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1LDKのKを「S」にしてみた!

もし家庭用サウナが普及したら、日本の暮らしはどう変わる?

author: Beyond magazine 編集部date: 2024/01/08

都内、某マンションの一室。扉を開けてすぐの部屋にあるのは、洗濯機と家庭用サウナだけ。1LDKの「K」だと思われるその部屋に、キッチンはない。この、なんとも不思議な空間に住むのは、空間プロデュースを手がける株式会社Calの代表、真栄城徳尚さんだ。

自社で取り扱う家庭用サウナを自宅にも設置し、サウナのある生活を始めたという。もともと空間のデザインを主軸とする同社が、なぜ家庭用サウナ事業「Opinion SAUNA」をスタートしたのだろうか。真栄城さんが、家庭用サウナで実現したい未来の生活とは──。

家庭用サウナで、日本のライフスタイルをアップデート

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──空間プロデュースを手がける株式会社Cal。なぜ今回、家庭用サウナの販売を始めたのでしょう。

真栄城さん:僕たちは普段、事業モデルの考案から空間デザインまでを一貫して担っています。これまで都市計画規模の商業施設の企画や、クリニックやレストランなどを運営構成レベルで一から作り上げてきました。

でも僕がやりたい建築や空間づくりって、ベースに「住宅」があるんです。住宅は、ライフスタイルが色濃く現れる場所。「自分たちの生活をより楽しくするには?」と考えるのが好きなんです。

これまでの日本人の生活で、キッチンやリビングはどんどんアップデートされて、使い方も変わっていきました。でも「お風呂」ってあまり変わってないなと思って。ユニットバス、鏡、洗い場があるだけの予想できる空間。違いがあるとしたら、お金をかけているかどうかのわずかな差です。

この温浴空間をもっと楽しめるんじゃないか? と考えた時に、家庭用サウナはおもしろい商材だなと思いました。

──おもしろい、とは?

真栄城さん:家庭用サウナを取り入れることで、新しいライフスタイルを提案できると思ったんです。

ここ数年のブームの影響もあってサウナはすごく混んでるし、プライベートサウナも一回数千円と考えると気軽には行けないですよね。それが理由でサウナ離れする人もいるはず。

家庭用サウナはサイズにもよりますが、設置費用も含め100万円台から購入できます。賃貸マンションでも設置可能で、月々の電気代は3000円前後。特別なメンテナンスは必要ないので、長い目で見ればそこまで高い買い物ではないのかな、と。

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──「Opinion SAUNA」で取り扱うサウナについて教えてください。また、導入時の注意点などはありますか?

真栄城さん:「Opinion SAUNA」では、「家庭用個室サウナ」と「屋外用バレルサウナ」の2種類を取り扱っています。設置場所や使用人数に合わせて、サイズは4タイプから選べます。僕の自宅にあるのは「家庭用個室サウナMサイズ(2名用)」。賃貸物件にも設置可能です。ただし、物件によってはブレーカー工事(40A以上を推奨)が必要。マンションによっては工事ができず、設置できないケースもあるので事前に確認することをおすすめします。

我が家の場合では電気工事費用、サウナを温めるストーブなどの備品も合わせて約120万円で設置しました。気になるランニングコストですが、4.5kWのストーブを使用すると、毎日1時間利用した際の電気代は、月3600円ほどなんです。

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屋内用個室サウナのモデル例。2023年12月現在、S~LLの4サイズを取り揃える。参考販売価格は税別78万5000円~92万2000円。ストーブや設置工事費を合算すると、おおよその設置費用目安は120万~200万円程度となる

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屋外用サウナのモデル例。写真はサークルバレル。設置環境や場所により適切なモデルが異なるため、要問い合わせ

家庭用サウナが当たり前になったら、日本の生活スタイルがもう1歩アップデートされると思うんです。温度も自分好みに調節できますし、漫画を読みながら、パックしながら、ドアを半分開けながら……どんな使い方でもできます。サウナの中にパイプをかけ洗濯物を干すなんて使い方もありかもしれない(笑)。自分なりの心地よい使い方を見つけられるはずです。

──ライフスタイルがアップデートされる......。なかなかイメージがつきません。

真栄城さん:昔、日本のメーカーがユニットバスという商品を出しました。日本人が好きな「お湯に浸かる」ことを一般化した、素晴らしいイノベーションだったと思うんです。

でもそこから、日本の温浴空間は全然進化していません。家庭用サウナのハードルを下げられれば、ユニットバスが普及した時のように、新しいライフスタイルを提示できるんじゃないかなと思ったんですよね。

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賃貸マンションでの施工事例

──なるほど。まさに今、ライフスタイルがどう変化するのか、ご自宅で実験されていますね。

真栄城さん:そうですね。設置したばかりで、まだ使えていないのですが(笑)。

今の時代、ほとんどの家事は手放せるじゃないですか。近くにコンビニはあるし、出張シェフや家事代行などを利用すれば、自分のしんどい時間を減らせるようになった。

でもどうしても減らないなと思ったのが、僕にとってはお風呂と洗濯だったんです。だからこそ、この時間をどうやって楽しむかを考えて、空間づくりをしたいと思いました。

──マンションの一室とは思えない、不思議な空間です。

真栄城さん:壁際にキッチンがあったんですけど、取り外したんですよ。僕は料理をしないからキッチンは必要ないので。「K(キッチン)」だったこの部屋を「S(サニタリー)」に変えて、温浴空間として拡大したイメージです。

サウナを出たら、お風呂に直行します。お風呂にお水を張っておけば、水風呂としては十分。ぬるめにも設定できるし、氷を入れればキンキンに冷やすこともできますよ。

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デザインの原点はドイツに

──ところで、真栄城さんのデザインの原点はどこにあるのでしょう。

真栄城さん:高校2年生の時、成績に伸び悩む自分に母が提案してくれて、1年間ドイツに留学していたんです。ドイツの街並みに感動して、建築やインテリアが好きになりました。それまで僕は、雑誌の『MEN’S NON-NO』『Smart』などを見てかっこよさを感じていたけれど、それとはまた違った世界観に目覚めて、デザインを志したんですよ。

そういえば、留学先のドイツでは医師の家にホームステイさせてもらったのですが、家にサウナがありました。当時は一度も入っていないけれど(笑)。ドイツにはお湯をはる習慣もなかったし、海外と日本のライフスタイルの違いを感じましたね。

──デザイン系の大学卒業後は上海の大学院に進み、建築を学ばれたそうですね。

真栄城さん:はい。大学院卒業後は、日本の設計事務所に就職しました。デザインがやりたかったはずなのに、なぜか戸建てを造る会社に就職して、3年間、月10万円の給料で働いていたんです。

このままではダメだと転職して、商業建築の世界に飛び込みました。そこでは百貨店やレストランをつくったりして、自分が望んでいた空間デザインやインテリアに携わることができたんです。

──そこでの経験が今に繋がっている。

真栄城さん:そうですね。商業プロデュースを学べたことは大きかったと思います。そこで学んだのは、商品自体の在り方を先に考えて、それを空間にどう落とし込むか。デザインを先に考えるのではなく、事業をどうつくっていくかにフォーカスして仕事をするようになりました。

──デザインではなく、事業のつくり方にフォーカスする?

真栄城さん:たとえば、弊社が手がけた事業のひとつに、クリニック「TEN」(渋谷区宮益坂)があります。あえて待合室をつくらずに、予約時間ぴったりに部屋に入れる仕組みにしたクリニックです。診療室は茶室のようなデザインにしました。

このクリニックのコンセプトは、「クリニックって、行くのだるいよな」から始まっています。待ち時間は長いし、待合室には咳き込んでる人がいる。行かなければならない場所なのに、行くのがつらいじゃないですか。

「どうやったらクリニックを楽しい場所にできるか?」「待ち時間がない病院を作るにはどうしたらいい?」と、“商品のあり方”を先に考えて、「カフェに行く感覚で行けるクリニック」をデザインしたんです。

日本に、お金では買えない「エモさ」を

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──家庭用サウナ事業もそうですが、根底には「自分たちの生活をどう楽しくするか」があるのですね。

真栄城さん:そうですね。これから、いろんな国の家庭用サウナを仕入れて、サウナのセレクトショップとしてやりたいと考えています。そしてゆくゆくは、自分たちで家庭用サウナをつくりたい。

今は「フィンランド産だからおすすめ」「北欧サウナに憧れるならコレ」といった選び方が主流ですが、「あなたのライフスタイルにはこのサウナが合いますよ」と提案できるショップにしていきたいんです。その願いを込めて「Opinion SAUNA」と名付けました。

──素敵なネーミングです。家庭用サウナ、体験したくなってきました。

真栄城さん:家にサウナがある生活、いいですよね。今後は、各部屋にサウナを備えた集合住宅をつくってみたいと考えています。たとえば団地。空室だらけの団地も、温浴スペースを変えるだけで、住みたいと手を挙げる人は多いと思うんですよ。

ドイツに留学に行った時から「日本ほど生活に適した場所はない」と、僕は考えているんです。欲しいものは手に入るし、人も優しい。でも日本には、お金では買えない「エモさ」のようなものが足りないと思っていて。「日本に住みたい」「日本のこの生活、良いよね」と思ってもらえるように、新たなライフスタイルを提案していきたいですね。

Text:白石果林
Photo:村山世織
Edit:小林雄大

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Beyond magazine 編集部

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