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Interview

VRアイドルグループに直撃

VRでアイドル活動をはじめた理由とそのやりがいとは?【ハッピーパレット・桜羽ことねの場合】

author: 武者良太date: 2022/06/07

怪獣になって街を闊歩したい。ロボットになって空を飛びたい。動物になって手の平にある肉球を眺めたい。そして、可愛らしい女の子になってワクワクしたい。アバターの姿を介することで”なりたい自分になれる”VRメタバース。社会性、経済性などビジネス視点が注目されがちなメタバースですが、アバターによる身体拡張性も特徴の1つであり、大いなる魅力でもあるといえます。

日本でも浸透しているVRメタバースのVRChatは、MAU(1か月の間に利用するユーザー数)が全世界で400万(Metaversed Consulting調べ)とも言われており、誰もが思い思いの格好をして仮想空間でのコミュニケーションを楽しんでいます。その中でも全ユーザー数の4%(約1万人)を占めると言われている日本人のユーザーはかっこいい/かわいいアバターを着ている人が多く、むしろ標準装備といった雰囲気。リアルのルッキズムの極地を超えた先にある世界であり、"改変"と呼ばれるアバターのカスタマイズや、話題の豊富さ、VR空間内でのパフォーマンスにいいねアイコンを高速タップしたくなる世界観となっています。

そうです。パフォーマンス。実はミュージシャンやダンサー、アクターといった、様々なパフォーマーがこの世界には存在します。今回はそのなかで、VRアイドルグループ・ハッピーパレット(@HappyPaletteVRC)に属している桜羽ことねさん(@T8oNana)にスポットライトを当てましょう。

コロナ禍によって一度は諦めたライブ活動をVRで

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桜羽ことねさんは新型コロナウイルスが日本にやってくるまで、現実世界のライブハウスで音楽活動をしていた人物です。小学生の頃からずっとステージの上でスポットライトを浴びながら歌いたい、踊りたい、音楽活動をしたいっていう夢をもっていて、それが叶っていたというのに、各地のライブハウスでコロナ感染者のクラスターが起きたことから、早い段階から中止となるライブが相次ぎました。

「ライブ活動ができなくなったことで、2020年当時は病んでいたんですね。だからVRにも、現実逃避でやってきたところがあったんですね」

しかしVRChatをはじめたばかりの頃、運命的な出会いをします。それが毎週1つ、新しいVRChatワールドを製作しているケセドCHESEDさん(@CHESED___)。

「私がVRChatをはじめた当初、ケセドさんとアイドルグループを作りたいっていう夢を語り合っていたんですよ。そうしたら2021年の7月後半に『実際にアイドルグループを作ろう。ひゅうがなつアバターだけのアイドルグループ作ります!』ってケセドさんから唐突に連絡があったんです」

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ひゅうがなつアバターとは、3D CGクリエイターであるひゅうがなつさん(@hyuuuuganatu)が製作したアバターのこと。主にVRChatで使うことを想定して作られた、可愛らしい女の子のアバターたちです。様々なアバターがある世界のなかで、ひゅうがなつアバターを愛している子たちだけでアイドルグループを作ろうという計画が立ち上がったのです。

「『副リーダーも絶対やって欲しい』といわれまして。もうそこから始まった感じですね。ただそこからが大変でした。8月の後半にはデビューイベントをやろう、ライブをやろうって言っちゃったんですよ、私が(笑)」

アイドルグループを作ろう、となって1ヶ月後にライブ!?

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「結成の話が持ち上がったのが7月20日あたりで、デビューイベントが8月21日ですね。もうね、今思うと私も本当に馬鹿じゃないのって思うんですけど(笑)。なので1ヶ月で、リーダーのケセドさんと、もう1人の副リーダーのぽよんさんと一緒に、数十人というグループメンバーの運営システムを構築して、デビューイベントの枠組みを組んで、振り付けを作って演出を考えてワールドを作って(笑)。私も久々のライブっていうのがあってすごいもうめちゃめちゃのってて、結成からライブ当日までほぼ睡眠時間なく、ずっと作業をしていましたね」

その当初から32名のメンバーがいたという「ハッピーパレット」。想像するだけでも凄まじい1ヶ月を送ったのでは、と感じます。

「いや、でもね、なんだかわからないんですけど、やらなきゃなって思ったんですよ。本能的に勝手に体が動いたっていう感じで。まあ、正直悩みました。でもここで断ったら一生後悔するだろうなって思って、もう一回ステージに立とうと思ったんです」

実際にライブをやってみて、いかがでしたか。リアル世界のライブとの違いはあったのでしょうか。

「正直あんまりないかな? もちろんアバターを着ているってのはあるけど、オーディエンスとの距離感とか会場との一体感であったり、ライブしてるなあっていう感覚は何も変わんないと思う。私みたいにこのコロナで音楽活動が思うようにいかなくなった人って、いっぱいいると思うんですよ。そういう人に、ぜひちょっとVRにきて活動してもらいたいかなって思うんです。いつでもライブができるんです。ここでは。アイドルとしてVRのステージに立って、ファンの人たちが「ことね!」って呼んでくれるんですよ、笑顔で。 もうそれみたらねえ。不安なんて吹っ飛びますよ。もうこの幸せと比べたら、ちょっとぐらいの不安なんてなんてことないです」

アイドルグループとしての軸の1つは、ひゅうがなつアバターへの愛

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「ハッピーパレットメンバーの根底にあるのが、ひゅうがなつアバターが大好きっていう気持ちなんです。もっといろんな人にひゅうがなつアバターの魅力を知ってほしい、っていうところから生まれたグループなんですよ。あまりVRに馴染みのない方たちにとって、最初に気になってくるのがアバター文化だと思うんですね。だからこそ、この文化を知ってもらいたいという気持ちもあるし、何よりやひゅうがなつさんの3Dモデルはめちゃめちゃ可愛いので、もっと可愛さを知って欲しいし、もっと使ってくれる人が増えて欲しい。という気持ちですね」

その上で、アイドルの子たちはそれぞれが"VRでやりたいこと"を胸に抱いています。

「ひゅうがなつさん公認で、ひゅうがなつアバターをみんなに布教しまくって広めるっていう理念を前提に置いたとしても、アイドルの子たちそれぞれ考えていることは違うと思うんです。例えばライブ活動においても、会場との一体感を味わって、みんなと一緒に自分もハッピーになりたいという子もいるし、ダンスがしたいという想いでうちに入ってきた子もいるし、写真を撮りたいという子もいました。私に限って言えば、アイドルに対しての思い入れが結構強いんですよ。ライブをしたいというだけじゃなくて、メンバーもファンも含めて、みんな笑顔にしたいっていう思いがあります」

グループを率いる副リーダーの立場として、そんなメンバーと、活動をサポートしてくれるスタッフ、そしてファンのみんなを見るのがとても嬉しく、そして楽しいといいます。

「正直いっちゃうと、ここまでできると思っていなかった部分があるんです。例えばライブの練習においても、結構ハードなんですけど、それにもまったくめげずに付いて来てくれたりとか。汗いっぱいかいて『あっつい死ぬー!』と笑いながら練習していたりとか。ライブの前は吐きそうなぐらい緊張して、もうまじトイレも何回も行ってたりしても、終わった後は『やばいまじ今日めっちゃ楽しかったね』と言い合えるから、ほんと、超好きです。好きだし楽しいです」

2022年1月に行われたセカンドライブは約200人を動員

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「普段は毎週火曜日の21時から、ケセドさんの新作ワールドを紹介するイベントを開催しているんですよ。いつもだいたい100人以上の参加者さんがいます。3つのインスタンス(会場)にハピパレのメンバーがそれぞれログインしていて、お客さんは各々が推しているメンバーのインスタンスに行くみたいな感じです」

VRChatは現在のシステム上、1つのインスタンスに40~50人ほどしか入れないことがほとんど。そこで複数のインスタンスを用いて、メンバーを振り分けることでイベントを開催しているのですが。

「実は、新メンバーが2人増えたセカンドライブのときは、200人近いファンが来てくれたんです!」

アバターの表現力が大きい、すなわち多くのアバターが手足を動かすだけでも通信データ量が極めて多くなるVRChatですが、ワールドの作り方など様々なテクニックを用いることで、より多くのユーザーを受け入れることが可能です。

「そうそう、イベントはすべてQuest対応なんです。VRChatにログインできる環境があれば、デバイスを問わずお楽しみいただけます。ライブも、握手会も、すべてがQuest対応です」

単体で動作するけど、スペックそのものはハイエンドスマートフォンクラスのVRヘッドセット Quest 2。これではVRChatのすべてを体験できません。別途、高性能なWindows PCを必要とするワールドが多いのです。しかしハッピーパレットは、Quest 2のユーザーが積極的に参加できるように設計しています。

「ハッピーパレットっていう名前のとおり、ハッピーを届けるグループでありたいんです。届けるハッピーに差を産みたくないんですね。Windows PC環境と比べると多少の表現の差はあるのですが、Questユーザーの方でも私たちを見て元気になってくれたらいいなと思って活動しています。なので、もしこれからQuest 2を買われる方がいたとしたら、ぜひ私に会いに来てほしいな(笑)。近くで踊ってる熱量を感じて、触れ合って話せるというのがVRの一番いいところだと思うので。絶対ハッピーにするので! もうみんなでハッピーになって笑顔でメタバース生活を過ごしていただけるようになればなーと思っています。そんな、私が感じていることをみんなに伝えたいんです。全世界の人達が仮想空間で笑う、そんな未来が見たいんです! 1度でもいい。その目で、この世界を見てください」

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ガジェットライター
武者良太

1989年にフリーライターとして活動開始。株式会社三才ブックスに入社して編集職に就き、退職の後にフリーライター/カメラマンとして活動再開。2021年で執筆・編集歴32年。現在注視しているフィールドはIT、IoT、スマートフォン、デジカメ、モビリティなど。1971年生まれ。元Kotaku Japan編集長。
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