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オンでもオフでもない、ニュートラルな働き方を求めて

八ヶ岳のワーケーション施設「neu.Room」は、現代人にフィットする体験デザインがされていた

author: 田中 謙太朗date: 2022/10/23

バブルの終盤頃に鳴り響いた「24時間戦えますか?」の時代は終わり、ジャパニーズ・ビジネスマンの勇気のしるしは栄養ドリンクではなくなった。コロナ禍のリモートワークも後押しして多様な働き方が認められる昨今では、高効率を実現するために働く時間や場所を選ぶ自由度が上がり、旅先で仕事をするワーケーション制度の利用者も着実に増えてきている。
大自然の中で都会のオフィス街とは異なる環境で仕事をしてみたいなら、都心から2時間で行ける八ヶ岳のアウトドア複合施設に新設されたワーケーション施設へ足を運んでみてはどうだろうか。

2022年9月30日、都心のリノベーション・オフィスビルを多数展開するリアルゲイトはアウトドア複合施設「FOLKWOOD VILLAGE 八ヶ岳」(以下、FOLKWOOD)にて、ワーケーション施設「neu.Room(ニュールーム)」をオープンした。

neu.Roomのロゴ。オンでもオフでもない、ニュートラルな仕事のスタイルを掲げる

FOLKWOOD内のメイン棟2階フロアに新設されたneu.Roomは、働きながらバカンスを楽しむというワーケーション利用を目的とした施設だ。

FOLKWOOD メイン棟

リアルゲイトの管理する施設に入居する1200社に向けた1日1組限定の施設であり、仕事とアソビの間をスムーズに行き来する“ニュートラルな状態”を作り出すことを狙ってデザインされている。

neu.Roomオープンの目的について、同社取締役事業本部本部長でneu.Roomの企画を担当した渡邊学さんは次のように語った。

「管理物件も65箇所を超え入居企業数が1200社を数えたことで、会社としてだんだんと余裕が出てきたこともあって、採算性を考えずに入居者の皆さまのロイヤリティにより強く寄与できる施設をリリースできるようになりました。今回のneu.Roomはリアルゲイトの管理する物件を今後も利用したいな、と思ってもらえるようなコンテンツを増やすことを目的としてデザインしています」

ベンチャー・スタートアップの福利厚生をサポートするリアルゲイトの「JOINT HUB」サービス

neu.Roomから繋がる同社の事業の可能性について、次のようにコメントしている。

「これまでも入居企業の社員の皆さまが利用できる様々なサービスを提供してきましたが、このneu.Roomはその事業の一環です。1200社の社員の皆さまがリアルゲイトという会社の中に入って、全体が共同体となって福利厚生を受けるイメージです」

このneu.Roomをはじめとして、リアルゲイトは福利厚生サービスの「JOINT HUB」を本格始動するとのこと。これまで実施していた入居者交流会やスポーツジムでの特別料金の適用などに加え、今後はneu.Roomのような入居者用の特別施設やプライベートクラブの設立などが予定されている。福利厚生の考え方は内製化されたアセットを利用する時代ではなく、ムダのないサービスを利用する時代へと変化しつつあるのだ。

リアルゲイトの提供する福利厚生サービス「JOINT HUB」のイメージ。さまざまなサービスやヒトをつなげ、その拠点を創ることへの願いが込められている

小さなディテールを追求することで、大きな経験を生み出す

部屋全体を見渡してみると、家具やアメニティへのこだわりの強さをうかがえる。

「造作家具を多く利用しているのも特長です。既製品だと、惜しいな、と思うことが多く、価格に対して価値を出しづらいため、一つひとつのポイントにこだわって製作しています。

例えば、メラミンという材質は家具の材料としては主流ではあるものの、素材の質感を出したい場所では極力使わないようにしています。数多くある運営物件の間でそういった価値観が違うと違和感が出てしまうため、社内でのものづくりのレベル合わせが重要だと考えています」と、渡邊さん。

ソファ座面の形状にも注目してほしい。座る際の心地よさを重視し、より滑らかでゆるい雰囲気のものを制作。一体感のある空間のために、材料だけではなく形状にもこだわりを見せる。

居心地の良さの追求のためには、形状までも妥協しない

「スペースのデザインは、コンセプトからディテールまですべて担当者が決めます。担当を細切れにせずにひとつの空間として考えてもらうことで、スペースに一貫した思考を与えることができると考えています」と渡邊さんはコメントした。

キャンプ場から連想される山小屋を意識しつつも、都会的要素を散りばめたデザイン。コンセプトの一貫性がスペースとしての心地良さを育む

新設のキャンプ場「FOLKWOOD」の強みは本格キャンプ飯と“都会性”

neu.Roomを最大限に活用するには、FOLKWOODを利用しない手はないだろう。約1万8000坪(約6万平米)の大自然の中に、約100平米をレギュラーサイズとして70の林間サイトが整備されたキャンプ場のFOLKWOODは、トランジットジェネラルオフィス(以下、トランジット)が企画・運営を行っている。

元々の森の木を活かした設計をしており、サイト一つひとつが異なる表情を見せる。約100平米のレギュラーサイトで一泊/5000円〜。電源付きサイトは一泊/7000円〜

トランジットは空間の創造を通してライフスタイルを再定義する企業として、首都圏を中心に飲食店を展開している。FOLKWOODは、さまざまな良質な空間の形成に携わってきたトランジットにとって初となるキャンプ場の運営だ。

同社の強みである飲食事業を活かして、FOLKWOODは“おいしいキャンプ”をテーマとするアウトドア複合施設としてデザインされている。キャンプサイトだけではなく、ハイレベルなミールキットにも注目したい。

オリジナルインディアンスパイスの骨付きラムショルダー。4人前/5500円

お肉の品質もさることながら、にんじんやじゃがいもなどの定番の付け合わせ、さらに赤オクラなどの珍しい地元野菜が取り入れられているのも嬉しいポイントだ。

下ごしらえ済みの食材に加えて、付け合わせにもこだわったミールキットは調味料とセットで一式が貸し出されるため、標高1000mの澄んだ空気の中で手軽にワイルドな本格的キャンプ飯を楽しめる。

骨つきリブロース「トマホーク」のレモンハーブ焼き。4人前/1万2000円。全長30cmの塊肉は圧巻。スパイスを振って焼けば調理完了で、手軽にキャンプ飯を実現

上質な食事だけでなく、キャンプに関わるほとんどのことをキャンプ場と近隣施設で済ませてしまえることもポイントだ。

消耗品はその場で購入できるし、調理器具や野営道具をはじめとした多くの備品の貸し出しも充実している。また、近隣には道の駅やコンビニもあり、大げさではなく“身ひとつ”でキャンプに臨める設計となっている。

棚には各種燃料と着火装置、アルミホイルやラップなど。消耗品で困ることはなさそう
メイン棟内キッチン前の写真。サウナは貸切タイプとパブリックタイプの二種類があり、朝から夕方まで利用できる

FOLKWOODを簡単に説明しろと言われたら、“都会をそのまま持ってきたキャンプ場”と表現すると思う。都会のレストランで振る舞われる洗練された食事、都会的感性で設計されたエントランス、デザインされたアクティビティ体験、充実した貸出品など、その場で済むことを意識した設計はミニマライズに慣れた都会人向けといえる。キャンプをはじめとしたアウトドアは、もはや屈強な山男だけのものではなくなり、さまざまなタイプの人が各自違った目的で利用するものになってきているのだ。

キャンプ場にはホンダのステップワゴンで。広い視野に加えて容量の大きな収納スペースは、離れた拠点のアウトドアへ移動するのにピッタリ

2010年代後半にアメリカで生まれ、最近日本でも認識されつつある働き方として“ワークライフブレンド”という考え方がある。ワークライフバランスのように仕事とプライベートを切り離して考えるのではなく、仕事も人生の一部として考えてあえて仕事とプライベートの境界を曖昧にすることで、お互いに良い影響を与え合いながらふたつの世界をブレンドしていくことで人生をより良いものにしていく、という考え方だ。

家や職場といった場所によって変わる役割を背負って生きるのではなく、一人の人間としてシームレスに時間を過ごすことが素敵な生き方だと感じるのは私だけだろうか。

オンでもオフでもない、ニュートラルな状態をゴールとして設計されたneu.Roomはそんな働き方をサポートする重要な鍵になるだろう。そして、最小限の人生の荷物で生きようとする現代人にとって、重いキャンプ道具を揃える必要なく気軽に出かけることのできるFOLKWOODはワーケーションにうってつけの施設だ。

よりよい生き方を見つけるために、八ヶ岳に現れたアウトドア・ワーケーション施設で新たな働き方を探してみよう。

Photo:村山世織

取材協力:リアルゲイト

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ライター
田中 謙太朗

2001年東京生まれ。早稲田大学在学中。共同通信社主催の学生記者プログラムに参加したことをきっかけに執筆を開始。その後、パナソニックのイベントへの登壇など、記者としての活動と並行して、英自動車雑誌『Octane』の日本版にて翻訳に携わる。主専攻である土木工学に関連したまちづくりやモビリティに加えて、副専攻に関係するサスティナビリティに関する話題など、これからの時代を動かすトピックにアンテナを張る。
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