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テレミーティングでキレ味ガツン!

「ラジオパーソナリティみたいな声」をもたらすマイク

author: 武者良太date: 2021/05/24

コロナ禍で当たり前となったテレミーティング。今まではあまり気にすることもなかった声のクオリティを意識する人が増え、プロ仕様の本格マイクは売れに売れているという。今回は筆者が入手したコスパ抜群の名機「MXLのV67G-HE」を紹介。「なんだかいい声だよね。ラジオのパーソナリティみたい」と言わしめた、その実力をレポートしよう。

楽器録音用のコンデンサーマイクが売れに売れた

ダイニングキッチンがお父さんの仕事場になるなど、誰もが想像していなかった世界の変革。コロナ禍はいろんなギョーカイの市場をぶっ壊しやがりました。観光業界、外食産業といった9999のダメージがいまなお続いている市場もあれば、マスクが誰にとっても日々の消耗品となり売れ筋となった市場もあります。しかし、売れるからといって需要と供給のバランスが崩れてしまうとむしろ大変。消費者からは「品薄商法じゃないのか!?早く売ってくれよ!」と責められるし、メーカーや代理店にとっても大いなる機会損失となります。

製品そのものというか、製品を構成する部品が仕入れられないというケースもあります。スポーツ自転車のギアは納期が1年先。半導体なんてゲーム業界、パソコン業界だけではなく自動車業界なども含めて奪い合いとなって、PS5もSwitchもGPUも最新の車も納期が異様に伸びちゃった。コロナ禍のせいでサプライチェーンがぶっ壊れてしまった製造業界に、哀悼の意を表します。

ガチなプロユースのマイクが売れたこの1年でした。

現在は復調しているけど、2020年半ば頃まではマイク市場も需要過多・供給不足状態に陥りました。売れに、売れたのです。特にボーカルや楽器録音用のコンデンサーマイクが、です。なぜマイクにそんなにも買いの手が上がったのかというと、ビデオチャットを軸としたテレミーティング需要がマキシマムブーストとなったから。それにしたってガチなプロの現場で使われるマイクが音楽業界・配信業界以外に売れるって異常事態です。それにマイクなんてどれも同じでしょ? 同じように声を捉えてくれるんでしょ? と思うじゃないですか。

これがまーったく、違う。楽器が、製造クオリティの差で奏でる音色が異なるように、マイクもモノによって声色がまーったく変わってくる。テレミーティング中に「なんだかいい声だよね。ラジオのパーソナリティみたい。なんなのその声」とか言われちゃったりする。僕の場合は年上の男性のクライアントからそう言われたのでメロゥなドラマはないんだけど、PC内蔵マイクを使っている人よりも滑舌良く、スマホ内蔵マイクを使っている人よりも声に深みと伸びがあるから、プレゼンしたいときに効果絶大だったのです

プロミュージシャンやYouTuberが認めたマイク

25mmのどでかいダイアフラムが、細い声もしっかりと捉えてくれます。シズル感重視で真正面から語りかけてもいいけど、テレミーティング・トーク用途なら自分の横において、呼気の影響を減らしたほうがいい感じでした。

今回ご紹介するのは、知る人ぞ知るMXLのV67G-HE。2001年頃に登場したV67にオプションをセットにした、はじめてのコンデンサーマイクにおすすめの1本...というネット上の評判を知って買いました。ボーカル(特に女性ボーカルか、ハイトーンな男性ボーカル)によし、YouTubeによし、Podcastによしと、声を捉えることに長けた1本だとお褒めの言葉ばかり。「価格帯にしてはコスパ高い」という枕詞はつくのだけど、それにしたってみんな褒めすぎでしょうと気になっちゃってさ。

自分で使ってみてなるほど、声の芯を捉えるチカラがありますコイツ。やや中高域の感度が高いけど、基本的にはフラット。美味しいところをフル活用するなら確かに女性の声のほうがマッチするでしょうけど、男性の声も悪くないどころかむしろいい。プチ高域寄りの特性が、エンハンサーをかけたかのようにシャープで骨太な余韻が続くような音として捉えてくれるんです。もともと倍音が多く、丸みのある声の人でも輪郭がシャキッとしてる。エッジのキレ味マシマシで気持ちいい。

付属のケースについているメーカーロゴのバッジがなぜか逆。プロユースの機材ってこういうものなの?
ポップガードとショックマウントホルダーが付属するというだけで、気分がアガります。

しゃべり声を捉えるのにデリシャス

マイク本体のみで589.67gと重めです。マイクスタンド・マイクアームは、重いマイクでも保持できるモノを使いましょう。

同時にちょいとだけ詰まったようなところもある。わずかにコンプレッサーをかけたように。悪い意味ではないですよ。超高域が敏感すぎないから、サシスセソの発音がクッキリと聴こえるのに耳に刺さるような硬質感はないのです。

コンデンサーマイクって実は使いづらいんですよ。特にボーカル用のコンデンサーマイクはメロディラインにのせている声も確固とした存在感をもって捉えるために、高域にはっきりとしたピークを持たせているものが多い。レコーディング・ミキシング時に他の音となじませるように補正をかけるから、素材となる声を捉えるときはキラキラすぎるほうがいいんです。

V67G-HEは腹八分目なキラ止まり。だからマイクプリアンプやミキサーにこだわらなくても、聞き取りやすい声で収まってくれる。ポスプロ作業をしなくても、誰が聴いてもいい声の範疇に入っている。なるほど、生配信をするYouTuberがおすすめしていた理由ってコレか! ボーカルもいいけど、トークや朗読用途もマッチしているんだ!

必要な付属品が揃って1万6000円はコスパ高すぎ

とはいっても、ダイナミックマイクなどと比較するとやっぱり超敏感だから、エアコンの音や、パソコンのファンノイズも捉えがち。床から伝わる振動や鼻息とかリップノイズも入りやすいので、ポップガードやショックマウントホルダーが必要になってくるのだけど...V67G-HEにはこの2つのオプションが最初から付属している素敵マイクなんですよ。それでお値段1万6000円くらいってのは、本当にコスパ高いわあ。

ポップガードも金属製。目は荒めで、空気が通りやすいもの。
周囲の振動をマイクに伝えないようにするショックマウント。

ところで、どこかで見たことのあるエクステリアだなと感じた方もいるでしょう。実はノイマンU87という、レコーディング現場では定番中の定番なコンデンサーマイクのフォロワーみたい。見た目だけじゃない。内部の回路もほぼ同一みたい。なお、お値段はマイク本体のみで30万円くらい。高!


MXL
V67G-HE

実勢価格:1万5000円前後
ダイアフラム:コンデンサー
周波数特性:30Hz~20KHz
指向性:単一指向性
電源:ファンタムDC48V +/-5V
付属品:ショックマウントホルダー(5/8インチネジ)、ポップフィルター、クリーニングクロス、ケース

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ガジェットライター
武者良太

1989年にフリーライターとして活動開始。株式会社三才ブックスに入社して編集職に就き、退職の後にフリーライター/カメラマンとして活動再開。2021年で執筆・編集歴32年。現在注視しているフィールドはIT、IoT、スマートフォン、デジカメ、モビリティなど。1971年生まれ。元Kotaku Japan編集長。
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