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Interview

現代の新常識「体食同源」を実践してみよう!

アメリカ発「アスリート・プレート」ではじめる簡単ボディメイク

author: 田中 謙太朗date: 2023/03/31

スポーツ強豪国として真っ先に名前があがるのが、アメリカ合衆国だ。歴代オリンピックメダル獲得総数はぶっちぎりの1位で、約3000枚(第2位はソ連の約1200枚)にのぼり、優れた身体能力と技術で、アスリートに集まる注目は非常に大きい。しかし、巨大なスポーツビジネスや強固な管理体制など、ピッチ外での戦いにも熱視線が注がれている。そんなスポーツやボディメイクのための栄養管理に関するメディアイベントが行われた。

2023年2月7日、アメリカ大使館・農産物貿易事務所(Agricultural Trade Office:以下、ATO)によるメディアイベント「アメリカ発スポーツ栄養学に基づくヘルス&ウェルネス 2023」が開催された。管理栄養士・公認スポーツ栄養士の橋本玲子さん、女優・歌手のすみれさんに加え、ATO所長のチャンダ・バーク氏、同シニアマーケティングスペシャリストの青木純夫氏が登壇したこのイベントでは、橋本さんによる栄養学の基礎に関するセミナーと、すみれさんと橋本さんのクロストークが行われた。

メダル獲得総数ぶっちぎりの1位、アメリカン・アスリートの戦いは食卓から始まる

「筋肉をつけて脂肪を落とすためのボディメイク向け食事法」と題して行われたセミナーには、栄養士として20年以上キャリアを重ね、研究員としても日々知識をアップデートしている橋本玲子さん。ここでは、アメリカのアスリートと日本のアスリートにおける栄養に対するリテラシーの違いを指摘した上で、運動量の増減を基準とした食事のコントロールのための視覚的なツールが紹介された。

橋本玲子さん。株式会社Food Connection代表取締役。管理栄養士・公認スポーツ栄養士として、20年以上にわたって栄養面からトップアスリートを支える。2019年ラグビーW杯では、参加チームのメニューコーディネートを担当

東京オリンピック・パラリンピック栄養支援推進委員を務める橋本さんが、大会前の調査として米国オリンピック・パラリンピック委員会本部を訪れたとき、アスリートの栄養管理として驚いたことがあったという。

「本部にあるビュッフェスタイルの食事会場では、選手が自主的に低脂肪・高タンパク、ビタミンと抗酸化物質の豊富な食事を選んでいます。加えて、選手たちが調理実習をするためのキッチンも用意されており、アメリカでは選手たちに栄養教育を行う時間がきちんと準備されています。

栄養とスポーツの関係は1990年以降の日本でも認知されるようになってきましたが、“栄養のセミナーを受けるなら、トレーニングに時間を割きたい”という声が日本ではまだまだ根強い印象です」と、日本とアメリカにおけるアスリートの栄養に対するリテラシーの質的な違いを指摘する。

「よく“バランスのとれた食事を摂ろう”といいますが、バランスってとても難しいですよね」と、橋本さんが紹介するのが『アスリート・プレート』と呼ばれる運動強度に合わせて食品グループの配分を調整するための視覚的ツールだ。(コロラド大学HPを参照)これは、米国オリンピック・パラリンピック委員会とコロラド大学によって共同開発された、学術的な検証を経た栄養面における推奨事項を一枚の図表にまとめたもの。

『アスリート・プレート』では、身体をつくるためのタンパク質、身体の調子を整えるための野菜類・フルーツ、エネルギーとなる炭水化物・脂肪の摂取バランスをその日の運動量ごとに表せる。例えば、軽いトレーニングならお皿の半分が野菜・フルーツ、1/4がタンパク質、1/4が炭水化物、といった具合だ。

セミナー後、より効果的な食習慣の浸透のためにはどのようなことが必要なのかという筆者からの質問に、橋本さんが答えてくれた。

「自分の日々の食事に置き換えたときに、何を取り過ぎていて何が足りていないのか、を栄養学という“学問”として考えるのはとても難しいですよね。まずは、食事の際にアスリート・プレートを構成するタンパク質(主菜)、炭水化物(主食)、野菜類・フルーツ(副菜)の揃った食事が取れているかどうかを振り返り、毎食、自分が口にするものを意識することから始めてはいかがでしょうか。」と、栄養に関するより簡素なルールづくりや実践的なトレーニングの必要性を語った。

『アスリート・プレート』が掲載された論文の概要欄には以下のような記述がある。

“栄養学教育のビジュアルツールは(栄養学の背景のない)一般の人々が科学を実践に移すことを補助するように設計されています。本研究の目的は『アスリート・プレート』がアスリートに対する現代のスポーツ栄養学の推奨事項を満たしていることを確かめることです。”

その日の運動量に応じてエネルギー源をコントロールすることで“バランスのいい食事”を実現する『アスリート・プレート』は、まさに“今日からできる”実践的な食事法を意識して開発された図表なのだ。

次に行われたすみれさんと橋本さんによるクロストークでは、大学卒業までアメリカで過ごしたすみれさんから、私たちが慣れ親しむ日本の食習慣の印象が語られた。

「アメリカでは(食物繊維の豊富な)キヌアやオートミールをよく食べていましたが、日本の食事では少量ずついろいろなものを食べるため、バランスよく栄養を取れる印象です」と、すみれさんはコメントした。

クロストークセッション中のすみれさん(中央)と橋本さん(右)

クロストーク後、栄養バランスの良い食事の実例として、取材陣に向けて橋本さん監修レシピによるメニューが振る舞われた。

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手前から、ナッツとドライフルーツのエナジープロテインバー、カルシウム豊富なおかずマフィン、ビタミンDたっぷりのスティックオムライス、良質なタンパク質を含むアラスカ産紅鮭のサンドイッチ

“身体にいい食事”と聞くと、特別な食材を選んだり、我慢する食事を思い浮かべてしまうかもしれないが「1週間くらいのスパンで、栄養のバランスをカバーしながら食事をしていくことが大切です」と橋本さんが語るように、実際にはバランスを取りつつ、より良いカタチで継続することが重要だ。今回試食として提供されたメニューは栄養価が高くバランスが良い上に、飾らない味付けで明日も食べたくなるメニューだった。

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グレープフルーツのカゴには温度管理用のセンサーが取り付けられている。NFC技術によって一斉に温度管理ができるため、ただ増産するだけではなくより良い管理方法も開発され続けている

“スポーツ弱小国”の日本が変わったのはどこから?

日本のスポーツの決定的な瞬間というと、サッカーファンの筆者の頭にはサッカーW杯初出場のかかる対イラク戦にて同点弾を決められた「ドーハの悲劇」が浮かぶ。もはや30年も前になる出来事だというのに、テレビでサッカー日本代表の話題が出るたびに、「スポーツで弱かった日本」のイメージを表すようにあのヘディングシュートが再生されている。しかし今では「ドーハの悲劇」を昔話として知る世代がサッカー日本代表チームのスタメンに名を連ね、2022年大会を含めて7大会連続でのW杯出場を果たした現在、「スポーツ弱小国・日本」は過去のイメージとなりつつある。

30年という世代交代には短すぎる時間における変化に、スポーツ栄養学の発達は強く関わっている。「食事を考える」という身近な問題に取り組み続けたことで、当の本人たち以外の精神性すら変えてしまったのだ。

栄養には身体をつくる以上のパワーがある。より健全な身体がより健全な精神を築き、そして周囲へと伝播していく。より良い生活のために、まずは今日の晩ごはんの栄養バランスを少し考えてみよう。

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ライター
田中 謙太朗

2001年東京生まれ。早稲田大学在学中。共同通信社主催の学生記者プログラムに参加したことをきっかけに執筆を開始。その後、パナソニックのイベントへの登壇など、記者としての活動と並行して、英自動車雑誌『Octane』の日本版にて翻訳に携わる。主専攻である土木工学に関連したまちづくりやモビリティに加えて、副専攻に関係するサスティナビリティに関する話題など、これからの時代を動かすトピックにアンテナを張る。
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