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Interview

香りの世界への誘い

エルメスで名香を生み出したレジェントに、日本の香りの祭典「Salon de Parfum」で会った

author: なかやま ひろdate: 2022/11/17

国内最大級の香りの祭典「Salon de Parfum」(サロン ド パルファン)が、3 年ぶりに伊勢丹新宿店の本館 6 階 催物場で開催されました。私は期間中に 2 回、会場に出向きました。一度目は先んじてお話を伺える機会をいただけるプレスツアー、二度目は来場者が増える週末です。今年はどんなイベントになったのか、リポートします。

「香りは、わたしに、刻まれる」と謳われた 2022 年の「Salon de Parfum」 。伊勢丹新宿店 化粧品担当バイヤーの入月雅子さんは「日本市場の盛り上がり」を実感しているとコメントしていました。

私の肌感覚ですが、昨年と比べて来場者の年齢層が比較的若い印象を持ちました。また、ファッション・デザイナーズブランドよりは、メゾン・ニッチブランドのブースでの盛況ぶりが見受けられました。以前より男性も多かったように感じます。

前述の入月さんいわく、「若年層や男性フレグランスユーザーの増加、SNS やインフルエンサーの影響で、初級者から中級者くらいの方が増えてきた印象がある」とのことです。これは今年の消費者傾向ではなく、以前から徐々に変化してきていて現在に至るそうです。

香りの世界に目覚めた彼ら彼女らは、日々 SNS をチェックしています。ブランド側としては、SNS で興味喚起を。より深いエンゲージメント体験のために、店頭のスタッフが詳しい説明ができるように教育へ投資をしています。ファッションフレグランスブランドからメゾンへの購入へ変更するホットスポットは、調香の背景やブランドストーリーのようです。

日本のブランドだけでなく、タイや韓国からの出展もあり、昨年より広がりを感じました。とはいえ、あえてアジアからの出展を意識したわけではなく、ブランドの世界観や香りで出展ブランドを選んだ結果とのこと。とはいえ、個人的にはアジアのブランドが増えてくるのは嬉しい限りです。

多くのアジアのブランドは、自国の次は欧米への参入を狙います。しかしアジアのブランドにとって、日本市場が最初のインターナショナル市場となるのではないか、ひいては日本=香水砂漠の認知から脱却できるのではと、昨今の日本の消費者動向や今回の Salon de Parfum から読んでいます。

初出展ブランドやリピートブランドにもお話しを伺いました。

毎月 1 本は新商品を出しており、51 もの商品数に多くのお客様が驚かれる、知る人ぞ知るブランドKOHSHI|香師 代表の松野さんは、KOHSHI|香師を知らない来場者が多く、商品や香りのコンセプトに関心を持ってくれた新しいお客様との出会いになったようです。

10 回目のハイライトはあのレジェンド調香師、LE COUVENT MAISON DE PARFUM(ル クヴォン メゾン ド パルファム)のオルファクティブディレクターで、70 歳まで Hermes で名香を生み出してきた調香師 Jean Claude Ellena さんの来日ではないでしょうか? 現職のブランドではご自身も調香しながらも、後進の指導に力を注いでいます。

若い調香師に対しては「君たちはどんな香水を作ってもいいけれど、メッセージがクリアに伝わる本を読むように、香りを聞くストーリーを創作するように」とメンタリングしているとのことです。私は到着当日と最後の日にお会いして、お話を伺うことができました。一言で表現すると、こんな風に歳を重ねたいなと「ライフレッスン」をいただいたような気分になりました。

Ellena さんは Less is More を誰よりも早く実行に移した調香師さん。香料業界的には 3000 種類くらい香料があり、多くの調香師さんはその中でも 1200 種くらいを使用しています。

一方で Ellena さんはもっと少ない種類で香水を創作しています。現在 90% を天然香料で調香しているル クヴォン メゾン ド パルファムでは 200 種で創作しているそうです。実はどこかで 100 という噂を聞いていたため、私が「冗談めいて 150 まで落としたって聞いたけど?」と聞くと、彼は「本当は 120 だよ」と……。

この香料の数、絵の具に例えることが多いのですが、パレット上に何種類の絵の具をのせてキャンバスを彩るのと似ています。また、使用する香料の数を減らしていった背景には、徐々に「自然からのメッセージを自分で解釈する」(筆者訳)ことで落ち着いた数字だと。

ただ、香料のクオリティにはかなりのこだわりを持っていて、イメージした香りの作品に合う天然香料をオーダーメイドしています。

例えば、最新作の Vetivera は、ベチバーが軸になります。LE COUVENT MAISON DE PARFUM ではハイチの最高級のべチバーを調香しています。ベチバーは比較的男性の香水に使用されており、ドライで力強い印象を与えるというのが、私の香りの印象です。

ところが、マリ共和国では女性の香りとされ、愛を交わす前に女性がべチバーを煎じたお茶を飲むようです。「所変われば」なのですが、私の肌に乗せた Vetivera はとても優しく、グルマン調の温かさで包み込むインパクトがありました。この香りを作るために土臭さをできるだけ減らした香料を産出するべチバーをオーダーしたということです。

なお、1992 年に創香されたブルガリの Thé は 19 種の香料のみ。また、この作品を Ellena さんは日本の感性にマッチした日本の香りと表現してくださいました。

1978 年に初めて訪れた日本についても言及しています。フランスと異なり、笑う時口元を隠す所作などから繊細な感受性だと感じたそうです。ポエティックに香水を語れる国はフランスと日本とおっしゃっていましたが、日本文化は考え方や創作に大きく影響を与えたようで、日本料理では、お客様の前で調理を見せたり、素材を活かして並べるプレゼンテーションなどシンプリシティの大切さに刺激されてたようです。

現在のようにモノやコトで溢れていなかったその昔、少数の香料で感性に訴える作品を作ることを「Back to Basic」と合わせたかのように同時に口をついて出てきた体験は priceless ー私の宝物となりました。

コロナ禍で自粛期間の過ごし方について質問された際、Ellena さんは「仕事のリズムが遅くなりゆっくりできたと同時に、他人の匂いを嗅ぐ機会が減り淋しさも感じた」と回答。物事を考えられる「人間的な時間」とお話しされていたことは、先の「Back to Basic」、香水とか香り以上のまたは以前のこと原点回帰に目を向ける機会になりました。

※ジャン=クロード・エレナ氏は、プレスプレビューでのご挨拶時のみ特別にマスクを外しております。

来年の展開については現時点では未定とはいうものの、前述バイヤーは「日本におけるフレグランス市場の活性化に向けての商品展開・施策を検討したい」と抱負を話されているそうです。

前回の LA の記事でも感じたことですが、香りのトレンドのあり方が変容している昨今、来年の Salon de Parfum で日本のフレグランス事情のトランスフォーメーションをどのように提示されるかが楽しみです。


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香りのコミュニケーター
なかやま ひろ

香りのコミュニケーター。Project Felicia 代表。ニューヨーク・ロサンゼルス・パリ・シンガポールと海外でのキャリアが長いマルチワーカー。元広告代理店 IW Group、JWT、Burson-Marsteller、元人材会社デジタル担当、元香料会社ジボダンマーケティング担当。2017 年夏、活動拠点を日本に移し、日立製作所、Google、現在外資 CRM 企業会社員。「源氏物語が体験できるお香『Six in Sense』」を自社ブランド「Bridge and Blend」でプロディース。クラファン「Kickstarter」と「Makuake」でチャレンジ。五感を使ったマーケティングが求められる今「香り」の可能性を日々追求中。
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