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Column

香りの世界への誘い

ニューヨークで、香りのパーソナライゼーションサービスを体験する

author: なかやま ひろdate: 2022/06/25

近年、注目を集める香りのパーソナライゼーションサービス。実は、ここ数年で登場した新しいサービスというわけではなく、私が香りの世界へ足を踏み入れた 10 年以上前にはすでに存在していました。何をもってパーソナライゼーションというかはさておき、当時はカスタムフレグランスが主流でした。その多くは出来上がっている調香、ライブラリーから提案される香りのブランド、つまり調香師の主観が入ったジュースです。それでも、当時は画期的なものでした。

Algorithmic Perfumery by EveryHuman

先日、出張で訪れたサンフランシスコからニューヨークまで足を伸ばし、香り業界の友人たちと 2 年ぶりの再会。以前から体験してみたかった Algorithmic Perfumery がインテリア街で展示をしているという情報が入ったので、早速行ってきました。 Algorithmic Perfumery とは、読んで字の如く、香水の世界でアルゴリズムを活用するビジネスです。

EveryHuman

EveryHuman  の Algorithmic Perfumery は「感覚を活かして、人に力を与える」というコンセプトのもと、アーティスト兼テクノロジストの Frederik Duerinck さんと、香料業界のベテラン Anahita Mekanik さんの偶然の出会いから始まったプロジェクトです。

Algorithmic Perfumery は「アート X サイエンス X テクノロジー」の中間点に位置した、香りの世界を探求する世界初の AI ガイド付き香りの創造プラットフォームです。

また、哲学的です。なぜ私たちが好きなものを好きなのかという大きな「香り」のパズルを解くきっかけになります。香りの世界でキャリアを築いた Mekanik さんは、70 億の人類のために、なぜ 700 人が世界の香りを決めるのか、という疑問を投げかけています。昨今のパーソナライゼーションに関しても、香りの創造プロセスの主役は、私たち一個人ではないと思います。用意されたものから選んでいるに過ぎないのです。

Mekanik さんとお話しながらこのマシンを体験して、私は Algorithmic Perfumery には下記の 3 つのポイントがあると思いました。

  1. 新しいパーソナライゼーション
  2. 人間と機械の協働
  3. リアルタイムでシェアする喜び

ユーザーを香りの創造プロセスの中心に置いて、新しい香りの楽しみ方を提案する Algorithmic Perfumery について理解を深めたいと思います。

体験プロセス

Algorithmic Perfumery の体験方法は、EveryHumanの公式サイトにアクセスしてアカウントを作成、「Create for yourself」を選択、「Continue your scent experince」をクリックしてスタートです。

暮らしている環境 ー 都心なのか、郊外なのか、田舎なのか ー の質問から始まり、心理学で使用されるパーソナリティテストの Myers-Briggs に出てくるような質問のシリーズ、自分を色で表現したり。サイドノートですが、この記事を書きながらこの一連の質問に再度、回答しています。

香りとは少し離れますが、現在とてもストレスを感じており、自分に向き合う絶好な機会となりました。「自分自身と向き合う参加型インスタレーション」と話されていたことを実感しています。現状でもいいのですが、なりたい状況とか、感情とかを選択して未来の自分の香りを創りだしても面白いかもと思います。

最後の質問の「どのようなアングルから質問に回答しましたか?」は面白かったです。回答選択の中に、このシステムに挑戦とあります。

さて、このプロセスの後、AI が作成した 3 つの香りの提案を待ちます。マシンの側でしたら、そこに提示されるコードを上記のマシンに入力すると、マシンが動き出します。私はベルトコンベアのような重機の動きが好きなので、自分自身が香水瓶になってそこにいるような気分になるのですが、どのような香りが試香できるのか想像しながら、この単純な動きは見ていても飽きません。

AI が私に提案した香りはウッディー、フローラルフルーティーな甘い香り、グルマンの 3 つ。この中から好きな香りのブレンドを調整して、さらに 4 つ目の香り(実際のサービスでは 2 つ)を。多くの体験者は、3 つの中から最初に提案された香りを選ぶそうです。

ファーストインスピレーションでしょうか? AI が正確なのでしょうか? 私も同様に最初の香りが一番しっくりきました。ですが、これを身に付けるかというと、そうではないので、4 つ目の香りの提案用に身に纏いたい香りに Tweak。Mekanik さんのアドバイスのもと、下記のように変更。

日本の伝統的なお香でも多く使用する Oud を基調にするため、ボトムのつよい Leather とWoody Amber を外し、透明感を出す Sheer と柔らかさをプッシュする Powdery を追加。ウッディー調は残しつつ、爽やかさも欲しいという私のワガママを AI は聞いてくれました。 (01 と 04 の香りを体験したい方はご連絡ください)

香り作りのプロでなくても心配はありません。こちらのプラットフォームは、私も提唱している「香育」、香り教育にも力を入れています。アプリの中の Library には、それぞれの香りの説明がフレグランスカテゴリーを中心に分かりやすく記載されており、どの香料がブレンドされているかわかるようになっています。

消費者に包み隠さず、トランスパランシーを大切にしているのが分かります。これも従来の香りの世界の課題です。ちなみにお香の世界ではまだこの部分が遅れていると思います。またよりビジュアルに捉えるために色やイメージを用意してあります。

ここにも香り業界ベテランの経験が活かされています。感性に関わるモノゴトは完全に客観的になることはない、と言います。つまり、極力客観的に捉えていても、用意された香りの描写やアコード(調合)には Mekanik さんの主観が入っています。従来と異なることは、集められたデータでこれらは常にアップデートされています。

「香水教育の機械化、あるいはポゴスティックのようなものだと想像してください。もしかしたら、あなたが気に入るかもしれない香りを作ってくれるかもしれません」(EveryHumanより)

人間と機械の協働

前述した通り、Algorithmic Perfumery は、アート X サイエンス X テクノロジーの中間点に位置した香りの創造プラットフォームです。この香りを生み出すプロセスは(香りのプロではなく)あなた自身が主導し、AI は既存のデータを学習し、あなたの新しいデータで補い、あなたに合った個性的な香りを作り出します。どちらかだけでは成り立たず、どちらかが上でも下でもないのではと思います。

哲学的なビジョンのもと走り出したプロジェクトで、Duerinck さんと Mekanik さんはこのマシンを自分自身と向き合う参加型インスタレーションとして構想しました。

世界中のアートやデザインの祭典を巡り、幅広い層の観客の関心を集めると共に、データ収集だけでなく、ユーザビリティも学んできました。現在のマシンは第 3 世代で、常に改良を重ねるチームは今や 15 名ほどに。

彼らはこの全プロセスをアートと捉えているからこそ、インテリア街で展示していたのです。以前は日本の皆さんもご存じの ACE Hotel で体験会を開催していたようです。

シェアする喜び

従来の香りのパーソナライゼーションは確かに自分だけのモノでした。

残念ながら、私は自分が創った香りをシェアする相手がいなかったのですが、このマシンまたはプラットフォームがあれば、自分がアプリで質問に回答して生み出した香りを離れた場所の友人とリアルタイムで共有することも可能です。

B2B の香り作りの事例ですが、クライアントはカイロ、機械は NY。彼らは、自分たちのためにつくった香りのひとつを気に入り、より深みのある甘い香りのバージョンをつくりたいと言ってきました。そこで、二ヶ所同時に配合を見て、Mekanik さんはいくつかの提案をして、NY から直接カイロの機械のベルトコンベアに「落とす」ような微調整をしました。

さらに、NY でも同じ処方をマシンで作り、リアルタイムで同じ香りを嗅ぎ、印象をシェアすることができました。そうやって、クライアントが気に入るようなバージョンになるまで、何度も何度もやり直しました。

このプラットフォームは、マシンが稼動している場所であれば、遠隔でリアルタイムにクリエイティブなセッションを行うことが可能です。つまり、香水をクラウド化した事例です。

私たちは、すべての人が自由に選択できる生得的な権利を持つ創造主であると信じています。創造の喜びは、私たち自身と、他者と、そして私たちを取り巻く世界とを結びつけるものです。このつながりが、私たちの想像力を解き放ち、夢を見たり、遊んだり、創造したりするのです。私たちは、想像力こそが、進歩と幸福の背後にある永遠の魔法であると信じています。(出典:https://www.everyhuman.com/us/about)

Anahita さんとは過去に一度か二度、会話をしたことがありますが、今回のような深いお話をする関係ではありませんでした。お互い顔を合わせるなり、私たちの嗅覚が生み出す新たな試みに目を輝かす姿が印象的でした。

香り x テクノロジー は今に始まったことではなく、50 年以上も前から挑戦が続いています。過去のイノベーションの賜物が Algorithmic Perfumery につながったんだと思うと、非常に感慨深い体験でした。


author

香りのコミュニケーター
なかやま ひろ

香りのコミュニケーター。Project Felicia 代表。ニューヨーク・ロサンゼルス・パリ・シンガポールと海外でのキャリアが長いマルチワーカー。元広告代理店 IW Group、JWT、Burson-Marsteller、元人材会社デジタル担当、元香料会社ジボダンマーケティング担当。2017 年夏、活動拠点を日本に移し、日立製作所、Google、現在外資 CRM 企業会社員。「源氏物語が体験できるお香『Six in Sense』」を自社ブランド「Bridge and Blend」でプロディース。クラファン「Kickstarter」と「Makuake」でチャレンジ。五感を使ったマーケティングが求められる今「香り」の可能性を日々追求中。
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