三越伊勢丹の吉田広紀さん。

私は、拠点を日本に移した 2017 年からの参加ですが、過去 3 年間の開催を追っていたので、9 年目の今年、サイトを目にした瞬間から 2021 年は何かが違う! と感じていました。「運命の香水に出会う」をテーマにした今年は、開催初日から賑わっていたそうです。混雑が予想される初日を避け、金曜日の午後に伺いましたが、比較的若い方が多く来店している印象を受けました。

一昨年までは催事場で出展ブースを構える形のトレードショー形式でしたが、コロナ禍でソーシャルディスタンスに配慮した形での開催は、当百貨店のこれからの「香りのあり方」を示唆しているようにも感じられました。

一階のステージには回転寿司ならぬ、“回転香水”のように並んだ香水たちが。それぞれの前には、商品の説明と 2 つの QR コードがプリントされたムエット(試香紙)が配置されています。気に入った商品に出会ったら、一つ目の QR コードでは販売セクションの案内、もう一つの QR コードでは三越伊勢丹の化粧品オンラインストア「meeco」へ、繋げていきます。

ステージ上の販売員はフロアでお客様に積極的にお声をかけるスタイルを取らず、お客様ご自身で展示されている香りの作品とインタラクトとするギャラリーのサポートスタッフのような役割をしています。

参加ブランド数は 50 以上、商品数は 2000 点以上にのぼります。百貨店ですでに取り扱いのあるブランドだけではなく、イベント期間だけの参加ブランドもあり、ブランド側からの出展希望だけでなく、運営チームが SNS やウェブで話題のブランドにも声をかけたところ、私も以前取材をした Edit(h) さんの参加が叶ったそうです。

今年は特にダイバーシティ、来店する多様なお客様にフィットする品揃えに意識なさったようです。価格帯にも広がりを持ち、キャンドルなどのルームフレグランス商品にもラインナップを拡張。香水以外の香りアイテム数は 100 点以上あったとされます。

「催事場という特別な場所から解放された今年の Salon de Parfum は、香りへの敷居を低くし、アクセシビリティを上げた」と話す三越伊勢丹の吉田さんは、10 周年を迎える来年への抱負として、性別や使用用途の違いでの見せ方ではなく、お客様にとって良い商品、運命の香水(香り)に出会う仕掛けを、館の垣根を外したら可能なのではと考えているようです。すでに本館、メンズ館にて同じブランドを両方に置き、その試みの効果はみられているそうです。

私が、かつて香りにジェンダーは存在しなかった、マーケティング施策の一環であったお話を共有した際に、私より若い世代の吉田さんと広報 PR 担当の橋本洋美さんは驚かれているようでした。比較や相違を持ち出し、セグメント化することは物事の理解を促しやすくします。ですが、自分の直感で、自分が良いと思う香りが一番だと思います。私自身、男性用香水とされる Versace Aqua や Hermes Voyage d’Hermes を好んで身につけます。香りは究極なパーソナライゼーションであり、個々の好みで選択できる環境、販売側がその姿勢を見せれば、消費者のマインドセットもそのように変容するのでは、と思いながら三越伊勢丹の香りの現在地を伺いました。

出展ブランドのひとつ、Le Couvent des Minimes(クヴォン・デ・ミニム)。ブランドとしては 5 回目の出展です。「リベンジ消費というか、売上も客数も増加が見られた」と、ご担当の加藤和俊さんはお話くださいました。

Le Couvent des Minimes は Jean-Claude Ellena 氏をオルファクティブディレクターとし、その調香師チームで香水に新たな解釈をほどこし、香水業界に新しい風をもたらしています。100% ヴィーガンフレグランスブランドとして、修道院に伝わるボタニカルの伝統を受け継いでいます。

こちらのブランド、欧米ではドラッグストアなどで扱われており、もともと私自身はカジュアルな印象を持っていました。しかし日本進出にあたり、日本の消費者を分析した結果、よりスタイリッシュで洗練されたブランドとしてローカライズされております。

ボタニカル、シンギュラー、リマーカブル、シグネチャーとお客様のお好みやライフスタイルに合わせた 4 つのプランを展開していますが、ボタニカルラインは、価格帯もお手頃で、香りもわかりやすく、ここ数年のニッチフレグランスブランドの後押しをしているミレニアル世代や Z 世代に寄り添えるラインだと思います。

加藤さんは「香りの業界は次の世代の消費者を育てる必要性に直面している」と話されます。

こちらをエントリーポイントとしてブランドもこの世代と一緒に成長していける戦略を打ち出しているようです。

香水以外のアイテムの展開もありますが、今回のイベントでは私も愛用していたハンドクリームの取り扱いはありませんでした。それでも、キャンドルやルームスプレーなどの売り上げは全体の 20% ほどだったとのことです。

もうひとつのブランド、Salon de Parfum でデビューを飾った Thousand Colours の担当者、奈良 実さんにもお話を伺いました。Thousand Colours は香りのブランドというよりプロジェクトです。実は、Thousand Colours は 日本の香り=秘める美の世界への発信を追求した TOBALI の、ある意味、進化系です。自己表現から社会に対し何ができるか、視点を自分から周囲に向ける、香りが目的からツールに変化したプロジェクトです。この点、私もブランド Bridge and Blend のオーナーとして共感できる部分ではあります。香りに注目されるようになった昨今、ブランドのコンセプトを、ミッションを香りをツールとして伝えるブランドは増加しています。

TOBALIとして出展されていた 2019 年との比較を伺いました。催事場で開催していた 2019 年は目的を持ったユーザー、つまり香り愛好家の来場が多かったようですが、1 階で開催した今年 2021 年はライトユーザー、デパートに立ち寄ったついでに Salon de Parfum にも寄られた消費者も増えたようです。そんな消費者のなかに、初めて出会った Thousand Colours に共感して購入に至ったお客様もあったようです。

奈良さんによれば、「TOBALI は結果的に 30 代の客層が多かったとのことですが、この 2 年間で香りを求めるユーザーも増え、メディアでの取り扱いも増えました。Thousand Colours は社会の動きに合わせて、20 代にもわかりやすく、アクセシブルなブランドとしてリブランドしました」 とのこと。Thousand Colours は、今のユーザーの動向にマッチしており、香り商品を購入する客層の間口を広げる可能性を秘めています。

リテールでの香りのポジショニング

会話の最後に話題になったのは、「百貨店のフレグランスコーナーに求めること」。三越伊勢丹の吉田さんからの質問です。

私は百貨店では商品カテゴリーを超えた、IKEA のディスプレイのように、ライフスタイルの提案が、専門店よりも可能だと考えます。たとえば、すでに行なっているブランドもありますが、自社ブランドの香水とアパレル商品のマッチング。ブランドの枠も超えて、香り商品から他の商品カテゴリーへの誘導、これは百貨店ならではできる提案ではないでしょうか。

皆さんのお話を伺いながら、日本でもいろんな香りの体験ができるようになったなと、感慨深くなったひと月でした。

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香りのコミュニケーター
なかやま ひろ

香りのコミュニケーター。Project Felicia 代表。ニューヨーク・ロサンゼルス・パリ・シンガポールと海外でのキャリアが長いマルチワーカー。元広告代理店 IW Group、JWT、Burson-Marsteller、元人材会社デジタル担当、元香料会社ジボダンマーケティング担当。2017 年夏、活動拠点を日本に移し、日立製作所、Google、現在外資 CRM 企業会社員。「源氏物語が体験できるお香『Six in Sense』」を自社ブランド「Bridge and Blend」でプロディース。クラファン「Kickstarter」と「Makuake」でチャレンジ。五感を使ったマーケティングが求められる今「香り」の可能性を日々追求中。
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