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SNSが拡張するZ世代の推し活カルチャー

萌えから推しへ。Z世代の推し活は、従来のヲタク文化となにが違うの?

author: iMagodate: 2022/12/27

テレビの特集やネットニュース、街中の広告に至るまで、ここ数年で「推し活」という言葉をよく目にするようになった。そもそも推し活とは、アイドルやキャラクターなどの「推し」を様々な形で応援する活動のことを指す。熱狂的なアイドルファンが自分のお気に入りのアイドルを「推し」と呼んでいたのが始まりだ。今となっては熱狂的なアイドルファンのみならず、比較的ライトなファン層まで、幅広いジャンルと世代で使われる言葉へと進化した。

推し活はZ世代の当たり前

推し活をするZ世代の割合(出典:SHIBUYA109 lab.

この推し活カルチャーを盛り上げる中心となったのがZ世代だった。驚くことに、推しがいるZ世代の割合は8割を超える(2022年SHIBUYA109 lab.の調査)。この数値からも分かるように、推し活をしていることはZ世代にとって当たり前となった。Z世代が利用するSNSを見ても、推し活の様子をアップしたり、推しの情報を発信したりすることがスタンダードになっている。つまり、推しを全力で応援するのは恥ずかしいことではなくなり、むしろ自分のアイデンティティを表現する手段のひとつとしてポジティブに受け入れられているのだ。

熱狂的なファン活動がヲタク文化と言われていた頃から比べると、信じられないほど大衆に受け入れられるようになった推し活。どうして推し活だけがこれほどまでに市民権を獲得できたのだろうか。この現象を正しく理解するには、あらためてZ世代の推し活と従来のヲタク文化が異なる点に注目する必要がある。

萌えから推しへ。ヲタクと推し活は大きく違う

推しの誕生日を祝うために飾り付けをするファン

ヲタク文化と推し活は、似ているようで実態は大きく異なる。その代表とも言えるのが「萌えから推しへの変化」(『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』、著・中山淳雄、日経BP)という言葉である。かつて、オタクはキャラクターへの愛着を表現するのに“萌え”という言葉を使っていた。この言葉と入れ替わるように広まったのが“推し”という言葉だ。

萌えと推しの違いとして、萌えが内なる感情によって対象に接するのに対して、推しでは活動として対象に何かを与えたり、一緒に何かをしたりすることを重視する、という特性がある。萌えの最盛期は、「電車男」がヒットした2005年あたり。そこから徐々に推しへと言葉が移っていき、現在では男女世代問わず広く使われるようになった。

「萌え」から「推し」への変化は、何も言葉の変化だけではない。ファン活動に対する内容や価値観も確実に変化しているのだ。萌えが使われていた時は、アニメを見たりフィギュアなどのグッズをコレクションしたり、いわば自己完結する楽しみ方が多かった。一方推し活は、推しの魅力を周りに拡散しながら応援する楽しみ方が多い。

例えば、推しを布教するという行為。ここで言う布教とは、自分が愛してやまない推しの素晴らしさについて、家族や友人などに発信することを指す。自分の推しの魅力を伝えて、自分の周りの人にもファンになって貰おうとしているのだ。布教のための推し活エピソードは枚挙にいとまがない。

友人を連れてよしもと劇場を訪れる女性ファン

例えば、CDや本を布教用に複数枚購入し友達に配り歩く人や、ライブなどの現場に友達を連れて行って一緒に鑑賞する人など、驚異的な熱量を持つファンが積極的に周囲に推しをアピールしている。そうやって布教した人の中から新たなファンが生まれ、またそのファンが周りに布教する。こうしたサイクルによって、ファンの内部から広がるようにネットワークが拡大していくというわけだ。

布教をしろと、誰かに頼まれているわけではない。では彼らはなぜ、ここまでして推しの良さを発信するのか。その背景には「自分たちが推しをビッグにするんだ!」という推し活への強い貢献意識や応援意識が存在する。ファンは、お金やエネルギーを「貢ぐ」ことで運営に働きかけ、そのコンテンツをもっと盛り上げていける。その意識があるからこそ、彼らは当事者意識を持って、自主的に推しの魅力を広める役割を担ってくれるのだ。

推し活は、SNSの安全な使い方?

応援するだけではなく、参加することも可能になった現代の推し活。ユーザーにとってコンテンツは一方的に消費するものではなくなった。例えば、推し活専用のSNSアカウントを作成して情報を発信したり、推しの二次創作コンテンツを生み出したりするファンの割合は年々増加している。

このことから分かるのが、ファンの役割がコンテンツの消費者から、推しとともにコンテンツの世界を拡げる共同生産者へと変化を遂げたということだ。この背景には「推し活を用いたアイデンティティの差別化」がある。

推しの広告と写真を撮るために並ぶファンの様子

SNS初期の王道は、自分の生活を切り取り、綺麗に見せるものだった。例えば、加工した自撮り写真などの「ビジュアル」や、リゾート地への旅行風景などの「ラグジュアリーな生活」の投稿が挙げられる。

Instagramをそのような自慢大会をする場だと認識している人もいるだろう。ただ、これは特定の人しか出来ず、なおかつ炎上リスクが高い、というデメリットがある。容姿やラグジュアリーな生活などの投稿は、往々にして嫉妬や僻みの対象となり、槍玉に上げられることが多い。

これに代わって台頭したのが「推し活」を用いた自己表現だった。「推し」の話題であれば、自分自身の能力を問われず、また受け入れる側も親和的な気持ちを持っている。そのため、自分が直接批判される危険を回避できる。つまり、自分を切り取りその優劣を競う表現とは対局の「誰もができる安全な自己表現」が「推す」という行為だったのだ。                   

シェアがゴールの推し活体験

SNSで推し活をする人が増えた理由は、炎上の回避性だけではない。推し仲間と一緒になって盛り上げる一体感が味わえることも、SNSと推し活の相性が良い理由のひとつだ。

Twitterでは #〇〇誕生祭 をトレンド入りさせて盛り上げる

Twitterを見ると、ハッシュタグを使って推しの話題をトレンド入りさせようとする試みが毎日のように起こっている。例えば、推しの誕生日の時は「#〇〇誕生祭」をトレンド入りさせようと、多くのファンが推しへの思いを込めたツイートを投稿する。コロナによってリアルイベントが減った今、推し活仲間とお祭り騒ぎで盛り上がれるSNSは、推し活に欠かせない空間となった。

SNSの重要性が増す中、注目されているのが「シェアする」体験だ。自分がファンであることをファン仲間に示すためには、推し活をしている様子をSNSにあげる必要がある。このシェアしたいというニーズを満たすために、業界全体としてSNSでのシェア体験から逆算した推し活の仕掛けが増加している。

「推し活」はZ世代を代表する文化のひとつだが、ここだけ見ても彼らの“SNSとの微妙な距離感”が垣間見える。これまでの若者と同じく自己表現やコミュニティへの参加意識は強い一方で、炎上への過度な警戒心を持ち、行動の端端に「心理的安全性」を求める傾向が現れる。大人の視座では、かつてデジタルネイティブと呼ばれたミレニアム世代と、今のZ世代以下は同じように見えるのかもしれないが、そこには大きな差があるのだ。

推し活をはじめとするZ世代カルチャーの背景には何があるのか。そして、彼らが端緒となるリアルとネットが完全に融合した時代に、ビジネスや市場、社会はどう変化していくのか。iQLabの持つ豊富な取材・調査データと知見を交えながら、最前線を分析するジュニアコンサルタントやリサーチャーのレポートを次回以降もお届けしていきたい。


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株式会社イマーゴ リサーチ&コンサルティング部 / iQLab
iMago

株式会社イマーゴは、Z世代をはじめとする新世代の動向や市場トレンド、将来ニーズ、新ビジネスなどの分析を得意とするコンサルティング&デザインファーム。その中でもiQLabは九州大学に共同研究拠点を持ち、Z世代のジュニアコンサルタントやリサーチャーが中核となって市場分析や企業向けのコンサルティング業務、実証実験の開発・運営などを行っている。 同社代表の神尾寿は、IT及びMaaS分野のジャーナリスト / コンサルタントとして活躍。Appleの公認ジャーナリスト(Tear 1)を10年勤めたほか、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員などを歴任。現在はジャーナリストの第一線は退き、新時代のコンサルティング&デザインファームを作るべく会社経営とiQLabの運営に専念。若手のコンサルタントやリサーチャーを後進として育てつつ、様々な企業とともに「次の世代がビジネスや社会を加速する」仕組み作りを行っている。
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