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真のグローバル・リーダーになれるのか

グローバルシェア6年連続1位! 巨大企業ハイアールの欧州での成長を見よ

author: 田中 謙太朗date: 2022/09/24

近年、LGやサムスンなどの韓国家電メーカーがリードする黒物家電に加え、中国メーカーの提供する白物家電も業績を伸ばしている。その中で一際勢いがあるのが、冷蔵庫や洗濯機などの大型の白物家電をメインの商材とする「Haier(ハイアール)」だ。成長を続ける中国メーカーは欧州でどのような立場を望むのか。

2011年に三洋電機が経営破綻した際、主要な基礎技術だった水素電池を含めた大部分はパナソニックに買い取られたが、洗濯機ブランドとして認知度の高かったAQUAはグローバル家電市場に切り込んできた中国企業が買い取った。その中国企業こそが、今回紹介するハイアールだ。ハイアールは当時から巨大企業だったものの、現在においてもその成長は驚異的なものを見せる。

国際市場での存在感はピカイチ! グローバルシェアは6年連続1位をキープ

欧州最大の家電の見本市である「IFA 2022」に出展したハイアールは、プレスカンファレンスにて、インパクトのある数字を並べ立てた。ハイアール欧州最高経営責任者のヤニック・フィアラン氏は、同社の業績について言及した。

「国際市場のシェアにおいて、ハイアールは6年連続で首位に立っています。2022年時点の主要家電製品市場での売上高は4兆円以上を数え、その割合は同市場の16.3%を占めています。競合他社の同市場の最大の占有率が10%以下の中、我々は毎年その差を広げながら拡大を続けています」

「国際市場のシェアにおいて、ハイアールは6年連続で首位に立っています。2022年時点では4兆円以上のシェアで16.3%を占めており、競合他社とは毎年その差を広げています」

「この3年間で色々なことが変わりましたが、変化せずにとどまったこともあります。そのひとつがハイアールの国際市場での存在感です」

冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、ワインセラーのグローバル・シェアにおいても主要家電製品市場に占める同社製品の割合は20%以上を記録しており、その存在感を強調した。

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そして「このプレスカンファレンスの中で最も印象的な事実でしょう」と、フィアラン氏自らがコメントしたのがここから紹介する数字だ。

2019年から2022年の8月時点で、欧州における生産拠点の拡大に対する投資額が約300億円、製品投資によって史上最多となる30,000点の新製品がリリースされ、ブランド投資に対して約400億円を数え、雇用人数は80%増加させるなど実績を用いて欧州市場での存在感を強調した。

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IFAの最後の対面開催だった2019年からの、欧州における成長を語るフィアラン氏

充実したブランドによって加速する同社の拡大

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社名と同名のブランド「Haier」をはじめとして、コンパクト家電ブランドの「CANDY」、掃除機ブランドとして支持される「Hoover」、そして日本でも馴染み深い「AQUA」など数々のブランドが充実していることも同社の成長を助けている。

このようなブランド・ポートフォリオによって、家電市場におけるすべての価格帯の顧客を対象にできることをフィアラン氏は強調した。

「『CANDY』はデザイン性を重視した上でより手に入れやすい製品を、そして『Hoover』は信頼性を重視して高い性能を持つ製品を、加えて『Haier』は最新テクノロジーを取り入れ、テーラーメイドな製品をテーマとしています」

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ブランド・ポートフォリオによって幅広い価格帯の顧客を獲得

テクノロジーの導入という面で考えても「Haier」による技術導入と洗練、「Hoover」による技術の認知と信頼性の向上、そして「CANDY」による技術の定着と、ブランド・ポートフォリオによる技術利用のスムーズな流れが構成されており、このような体制が同社の技術的な挑戦も可能にしていることがうかがえる。

欧州における環境性能最高クラスの製品市場でもハイアールが席巻

今回の「IFA 2022」では多くの企業がサスティナビリティの理念や方法論について時間を割く傾向にあったが、ハイアールは製品の環境性能を強調するなど、より現実的な説明に対して時間をとっている印象を受けた。

欧州におけるエネルギー効率性評価によって、最高評価のAクラスを獲得した洗濯機の欧州におけるシェアの中で、トップの39%が同社の製品であるという事実には驚きを隠せない。それに加え、フィアラン氏は同社製の洗濯機の半分がエネルギー回収期間* 3年以内、100%の製品がエネルギー回収期間5年以内であるということも明らかにした。

*エネルギー回収期間とは、省エネルギー製品について用いられる場合、一般的な価格の製品におけるエネルギー消費量の値と比較して、どれくらいの時間をかければエネルギー消費によってかかる金額(例えば電気代や水道代など)の差分によって初期投資費用の差分を回収できるかという指標である。小さいほどエネルギー性能が高いことを示す。
例えば、エネルギー回収期間が3年の洗濯機の場合、一般的な価格の洗濯機と比較して3年間運用すれば電気代や水道代の削減によって、初期投資額の差分を回収できるということになる。

同社のプレスカンファレンスは、今回の出展企業による発表の中では少し他社とは異なるイメージを持たせた。30分の発表における大部分は同社の国際市場におけるプレゼンスと製品性能についてのコメントであり、「IFA 2022」共通のテーマであるサスティナビリティの理念や方法論について言及する時間は、他社の発表と比べて少なかったのだ。その代わりに製品の環境性能や業績など、事実としての数字が多く並べられていた。

この感想をフィアラン氏に正直にぶつけ、同社のプレゼンスによる国際的な家電業界への影響をたずねたところ、彼は次のように返した。

「我々の使命はカスタマーに対して最大限の貢献を約束することです。例えば、洗濯機のサイズを考えても、欧州において全ての国で同じサイズが適しているわけではありません。

ポーランドのものよりもフランスのものはコンパクトで、カスタマーによってさまざまな要求のカタチがあります。国際市場で最大規模のシェアを持つハイアールだからこそ、カスタマーの細かい要求に対して応えるべく冒険をすることが可能になると考えており、そのための説明により多くの時間を使いました」

社会的な要求を実現するためには、まずは企業として力をつけなければならない。より現実的に、そしてより地道に社会からの要求を満たそうとする同社の姿勢は、世界一のシェアを誇る企業の姿勢として正しい、質実剛健といえるものだった。

出展では製品展示も行われた。「CANDY」ブランドのコンパクトな製品や使わないときは扉で隠しておくことのできる洗濯機など、ユニークかつカスタマーの要求に応えようとする製品が充実している。

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奥行き44cm、重さ9kgの超コンパクトな洗濯機もリリース

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使わないときは扉でカバー。モーターに工夫があり、熱がこもりにくいものを採用しているとのこと

巨大企業ハイアールは、真のグローバル・リーダーになれるのか

プレスカンファレンスの中で、同社は“リーダーシップ”という言葉を何度も用いていた。いうまでもなく、売り上げの面や製品性能、技術投資などの面においてハイアールの企業としての実力はトップだ。そして、同社が真のグローバル・リーダーシップを望むのならば、ハイアールはこれまでよりもブランドとしてのスタイルやその文化性を意識していくことになるだろう。

ハイアールは真のグローバル・リーダーになれるのか。これからの同社が打ち出すスタイルに注目したい。

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ライター
田中 謙太朗

2001年東京生まれ。早稲田大学在学中。共同通信社主催の学生記者プログラムに参加したことをきっかけに執筆を開始。その後、パナソニックのイベントへの登壇など、記者としての活動と並行して、英自動車雑誌『Octane』の日本版にて翻訳に携わる。主専攻である土木工学に関連したまちづくりやモビリティに加えて、副専攻に関係するサスティナビリティに関する話題など、これからの時代を動かすトピックにアンテナを張る。
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