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厚底のネクストはヒールレス!?

ミズノが作った「踵がないランニングシューズ」を履いてみた

author: 神津文人date: 2022/08/17

近年は、カーボンプレートを搭載した厚底シューズがランニング界を席巻。トップアスリートも市民ランナーもこぞってレースシューズに選んでいる状況で、メーカー間の開発競争も激化している。そんな中、ミズノが大胆かつ斬新なシューズを発表。シーンに新風を巻き起こしそうだ。

8月1日に都内で開催された新作発表会。会場に飾られたシューズを目にした瞬間にいきなり驚かされた。シューズの踵部分が大きく浮いているのである。最初は展示用に上から吊っていたり、シューズを立たせるために裏から何かを噛ませているのかと思ったのだが、近づいても何もない。中足部だけが接地して踵が浮いている状態でバランスをとっている。ハイヒールのヒールをとったようなシルエットでシューズが静止していたのだ。

発表会場での写真。シューズがこの状態で静止していることに驚いた

一体どのような経緯で誕生し、どのような機能を備えたシューズなのだろうか。ミズノによれば、「既成概念に縛られることなく、人類をいかに速く走らせるか」をテーマにゼロベースでランニングシューズ作りを考え直したのだという。

ウエーブデュエルプロ 29,700円

人が速く走るために、シューズにはどんな機能が必要なのか。軽いこと、フィットすること、大きなエネルギーリターンが得られることは既存のシューズも追求している要素だ。これらに加えてミズノが着目したのがフォアフットランニングだ。フォアフットランニングとは、前足部から中足部で着地する走法のこと。踵から着地し前足部へと抜けていくヒールストライク走法と比較して、より速く走ることができると言われている。「ウエーブデュエルプロ」は、このフォアフットランニングのサポートに特化したシューズであり、その結果、踵のない斬新なスタイルとなったのだ。

フォアフット走法をサポートし、いかに効率良くランナーをゴールへと導くか。ミズノが今までに短距離用のスパイクの開発で得た知見も活かされ、SMOOTH SPEED ASSIST(スムーズ スピード アシスト)という新機能が誕生した。

SMOOTH SPEED ASSISTとは、大きく3つの要素からなる独自のソール形状のこと。前足部はフォアフット接地時に自然な角度になるようなカーブを描いており、十分な足幅が確保されている。中足部は拡張されており、接地時に安定しながら大きなエネルギーリターンが得られるようになっている。そして踵部分を大胆にカットすることで、自然なフォアフット接地をサポート。軽量性にも寄与している。

ソールの中足部が拡張されている

厚底シューズを含む既存のランニングシューズの場合、フォアフットで着地した際に重力によって踵が下がる。これをふくらはぎ周辺の筋肉によって支えて前へと進んでいくのだが、SMOOTH SPEED ASSISTはこの時のふくらはぎ周辺の筋肉の負担を軽減できるのだという。結果、レースの後半にも脚の力を残すことができるというわけだ。

ミッドソールに採用している素材はMIZUNO ENERZY LITE(ミズノ エナジー ライト)。ミズノの従来素材と比較して柔らかさが約22%、反発性が約35%向上しており、これもフォアフットランニングを支える一助となる。

また、ミッドソールの内部にはナイロン素材をカーボン繊維で強化したプレート、MIZUNO WAVE(ミズノウエーブ)をフルレングスで搭載している。このプレートはミッドソールの形状の保持という役割を果たし、安定性の向上にも貢献。ミズノが考える理想的な足運びをサポートする。

フォアフットランニングに用途を限定するというかなり尖った仕様だが、だからこそポテンシャルを秘めているとも言える。42.195kmを走るマラソンは、普通の感覚で言えば超長距離だが、世界のトップレベルで戦おうとすればかなりのスピードが求められる。男子フルマラソンの世界記録は2時間1分39秒。100mを約17.3秒、時速約20.8キロというペースで走り続けていることになる。このスピードをヒールストライクで維持するのは極めて困難なはずだ。フォアフットランニングにフォーカスしたシューズは、少しでも速くゴールに辿り着こうとするトップランナーたちの大きな助けになる可能性がありそうだ。

実際に履いてみたが、完全に未知なるシューズ

実際に足を通してみると、踵がないのでかなり驚きがある。完全に未知のシューズといった感覚だ。シューズに任せて立ってみると、当然、中足部での接地になり、踵は床から浮いている。爪先立ち状態だ。体は少し前傾になる感覚がある。踵を着こうとすれば腰が落ちてしまいかなり窮屈な姿勢になる。立ち仕事やウォーキングには全く適していないシューズだ。

走り始めると、当たり前だが強制的にフォアフットランニングになる。無理せずとも、体が前傾し、着地のスポットは前になるので、スピードが出しやすいのは間違いない。筆者はそもそも走力不足で、フォアフットランナーでもないので、この状態を維持するのは難しいが、レベルの高いランナーがこのシューズを使いこなせたら大きな武器になるのではないだろうか。少なくともこのシューズと相性の良いランナーは少なからずいるだろうし、相性が良ければパフォーマンスアップが見込めそうだ。

ふくらはぎの負荷がどれだけ軽減されているかまでは、筆者の走力では判断しかねるが、体幹や臀部を自ずと使う感覚にはなった。今後フォアフットランニングを身につけたいと考えているランナーのトレーニングギアとしても良さそうな気がする。

見た瞬間にワクワクを感じるシューズというのは、それほど多いものではないが、「ウエーブデュエルプロ」のルックスには期待感、未来感がある。気になった方はぜひ一度足を通してみてほしい。

尖った機能を持つシューズだからこそルックスも魅力的だ
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ライター・編集者
神津文人

雑誌編集者を経てフリーランスに。「Tarzan」などのヘルス&フィットネス系メディアや、スポーツの領域で活動中。「青トレ」(原晋/中野ジェームズ修一著)、「医師も薦める子どもの運動」「医師に運動しなさいと言われたら最初に読む本」「60歳からは脚を鍛えなさい」(中野ジェームズ修一著)、「100歳まで動ける体」(ニコラス・ペタス著)、「肺炎にならない!のどを強くする方法」(稲川利光著)、「疲れない体になるライザップトレーニング」(RIZAP)などの書籍の構成も手掛けている。趣味は柔術、ときどきランニング。
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