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香りの世界への誘い

NOSE SHOP 発の「KO-GU」は、生活の道具としての香りを提案する

author: なかやま ひろdate: 2022/08/05

ニッチフレグランスブティック「NOSE SHOP」の自社ブランド「KO-GU」(コーグ)が 2022 年 3 月に始動しました。“香具”を意味するこのブランドの立ち位置は、日本生まれのデイリーフレグランス。フレグランスと消費者の距離感を縮めることにこだわる NOSE SHOP の次のステップなので、想定内の動きなのですが……。デイリーフレグランス、こう来たか!

シンプル・クリーン・ナチュラルな香り

プロジェクトの構想から 2 年半以上の歳月をかけて取り組んできた新ブランド「KO-GU」。親しみやすさや鼻なじみの良さ、シンプルノートを軸に調合されています。先入観のないシンプルなパッケージは余白を残し、ユーザー(の嗅覚)が主役となる意図があります。ジュース*の品質にこだわりながらも、お手頃な価格設定なのは嬉しいポイントです。

*香水の液体のことをジュースと呼びます。

ブランドの在り方としてはニッチブランドの定義に当てはまるのですが、NOSE SHOP では世界のニッチブランドを取り扱っているからこそ、あくまで KO-GU は日常に溶け込む香りを提案しています。

今回は KO-GU 広報の吉澤美波さんと、岸あいりさんに店舗を案内していただきました。

取り扱う 30 種類の香りの中でも、とくに人気の香りは Musk や Black Tea。また、ブランド立ち上げが春先だったからでしょうか、Moss の香りも好まれているそうです。Musk 以外は天然香料を使用し、香水のメッカ・南仏の Grasse でフォーミュラ(調香)が作られ、生産は八ヶ岳で行っているそう。

店舗の構成は 4 セクション。香りのノートでトップ・ボディ・ベースと 3 つに別れており、香りの言語化 AI「KAORIUM」 体験デバイスのブース兼お会計カウンターで構成されています。

各セクションの気になる商品を手にとって試香するも良し、KAORIUM の体験から始めても良し、香水ガチャを回すも良し、自分なりにフレグランスとインタラクトできる仕組みになっています。

ベースノートが好きな私は、こちらのセクションからスタート。ちなみに香りは誰もがわかるような香料の名前のついたネーミングですが、先日のシングルノートの記事でも記載しましたが、ブレンドです。

香りの記憶がしっかりと残っている私の鼻には、KO-GU のオスマンサスは記憶にあるオスマンサスの香りとは異なりましたが、鼻なじみの良さを感じました。

全体的にフレグランス感というよりフレーバー感の強いテクスチャーです。嗅いだときにどの香料が調香されているかわからなくてもいいのですが、誰でもなんとなくわかるように意図的に普段味覚で表現する香料がブレンドされていると思います。

香料の良さを最大限に引き出すため、無濾過製法を用いています。時間の経過や温度の変化で香料同士が結合して発生した澱(おり)を残し、不純物をとばすというかなり手間のかかった工程です。

KAORIUM の体験*

*期間限定。本コンテンツは予告なしに終了する場合がございます。

AI を導入した香りのテクノロジーは過去にも体験していますが、こちらのツールは初めての体験です。世にお目見し始めた時のサイズは大きめでしたが、コンパクトなサイズに進化していました。

体験当日、私の体はアップル系のフローラルフルーティを欲していたようです。サイドノートですが、好みの香りは日々変わるものです。自分の変化にいち早く気づくツールとして、私は自分の嗅覚を活用します。その日、身につける香水や、部屋の香りのトーンを決めます。

KAORIUM で“ふわりとひろがる紫紺のドレス”。ちょうど対象となるワンピースを着て訪問しようと思っていたので、驚きました。自分の無意識の能力に驚嘆です。ですが、言語化として誘導されていたことも理解しており、表現を「文字」で見てしまうとね、直感でなく、頭で考えてしまうんですよ! ところが嗅覚は感じる脳に直結します。

似たような似てないような言語化方法で思い出しましたが、2012-2013 年にニューヨークで開催された Chandler Burr 氏がキュレートした Art of Scent では、香りの印象を自分たちで言語化し、タブレットに入力すると会場の壁に表示され、それらが蓄積されていく体験がありました。今では、これまでに蓄積された香りの言語がキューレートされ、私たちの目の前に現れることに技術の発達を覚えました。

香りの世界で駆け出しの頃、そして香料会社で勤務していたときはこのようなプラットフォームはまだ存在していなかったので、自分で言語化して、自分の香りのボキャブラリーを増やす努力をしていました。便利なツールはあるものの、香りの世界を目指す方には、従来の自分の嗅覚に頼る表現方法で世界観を伝える必要があるのではとも疑問に思いました。

レイヤリング - 組み合わせるフレグランス

レイヤリングは香水ブランド「Jo Malon」が市場に登場した時に一役買っているフレグランスコンセプトです。その後、カスタマイズ香水の人気も手伝って、多くのブランドが香りを重ねられる商品を発売しました。数年前にこのトレンドは再度やってくるのかと思いきや、期待以上には浸透しなかったようです。

道具としての位置づけでユーザーのクリエイティビティに委ねたい思いから、香水、特にニッチブランドに欠かせないストーリーやビジュアルを極限までカットし、アート性を排除とありますが、私は個人的にはジュースもアートだと思っています。

特にレイヤリングに関しては、色鉛筆で描くようにと説明いただいている点、やはりアートだと思います。ただ、アーティストはユーザー自身です。ここが香具にあたります。主役はユーザー、香りはあくまでツールです。

今回、インセンス・ムスク・ベルガモットで 2 種類のレイヤリングを試香紙に作ってみました。順番は 1) インセンス > ムスク > ベルガモットと 2) ベルガモット > ムスク > インセンス。印象の違いですが、香りをのせた直後はかなり異なります。3 日後、やはり違いました。肌にのせたわけではないので、保証はできませんが、同じ 3 つの香りの選択とレイヤリング次第では 6 種類の香りを楽しめるかもしれません。ぜひ、試してみてください。

私が 2017 年 7 月 31 日に日本へ拠点を移してから 5 年が経ちます。日本に戻ってすぐに偶然立ち寄った NOSE SHOP と出会って、取材を始めて、着実にフレグランスと消費者の距離感が縮まっていくプロジェクトを生み出していることは感慨深く、次なるアクションが待ち遠しくなる将来の香育コンテンツの誕生です。

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香りのコミュニケーター
なかやま ひろ

香りのコミュニケーター。Project Felicia 代表。ニューヨーク・ロサンゼルス・パリ・シンガポールと海外でのキャリアが長いマルチワーカー。元広告代理店 IW Group、JWT、Burson-Marsteller、元人材会社デジタル担当、元香料会社ジボダンマーケティング担当。2017 年夏、活動拠点を日本に移し、日立製作所、Google、現在外資 CRM 企業会社員。「源氏物語が体験できるお香『Six in Sense』」を自社ブランド「Bridge and Blend」でプロディース。クラファン「Kickstarter」と「Makuake」でチャレンジ。五感を使ったマーケティングが求められる今「香り」の可能性を日々追求中。
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