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特集

「ソーバーキュリアス」って知ってるかい?

ノンアルバーで酔わない、引きずらない、シラフでスマートな夜

author: Beyond magazine 編集部date: 2023/05/15

お酒には人と人との距離を縮める力がある。だけど、飲みすぎると次の日に響くし、人によって飲める量はそれぞれで、まったく飲めない人だっている。「友情にお酒の強さは関係ない」のだから、飲めない人も、飲める人も一緒にノンアルで楽しむ夜があってもいいんじゃないか。だって東京には、飲まなくたってノンアルコールで楽しめるお店がたくさんあるんだから。今回は、ノンアルで楽しみたい、そんな夜にうってつけの3店舗を紹介。

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あえて飲まないという選択肢
「ソーバーキュリアス」って知ってるかい?

「ソーバーキュリアス」という言葉を聞いたことはないだろうか。日本語では「選択的下戸」と訳されるライフスタイルのことを指す。「sober(酔ってない、しらふの)」と「curious(好奇心が強い)」から生まれた造語だ。

このトレンドは世界的に広がっており、日本でも「ノンアルコール」の需要が高まりつつある。お酒の飲み方にも多様性が求められるようになってきたなかで、飲めない人も、飲める人も一緒になって楽しめるノンアルコールバーが今注目されている。

#001:Low-Non-Bar@神田

バーは「立ち入り禁止」じゃない
飲めない人も楽しめるクラシックなバー

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みんなでワイワイするのも楽しいけど、たまには静かに、クラシックなバーで大人の雰囲気に酔いしれたい。もちろん、ノンアルで。

だけど、バーってなんだか、「飲めない人」にとっては、立ち入り禁止のレッテルを貼られているような気がしてしまう……。

神田にあるノンアルコールカクテルバー「Low-Non-Bar(ローノンバー)」の高橋弘晃さんは、バーの売りものはお酒だけじゃないのに……でも、実際バーテンダーはお酒だけを売りにしている、という課題を持っていたそう。そんななかで、海外ではノンアルコールがトレンドに。このブームは日本にもやってくる、と感じ、2020年にお店をオープン。

コロナ禍を経て、お酒に規制がかけられるようになったことで、ノンアルコールの需要が急増、想像していたより早く認知されるようになったそうだ。

一番人気のカクテルは、お店の名前でもある「Low-Non-Bar」。

ローノンバー(1430円)
「Low-Non-Bar」(1430円)

カクテルの語源と言われている「鶏の尻尾(cock tail)」を連想させるグラスは、とてもチャーミングでビジュアル面も人を惹きつける。

4種類のベリー、パプリカ、唐辛子、シュラブというビネガードリンクの組み合わせは、味に深みがもたらされ、アルコール特有の苦み、辛みを感じ、ついついノンアルコールであることを忘れそうになる。なんでも、唐辛子に入っている「カプサイシン」という辛みが、人間が口にするものの中で一番アルコールに近い味がするからだとか。

「紫蘇カルダモン」(1320円)
「玄米ピニャカラーダ」(1540円)

そのほかにも、「Low-Non-Bar」では、独自のアロマウォーターを手作りしている。

植物などからジンやウォッカなどお酒の素となる風味を蒸留器で抽出し、それらをカクテルのベースとして使うことで、本物のカクテルと感じさせるほどの高い完成度のモクテル(「Mock(似せた、真似た)」+「Cocktail(カクテル)」)を生み出しているのだ。

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「M*(エムアスタリスク/写真下)」は「Low-Non-Bar」が味わいを監修したノンアルコールアイテム。

アルコール0%のジンをベースに3つのテイストをラインナップ。まだまだ時間のある土曜の午後、酔わずとも、たっぷりと自由に時間を過ごしたい、そんな思いから「Saturday 3pm」と名づけられたキャッチフレーズも素敵!

「M* Non-Alcoholic Gin Saturday 3pm」(1920円)ほか

飲めない人も楽しめる
新しいバーのカタチ

今回、一番驚いたことは、バーテンダーのなかにもお酒を飲めない人がいるということ。

「僕自身もお酒は弱かったですし、自分たちはバーが好きで、お酒を飲みに行くというよりも、バーの雰囲気であったり、バーテンダーとの会話が好きなんです。だけど、やっぱりお酒が飲めないとなると、排他的、居づらい雰囲気とかちょっと冷たくされることもあるんですよね」

と語る高橋さん。この気持ち、こんな経験「飲めない人」にとってはすごく共感できるのでは。

バーに入ってみたいけど、お酒が弱い、飲めない自分は場違いな気がしてちょっと怖い、そんな人でも楽しめる本格バー「Low-Non-Bar」。ここには「お酒を飲みたい人は飲んで、飲みたくない人は飲まずに過ごせるバー空間を作りたい」という高橋さんの思いにも、納得させられる美味しい「お酒」が待っている。

Low-Non-Bar

住所: 東京都千代田区神田須田町1-25-4 マーチエキュート神田万世橋1F-S10
営業時間:月〜日曜/14:00〜23:30
定休日:不定休
TEL:03-4362-0377
WEB:Low-Non-Bar
Instagram:@low_non_bar/
facebook:Low-Non-Bar

#002:Low Alcoholic Cafe MARUKU@目黒

海外のノンアルクラフトビールは
なぜ美味しいのか

カクテルだけじゃなくて、クラフトビール業界にもノンアルの波が押し寄せている。東急東横線学芸大学駅からほど近い「Low Alcoholic Cafe MARUKU」は、“LOW ALCOHOLIC”を掲げるダイニングバーと、ノンアル専門ECサイト「MARUKU」を運営している。

海外のノンアルクラフトビール(約20種)を中心に、ノンアルのスパークリングやワイン、ジンやウイスキーなどを取り揃えている。

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2023年5月末で2周年を迎えるという、オーナーの桜井鈴茂(さくらい・すずも)さんは、もともとは根っからのノンベェ。毎日のように飲んでは、寝起きのだるさと前夜の反省に苛まれていたそう。

「3年前にきっぱりやめようと思ったんだけど、なかなかウマいノンアルビールがなくて。ある日、英語で検索してみると、欧米ではノンアルのカルチャーが思いのほか盛り上がってたんだよね。そのときに『ソーバーキュリアス』という言葉も知って。正直、国内大手のノンアルビールだけだったらやめられてなかったと思う。最初に飲んだドイツの『エルディンガー』には驚いたね」

日本の大手企業が作っているノンアルビールは、ビールの味に寄せるために、苦味成分などもともとビールに入っていないものを「添加」しているらしい。けど、海外のノンアルビールの多くは、通常通りビールを作ってからアルコールを抜いているそうだ。なるほど、ウマいのにも納得だ。

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ソーバーキュリアスは
既存カルチャーへのアンチテーゼ

「MARUKU」では、桜井さんの奥さま・のぶ子さんが料理を切り盛りしている。アパレルデザイナー・バイヤーとして各国を旅してきた経験からヴィーガン対応も可能なフードを含む、バラエティあふれるメニューが並んでいる。

「『ヴィーガン』も『ソーバーキュリアス』も欧米だと日本とはちょっと違うカルチャーなんだよね。北米でヴィーガンレストランには入ったら、パンク系の店員さんが働いてたりする。つまり、上の世代のカルチャー、動物を殺す・肉を食べるのは野蛮だっていう考え。ソーバーキュリアスもそういう感覚に近いと思うんだよね。お酒を飲まないことがむしろ進化っていう発想」

日本国内のヴィーガン、ソーバーキュリアスのトレンドは、自らの健康のために取り組んでいる人が多いけど、海外のそれとはまったく異なる思想だ。バーカウンター介せばそんな“ツマミになる話”にも花が咲く。もちろんシラフだ。

桜井さんが80年代に広がりアメリカン・ハードコアパンクから生まれた思想のひとつ「ストレートエッジ」について教えてくれた。「喫煙しない」「麻薬を使用しない」「アルコールを摂取しない」「快楽目的のみのセックスをしない」というのが基本理念。

「酒に酔っ払って武勇伝を語っているのは、言わばオールドスクールなんだよね。野蛮な大人がやっていることはやらないっていうのが『ストレートエッジ』の基本にある考え方で、昨今のヴィーガン、ソーバーキュリアストレンドにもそんなルーツがあるのかもしれないね」

LOW ALCOHLIC Cafe MARUKU

住所:東京都目黒区鷹番3-20-2
営業時間:火・水・金曜/18:00〜23:30
土・日・祝日/17:00〜23:30
定休日:月曜、木曜
TEL:03-6451-0944
WEB:MARUKU
ECサイト:MARUKU
Instagram:@maruku09_
Twitter:@lowalcafeMARUKU
facebook:MARUKU

#003:SUMADORI-BAR SHIBUYA@渋谷

渋谷・センター街から発信する
「スマートドリンキング」

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アサヒビール社が提唱している、飲み方の多様性とスマートなお酒の楽しみ方「スマートドリンキング」。通称「スマドリ」を実際に体験できるバーとして2022年6月にオープンしたのが「SUMADORI-BAR SHIBUYA」。

渋谷のセンター街のど真ん中に位置するスマドリバーは、一面ガラス張りの外装で、バー特有の「入りにくい」という雰囲気はまったくない。バーにしては明るい照明が使われているのにもこだわりがあり、「お酒を飲めない人が、私たちもバーにいていいんだ、という安心感を与えたい」とブランドマネージャーの加藤寛康さん。

飲めない人からの徹底的なヒアリングによって作られたドリンクメニューは、なんと100種類以上! 0%、0.5%、3%の3つのアルコール度数と味から、自分にぴったりのドリンクを選ぶことができる。

一番人気のメニューは、スマドリバーのシグネチャードリンクでもある「マーブリングレイン」。

「マーブリングレイン」(800円)

マーブル模様の綿菓子に炭酸水をかけると、溶け出した綿飴が虹色の雨のように降り注ぎ、クラフトレモネードの色が変わる。もちろん、このドリンクもアルコール度数を選べて、お酒が飲める人もそうでない人も同じ飲み物を楽しめるってわけ。

「マーブリング スノー (1日10杯限定)」(850円)

お酒を飲めないあの子と
初めて乾杯ができた!

スマドリバーのロゴにもなっているマーブル模様には、「飲める人も、飲めない人も、分け隔てなく、仲間と楽しめる」という意味が込められており、多様性の象徴として、スマドリバーのコンセプトを表現しているんだって。

メニューには、初めてお酒飲む人のためにカクテルが選べる「ドリンクマップ」も(写真上)。

実際に来店されたお客さんで、自分は飲めるのに、お酒が飲めない大親友とずっと飲みたかったんだけど、初めてこのバーで乾杯ができた! という声をいただいたことがあるそう。

「お酒の強さに関係なく一緒に楽しめる、これが、私たちが目指している飲み方の多様性です」と加藤さん。

「飲める人」からすると、「飲めない人」ってお酒の場に誘いづらい。だけど、その逆も然りで「飲めない人」からすると「飲める人」を誘うのにはかなり抵抗がある。だけど、一緒にお酒の場を楽しみたい。「SUMADORI-BAR SHIBUYA」は、そんな願いが叶えられる場所である。

SUMADORI-BAR SHIBUYA

住所:東京都渋谷区宇田川町23-10
営業時間:火〜木・日曜/12:00-22:00
金・土曜/12:00-23:00
(平日12:00〜17:00は1Fのみ)
定休日:月曜日
TEL:0120-779-889
WEB:SUMADORI-BAR SHIBUYA
Instagram:@sumadoribar.shibuya/

東京の夜は飲まなくたって楽しい

東京の夜は、飲まなくたって楽しい。そんな考えを改めて再認識させてくれるノンアルコールバーのお店。

飲み方にも多様性が求められる時代で、ノンアルコールバーは飲める人と飲めない人とを繋ぐ、架け橋のような存在になるのかもしれない。たまには、飲めない人も飲みたい人も一緒に、ノンアルコールバーで東京の夜を楽しむのもよさそうだ。


Text:岡部伶音
Photo:佐山順丸
Edit:山田卓立

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