服を選ぶのは、毎日のこと。「ただの選択肢」って思いがちだけど、実はその「服」には、暮らし方や今日の気分、積み重ねてきた価値観が無意識に映し出されているのかも。
Beyond magazineでは、そんな“着る理由”について探るべく街のユースたちに直撃!
「今日、その服を着た理由ってなに?」


左:KENさん@__knt__15、右:RUNAさん@chekino.jp
バギーシルエットのパンツがお揃いのKENさんとRUNAさん。学生時代からファッション好きなお二人に話を聞きました。
── 今日のファッションのポイントは?
KEN:僕はこのトップスを着たいと思っていたので、それに合うパンツを選びました。
RUNA:私は逆に、パンツを主役にコーディネートを組みました。自分でつくったアクセサリーをアクセントにしているのがポイントです。


手作りのネックレス
──いつ頃からファッションを楽しむようになったんですか?
KEN:僕たちが通っていた高校が私服OKの学校で、自然とファッションに興味を持つ環境だったんですよね。
RUNA:中学生の頃から青文字系の雑誌を読んでいて、そこから少しずつ自分の好みやこだわりができたと思います。お金をかけなくても“自分の思うかわいい”を古着やプチプラの中から探していくうちに、お洋服を選ぶのが楽しくなりました。
── 平日は、会社員としてスーツやオフィスカジュアルで過ごしていらっしゃるそうですね。休日のファッションには、どのような意味がありますか?
KEN:平日は、自分の好きな服をなかなか着る機会が少ないんです。だからこそ、週末はおしゃれを楽しめる大事な時間ですね。自分のスタイルを表現できる、数少ないタイミングだと思っています。
RUNA:休日のコーディネートを撮影してSNSに投稿しているんですが、それがきっかけで同じ感覚の人とつながれるのがすごく楽しくて。
── ファッションは、ただ「着る」ためのものではなく、自分を表現する手段であり、誰かと出会うきっかけにもなる?
RUNA:気分が上がるのはもちろんですが、出会いの幅が広がったり、自分を好きになれるきっかけになるかもしれないですね。今では自分にとってすごく大切な趣味になっています。

KENさんとRUNAさんにとってファッションは単なる趣味ではなく、自分らしさを取り戻す時間であり、自分を発信する楽しさでもある。
「着ること」は、日常のテンションを上げるだけでなく、誰かとの関係や、自分自身へのまなざしをやさしく変えてくれるのかもしれない。


桜子さん @hnkr_sk
「走るときも、かわいくありたいんです。」
そう話してくれたのは、ランニング中だった桜子さん。
普段のファッションは、古着やアメカジ、キレイめ……と幅広く、“その日の気分”のままに楽しむタイプ。そんな彼女に、“着る理由"を聞いてみた。

──普段からスポーティーな服装が多いんですか?
全然です(笑)。古着が大好きなんですよ。
古着にしかない色味やシルエットなど、“ちょっと変わった”アイテムを見つけるとつい買ってしまいます。淡い色も好きで、青や緑、ピンクもよく選びますね。名前が「桜子」だからか、自然とピンクに惹かれるんですよね(笑)。
── 今日のランニングコーデにも淡い色が入っていますね。走るときも意識されているんですか?
意識しますね。かわいい服だと、モチベーションが上がるので。気分次第で色を揃える日もあれば、古着のTシャツにNIKEやPUMAのパンツを合わせることもあります。

── 服を選ぶときは、気分で選ぶのが最優先?
自分が「着たい」と思えるかどうか、それだけですね。その服でテンションが上がるか? という基準で色やシルエットを選んでいます。日によって、フリフリな服を着る日もあれば、くたびれたスウェットを選ぶ日もあるし。気分に正直になって、幅広く着ていますね。
誰かを参考にするというより、「このズボンを履きたいから、それが似合う自分になる」という感覚が近いかも。

桜子さんの“着る理由"は、「これが着たいから着る」という、とてもシンプルでまっすぐなもの。服は、自分の気分を上げてくれる、身近なツールのひとつなのかもしれない。


サッカークラブのゲームシャツに、スラックス、革靴をさらりとあわせたスタイルが目に留まり、声をかけたのは銀行に勤めているという類さん。
──今日のファッションポイントを教えて下さい。
腕にタトゥーを入れる予定があったので、脱ぎやすい格好という基準で服を選びました。ファッションポイントは、トップスのサッカーゲームシャツですかね。
──好きなサッカー選手のユニフォームなんですか?
ユヴェントスというチームに所属していたアレッサンドロ・デル・ピエロ選手のユニフォームです。元々、母が好きな選手だったので、自然と彼のプレースタイルやファッションに憧れていきました。

アレッサンドロ・デル・ピエロ選手のユニフォーム、背番号10
──トップス以外のアイテムはどのような基準で選びましたか?
ボトムスは父から譲り受けたRALPH LAURENのパンツで、靴はメルカリで買ったParabootの革靴をあわせています。トップスがラフでスポーティーな印象だと思ったので、クラシックな要素を組み合わせてバランスをとるのが良さそうだなと。
──古着やヴィンテージのアイテムが多いですね。
最近は古着がほとんどですね。新しいものを買うより、昔のピースをどうやって“今”に馴染ませるか? 考えるのが楽しいです。
──なにか影響を受けたものはありますか?
映画好きの父の影響で、ジェームズ・ディーンやスティーブ・マックイーンが出演している映画を観て育ちました。昔の映画ですが、劇中の衣装がすごく素敵だなと今でも思います。
そういった子どもの頃に影響を受けたカルチャーや憧れの人物の存在は大きいですね。昔から変わらず素敵だなと思えるものを、今の自分に落とし込むと自然と古着が選択肢に入ってくるのかもしれないです。

類さんの“着る理由"は、昔から変わらず惹かれてきたものに、今の自分の感覚を重ねること。 ずっと「かっこいい」と思い続けてきたものに目を向けてみると、“着る理由"が、少しずつ見えてくるのかもしれない。


左:neneさん、右:かれんさん
アパレルブランドの宣伝に携わるneneさんとかれんさん。スポーティーなウェアにカジュアルなアイテムを重ねたスタイルのお二人の“着る理由"は?
──今日のファッションのポイントを教えてください。
nene:今日は人生で初めてのマラソン大会に出場してきました! 走りやすさを意識しつつ、気合いを入れすぎてスポーティーな服装だけになると、私らしさが薄れる気がしていて。あえて、普段からよく着ている服を組み合わせて、力の抜けたコーディネートにしました。好きなシャツを取り入れたことで、自分らしさも残せたかなと思っています。
かれん:私はスポーティーなアウターを、普段着っぽく着こなせるように意識してみました。普段、まったく走らないのでスポーツ用のキャップとか持っていなくて。ただ、なにかアクセントが欲しいなと思って、バンダナを取り入れてみました。

──普段から、その日の予定をもとに服を選ぶことが多いですか?
nene:「どこに行くか」よりも、「誰と会うか」で服を選ぶことが多いですね。自分らしいスタイルでありながら、相手と心地よく調和できる服装だといいなと思っていて。
仕事柄、様々なスタイルの服を着ている方と接する機会があるんですが、自分のスタイルをしっかり持ちながら、“誰かと会う”ことを大切にしている人が多いと思います。
かれん:私も、「誰と会うか」は服選びの大事な基準ですね。あとは、サイズ感やバランスも大切にしています。今日はワイドパンツを履いているので、丈の短いトップスの方がバランスよく見えるかな? と思って選びました。自分の見せたい雰囲気やスタイルに合わせて、少しずつ工夫しています。

──では最後に、“着る理由"を教えてください。
nene:難しいですね……(笑)。自分が自分のために選んだ服を「好きだな」と思えたとき、すごく嬉しくなるんです。好きな服で誰かに会えるのは、とても前向きな気持ちになれる。自分らしさを保ちながら、そっと背中を押してくれるような存在だと思います。
かれん:服はもちろん好きなんですけど、衣食住を含めたライフスタイル全体に興味があって。服は、気持ちよく、豊かに暮らすための“道具”かな。

ふたりの話を聞いていると“着る理由"は、単なるおしゃれや自己表現ではなく、誰かと過ごす時間やその日の空気感に自然と寄り添うようなものだと感じる。
服は、自分らしさを整えながら、人との関係や日々の気分をさりげなく映し出してくれる、そんな道具なのかもしれない。


ryo katoさん @ryokato.jp
以前、Beyond magazineに出演してくれたラグアーティストのryokatoさん。
この日、身につけていたのはフーディーにデニムという、シンプルなスタイル。
── 今日のファッションのポイントはなんですか?
フーディーは、中目黒にあるnumber3nakameguroという古着屋のオリジナルのもので、パンツは絵描きのLee Izumidaちゃんがワークショップで描いてくれたものなんです。どちらも友達が作ったり描いてくれたものですね。デザインが気に入ってて、最近よく着てます。
── 昔から服は好きだったんですか?
好きでしたね。10代の頃なんて、毎週のように新しい服を買っていたし、Tシャツは100枚以上持っていたと思います。ただ、いろいろ買っていくうちに気づいたんです。10足の靴があっても、履くのは2~3足だけだったり。服も、気づけば毎回同じものを手に取っているなって。
──今、服を選ぶときに大事にしていることは?
落ち着くかどうかですね。サイズ感や丈感、帽子の深さまで、自分の身体にフィットしているか。どんなにグラフィックが好きで「物」として好みでも、サイズが合わなかったら結局着ない。
逆に、フィットするものなら、毎日でも着られる。それくらい自分の中では大事な基準になっています。

── “着る理由"って、何だと思いますか?
自分が無理せず、心地よく過ごせることですかね。身軽さのなかに、自分のテンションを上げてくれる要素がちょっと入っていれば、それでいいんだと思っています。“好き”と“生活しやすさ”が重なっている服。それがいちばん理想かもしれません。

服は、無理をして装うためのものではなく、自分の体にや生活、気分にぴたりとフィットする一着。心地よく生きるための道具であっていい。それが、長く付き合っていける“着る理由"になるのかも。
5人のユースに聞いた“着る理由"には、自分の内側から湧き上がる"心地よさ"があるようだった。
流行やトレンドを追うことも大切だけど、最後は「今日の私がこれを着たい」という、シンプルな気持ちが原点になるのかもしれない。
あなたは今日、どんな理由でその服を選びましたか?
その“なんとなく”の奥には、思いがけず大切な何かが隠れているのかもしれません。