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林信行がデザイン的視点で紐解くGalaxy Z Fold3 5GとFlip3 5G

完成したサムスン式フォルダブルの基本形<前編>

author: 林 信行date: 2022/01/22

2013年、フランスの巨匠デザイナー、フィリップ・スタルクを独占インタビューした。「スマートフォンをデザインする気はないのか?」と聞くと、スタルクは首を大きく横に振りこう答えた。「スマートフォンなんてただの板。真っ平らな板にできるだけ大きく画面が広がってるほどいいもの。デザインする面白みがない」。それから9年の月日が経った。その間、スマートフォンはパソコン並みの処理能力や高度な画像認識と音声認識、さらには一眼レフ並みのカメラ性能などを手に入れてディスプレイも大型化した。だが、板一杯に広がったディスプレイという基本形は大きく変わっていない。

スマートフォンの新たな基本形を
果敢に切り開き続けるGalaxy

ある製品ジャンルを成り立たせる基本のカタチを突き詰めてしまうと、他製品は、もはやそこに余計なモノを付け足しただけの「まがいもの」にしか見えなくなる。

現在、趨勢の板状のスマートフォンに関しては、iPhoneの出現により、15年前にその基本形ができあがってしまった。

ただ、ここで面白いのは基本形は新しいテクノロジーにより変わりえるという事実だ。

例えば携帯型音楽プレイヤーも、カセットテープを再生していた時代と、フラッシュメモリーやインターネットから音楽を再生する今では基本形が違う。ヘッドホンも今ではBluetooth技術の進化によって、片耳ずつバラバラという新しい基本形が定着しつつある。

21世紀のライフスタイルの中核と言えるスマートフォンでも、果敢に新しい基本形づくりに挑戦し続けている会社がある。サムスン電子だ。同社は2014年以来、果敢に最先端のテクノロジーを使って、スマートフォンの新たな基本形づくりに挑み続けている。

顕著な例がGalaxy Note Edgeに始まるEdgeシリーズだ。片端が斜めに折れた曲面ディスプレイを採用し、ディスプレイをカバーなどで覆ってもわずかに覗くEdge Screenと呼ばれる部分に、通知などの情報を表示するという新しい情報提示のあり方を提案した。

そんなサムスンが今、本腰を入れて取り組んでいるのがフォルダブル、折り畳み可能なスマートフォンの基本形の開発である。筆者は3世代目の製品となるGalaxy Z Fold3 5GとGalaxy Z Flip3 5Gをしばらく試す機会をもらった。

開けば小型タブレットだが、閉じればスマートフォンになるのが折りたたみスマホの魅力だが、3世代目ではSuicaをはじめとするおサイフケータイの機能や防水機能が追加。スマートフォンとしても他のスマートフォンと比べて遜色のない機能を備え、さらに開いたタブレットの状態でもスタイラスペンでの入力に対応するなど、他の小型タブレットと比べても見劣りしない機能を揃えるなど、サムスンがフォルダブルデザインで追求する理想が円熟したモデルに仕上がっている。

ただし、本稿ではあまりFold3、Flip3ならではの最新の特徴には重点を置かず、むしろ、Foldシリーズ、Flipシリーズの系譜についてデザイン的視点から評価を試みようと思う。

折りたためるデザインが産む
それぞれの持つ柔軟性とは?

まずは折りたたみスマホならではの基本的な特徴を振り返ってみたい。最大の特徴は、携帯性に反して、開いた状態のディスプレイが大きいことだ。動画を見たり、旅行先で見た写真を友達に見せたり、Webページで調べ物をしたり、こういったことすべてがディスプレイが大きいだけで快適になる。このタブレット同様の魅力が折りたたんで、ポケットに収まるサイズにして持ち歩くことができるのだ。

一方で、例えばとっさの写真撮影や会話の録音、改札機や決済端末へのタッチ、会議中の調べ物や混んでいる電車でのソーシャルメディアの閲覧など、動作を颯爽と済ませたかったり、あまり目立たずに操作をしたいといった場合など、我々の生活の中ではスマートフォンの片手操作の方が都合が良いシーンも少なくない。そうした場面では折りたたみスマホはスマートフォンとほぼ同様に扱える。この片手操作、日本語のフリック入力ができる人には特に大きな意味を持つ。

フリック入力が誕生したおかげで、日本語は慣れてくれば両手で(ローマ字で)入力するよりも片手で入力した方が早く文章が書ける世界でも珍しい言語になった。Fold3を折りたたんだ状態で、フリック入力でメールの文章を素早く書き、開いた状態でメール全体を見渡す。こうした操作はGalaxy Z Fold3 5Gならではの利点だろう。

だが、それだけではない。実はFold3の折りたたみ機構は無段階の折りたたみができる。なので、例えば特急列車で動画を見る時に、本体を見やすい角度に折り曲げてディスプレイ半分だけを使って動画を楽しんだり、メールを書く時にやはりディスプレイが見やすい角度に本体を折って、残り半分のディスプレイいっぱいにキーボードを広げたりといった使い方もできる(スタイラスを使って手書き文字入力もできる)。

スマートフォンとタブレットとそのどちらでもない中間の形を行ったり来たりできるこの柔軟性こそ、折りたたみスマホの真骨頂だろう。

では、開いた状態でスマートフォンサイズ、折りたたむとお化粧道具のコンパクトほどのサイズのFlip3には、どのような価値があるのか。私はこちらは開けばスマートフォン、閉じれば時計を目指したように思った。ただし、時計は時計でも腕時計ではなく、腕に何もつけたくない人のための懐中時計だ。スマートウォッチの目的の1つは、スマートフォンのディスプレイの見過ぎを減らし、それでも大事な通知だけはしっかりと受け取ることだが、閉じた状態のFlip3は、まさにこの役割を果たしてくれる。

技術でも情報でも何でも「多い方が良い」という考え方の人には合わないかもしれないが、デジタルデトックスに価値を感じ、情報に触れたい時にだけ触れる。遮断するときは遮断して、目の前で一緒に時間を過ごす相手であったり、これから向き合う仕事だったりに集中する。そうした姿勢を重視する人にFlip3は、ディスプレイをパタンと閉じる所作で、気持ちの切り替えを周囲で見ている人はもちろん、自分自身に対しても示せるのは実は大きな価値ではないかと思う(板状のスマートフォンで、机の上のスマートフォンを裏返しディスプレイを下にする所作だったり、カバンにしまうことで同様の態度表明をしている人も少なくないはずだ)。

なお、スマートウォッチと言えば最新のものは脈拍や血中酸素濃度などのバイタルデータを取れることが自慢。残念ながら懐中時計のFlip3は、それらを取ることはできないが、1日に歩いた歩数などを測ることで健康に寄与はしており、ポケットにしまったままBluetoothヘッドホン経由で音楽を聞いたり、目的地までの道のりを音声ガイドするといったことも可能だ。

折りたたみスマホならではの、折りたたみ途中の中間形態の魅力もある。まずは見やすい角度に折り曲げて動画やソーシャルメディアなどの情報を見る魅力。テーブルの上に置いて、カメラの角度を無段階で調整しての置き撮り撮影も可能だ。

ディスプレイが2分割されていることで、片側で資料を表示し、片側にメッセージアプリやメールなどを開いて文を書くといった複数アプリ同時活用といった使い方にも向いている。

このように本体を縦開きにして楽しむ方法もあるが、Flip3を横向きに構え、ディスプレイいっぱいに動画を広げ、ディスプレイをちょっとだけ折り曲げたFlip3を机の上に立たせて観るという楽しみ方もある。Flip3の側面は平らなので、実はほんのちょっと折り曲げただけでもちゃんと机の上に立ち、さほど折り目を気にせず動画を楽しむことができる。

「これ」と言った決められた使い方はないが、本体の角度を無段階で自由に変え、自分で工夫して新しい使い方を生み出せる柔軟性。これも魅力の1つだろう。

この記事の後編はこちら

Galaxy Z Fold3 5G

サイズ:高さ約158mm、幅約128mm、奥行き約6.4mm
クローズ時サイズ:高さ約158mm、幅約67mm
奥行き約14.4mm 重量:約272g
ディスプレイ:約7.6インチ
Dynamic AMOLED 有機EL
アウトカメラ:約1200万画素×3
インカメラ:約1000万画素、約400万画素
バッテリー容量:4400mAh
RAM:12GB
ROM:256GB

Galaxy Z Flip3 5G

サイズ:高さ約166mm、幅約72mm、奥行き約6.9mm
クローズ時サイズ:高さ約86m、幅約72mm
奥行き約15.9mm 重量:約184g
ディスプレイ:約6.7インチ、Dynamic AMOLED 有機EL
アウトカメラ:約1200万画素×2
インカメラ:約1000万画素
バッテリー容量:3300mAh
RAM:8GB
ROM:128GB


author

テクノロジージャーナリスト
林 信行

未来の風景を求めて1990年にテクノロジージャーナリストとして活動を開始。パソコン、ネットインフラ、ネットビジネス、スマートフォン、タブレットの最新トレンドや企業動向を取材し、さまざまな媒体で発信。アップル、グーグルなど米国IT大手の経営者やデザイナーの取材で知られる。iPhone登場後は、テクノロジーと良いデザインの両立の重要性を訴え企業向け講演やコンサルティング活動を開始。現在はAI全盛時代を見据え「22世紀に残すべき価値」を基軸に現代アート、地域と伝統、教育など広範なテーマを取材。ソーシャルメディアを中心に発信中。REVOLVER社社外取締役、ダイソン財団理事、金沢美術工芸大学客員教授。
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