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Interview

between the arts×Beyond Magazine #004

コレクター視点から学ぶ超実践的アート入門

author: 山田ゴメスdate: 2022/09/16

日本初のコレクション資産管理サービス「COLLET」や、アート管理サブスクリクションサービス「美術倉庫」を運営する「between the arts」の代表を務める大城崇聡(おおぎ・たかとし)さん。今回は「自身のコレクションを最適な環境とシステムで保管したい」という動機から会社を立ち上げたという大城さんの、とどまることを知らない「アートへの愛」を存分に語ってもらいつつ、さらにはコレクター視点からの一味違った「アートの楽しみ方」について、レクチャーしていただいた。

「アート」は応援することで作品の価値を高めることができる

日本アート界に、圧倒的なスピード感で画期的なサービスを次々提供し続ける大城崇聡さんは、自他ともに認める熱烈なアートコレクターでもある。そんな彼の「コレクター」としての経歴を辿れば、そのルーツは小学生時代にまで遡るという。

大城さん:最初は「ビックリマンシール」でした。次は「ドラゴンボールのカード」にいって、あとはガンプラとかキン消しとか? まあ、ここまでは僕ら世代だと普通の少年時代なんですが、中学・高校生になると「裏原」にハマってしまいまして……。「UNDERCOVER」「GOODENOUGH」……あたりがコレクション対象となり、当時はそれらのアイテムを転売するのが楽しかった。

ちょっとだけ着て友だちに自慢してから、当時ストリートキッズたちの情報源だった個人売買情報誌『QUANT(クアント)』(ネコ・パブリッシング/現在は休刊)で売る……みたいな(笑)。このころから、なんとなく「物がお金になる」という感覚を意識しはじめてきました。

その購買欲は、次第にロレックスやクロムハーツやリヒターの絵とかまでエスカレートしていって……「いずれは買いたいな」と、いつも憧れていました。そして、これらの「憧れのアイテム」を少しずつですが、リアルに買えるようになったのが20代~30代。そこから「アート」へと行き着いたわけです。

──コレクション初期の思い出深いアート作品は?

大城さん:KYNE(キネ)さんの作品ですね。2015年ごろだったかな? 今じゃあとんでもない額になりますけど、当時はまだ数万円くらいでした。「高い絵、買っちゃった~!」ってビクビクしながら家に帰ったのを鮮明に覚えています(笑)。

 「between the arts」が提供する コレクション資産管理サービス「COLLET」の大城さんのページ。はじめて購入したKYNEの作品をはじめ、さまざまなコレクションを閲覧できる。

ひと言で「コレクター」と括っても、集めるものは多種多様──ただ、「アート」は「コレクション」という趣味のなかでも、かなり特殊な部類だと大城さんは指摘する。

大城さん:まず、生産背景が工業製品ではないので、(シルクスクリーンなどを除き)同じ物を複数作っているわけではない。だから「価値」がわかりづらい。それをある程度判別する目安になるのが「オークション」なのではないでしょうか。

パブリックな場所で、どれだけの人が「その作品を手に入れたい!」と望み、「どのくらいの入札額が付くのか?」を総合して、アートの価値は決定します。オークションに出たことがない作品は、いくらギャラリーで50万円の値が付いていても、それはあくまで「価格」に過ぎず、「価値」としては「0円」なんです。

たしかに「資産づくり」という面では、アートは実態が捉えづらいかもしれませんが、そのぶん面白い。なにが「面白い」のかと言えば、応援することで価値を高めることが可能だからです。ロレックスは応援したところでどうにもなりませんから(笑)。

たとえば、贔屓の作家さんの作品を買い続けることで、作家さんは描き続けることができる。作家さんは描き続けないと「価値」が生まれてこない。いったん活動をやめてしまうと、その「価値」は急落してしまいます。

本物の絵を一枚買えば、その作家をウォッチするようになる

「アート」を好きになる一番の早道は「観るだけではなく作品を買うこと」だと大城さんは断言する。しかし、アート初心者にとって、それなりの大枚をはたいたうえでの「購入」は、かなりハードルが高いのではなかろうか。

大城さん:とりあえずは、10万円を上限として作品を購入してみてはいかがでしょう。

絵には、土地の「坪単価」と同様「号単価」というものがあります。おおよそだと、有名美大を卒業したばかりの作家さんで号単価は5,000円くらい。また、普通の家だと一番飾りやすい大きさは10号くらい。となれば、出費は5万円程度になります。はじまりは若い有望株な作家さんを見つけて、5万円から10万円の作品を買う、それくらいの気軽さでいいと思います。

できれば、一度作品を購入して「はい、おしまい」じゃなく、購入をきっかけにその作家さんをウォッチし続けてほしいです。作品をひとつ買うと、その作家さんの現状や動向をものすごく真剣にウォッチするようになります。

そうすると、たとえ次の作品がすぐに買えなくてもずっと応援し続けたくなると思います。買えるタイミングになれば、追加して購入する……。また、その作家さんが同年代だったりすると、より親近感も湧いてきますし、ほかの作家さんとの合同展とかを観ると、さらにアートの世界は広がっていきます。

──絵を購入する予算がなくても、せめて贔屓の作家さんがグッズ展開したアイテムを買ってみる……っていうのは?

大城:全然アリだと思います。もはや「ステッカーやTシャツはメディア」ですから。

アートはもっとマス化するべきなんです。たとえば、アメリカでは人口一人あたりの年間アート購入額は約1万円。比べて、日本はその1/25の約400円!──なんと牛丼一杯分しかありません。一方、美術館への来場者数では人口比で見るとアメリカとほぼ同じ。

つまり、アートへの関心は高いのに、購入対象にはなってないという状況です。

たぶん、日本は購入対象としてのアートの情報が多くの人たちに行き届いていないのでしょう。アートについてなにも知らなかったら、ギャラリーに足を踏み入れることすら怖いじゃないですか(笑)。だからこそ、いろんなかたちで作家さんが異業種とコラボすることはとても重要だと僕は考えています。

「インテリア買い」は禁物!

よく「どういった作家さんの作品を買えばいいですか?」といった質問をされるらしい。そんなとき、大城さんは必ずこう答えるという。

大城さん:シンプルに、自分が「好き」だと直感した作家さんの作品を買うべきです。

そのうえで「資産」という観点に立つならば、他の人たちも好きな作家さんの作品を買ったほうがいい。理由は「応援する人が多いから」。一人で好きな作家さんを応援しても、購入できる金額は限界がありますしね。

──ちっとも売れなさそうな地下アイドルを応援するよりは、AKB48に行ったほうが実りはある……といった感じですか?

大城:近いかもしれません(笑)。あと、「インテリア買いはするな」ともアドバイスしています。

──え! それはなぜ?

大城さん:たとえば、「この部屋のここに花の絵を飾りたい」ってことになったら、作家さんは関係なく「花の絵」ばかりを探しまくっちゃうんですよ。そうなると「価値」ではなく「価格」ばかりに目が向いてしまう。「高い」とか「安い」とか「値切る」とか……。だったら、インテリアショップでポスターを買えばいい。

作家さんのステイトメントや作品の制作過程などに共感したうえで価値を見出し、「これが欲しい!」と心底から感じたときに、はじめてその作品を購入する。購入したうえで作品を「どこに飾るか」を考えるのが正しい順番です。

こういう発想の買い方をしなければ「アートを好きになること」、ましてや「アートを資産にすること」なんてできません。

「作家さんのステイトメントや作品の制作過程などに共感したうえで価値を見出す」──要は「自分が好きだと感じた作家自体をより深く理解する」ということだが、それはそれで素人からすれば、なかなかに容易くはないだろう。

大城さん:とにもかくにも、ギャラリーや個展に足を運んで、作家さんととことん会話すること──これしかありません。

──作家さんとの会話って、そう簡単にできるものなんですか? 個展でもすべての時間に在廊しているわけじゃないでしょうし?

大城さん:それこそSNSを最大限に活用すればいい。最近の若い作家さんは、SNSでいつどこでなにをやっているか……という情報を積極的に発信していますので、そこに「いつ在廊されていますか?」と、コメントなりDMなりを送ってみましょう。

かつては「今日、◯◯さんがギャラリーにいるらしいよ」みたいな噂に頼るしかなかった(笑)。作家さんにとってもファンにとっても環境は格段と良くなってきています。

2022年9月16日(金)から9月25日(日)まで開催予定のbetween the arts主催の展覧会 「The Playroom of Fine Art」。参加アーティストは、マイ・リトル、木村みほ、田中紳次郎、Tsai,Ying-Chen。

コレクションは文化をつくる!

さて。ここらで大城さんからBeyond世代に向けて、アートリテラシーをアップするためのコツを伝授していただこう。

大城さん:まずは、お目当ての作家さんを見つけて、実際に作品を鑑賞しに行くこと。これが第一ステップ。プリミティブではありますが、実物を観ることはマスト! 僕も買ったことがない作家さんの作品は実物を観てからじゃないと絶対に買いません。

そして、作品が気に入ったら迷わず購入して、飾って楽しむのが第二ステップ。絵は基本、飾るべきだし、作家さんも飾ったものを愛(めで)てもらうほうがうれしいに決まっています。

飾れないくらい作品が増えてしまい、僕のような「コレクター」になってしまうのが第三ステップ……かな(笑)? そうなったら、定期的に飾る絵を変えて楽しめばいい。

ただし、飾る場所のコンディションは充分に配慮してください。「掛けっぱなし」はよくありません。作品は紫外線に弱いので。いくら遮光カーテンで保護していても、照明をつけたら紫外線の影響はやはり受けてしまう。適度に掛け替えて飾っていない絵は保管箱に入れておく。

日本は高温多湿なので絵や写真が痛みやすく、押し入れはとくに湿気が溜まりやすいから、保管場所としては最悪──室温と湿度が一定に保たれた場所に保管することが大切です。

──結局は、美術品の専門倉庫とかに預けるのがベスト?

大城さん:ですね。とは言え、美術品専門の倉庫はほとんどが「一坪いくら」のスペース貸しなので金額的な負担も大きくなる。それが嫌だったので、僕は「一点いくら」のアート管理サブスクリクションサービス「美術倉庫」を立ち上げたわけです。

「好き」が高じて「コレクター」になっていく──じつに健全かつ真っ当なプロセスである。しかし、「断捨離」や「ミニマルライフ」がブームとしてもてはやされている昨今において、「コレクション」は、トレンドに逆行する行為なのかもしれない。 

大城さん:「コレクションは文化をつくる」──これが僕の座右の銘です。同調圧力的な「断捨離ストレス」とも、いまも戦い続けています。そんな葛藤と試行錯誤のすえ、

「不必要なものは買わない」
「欲しいものしか買わない」
「自分のなかでバリューのあるものしか買わない」

……という3つの判断基準へといたることができました。

アートコレクションは「ショート」ではなく「ロング」の発想で

無理して「定住」することもないこのご時世、いろんな場所に移住してやりたいことをやればいいのだから、基本「物を持たないことはいいことだと思う」と大城さんは語る。だが、「資産をつくること」を念頭に置くなら……やはり、人は「物」から逃れることができない。

大城さん:物を持てば、当然のごとくコストがかかります。けれど、ここから先、とくに10年くらい先は、おそらく「インフレにどう対応するか」がテーマになってきますので、好もうが好まなかろうが「物を持っている人が強くなる時代」がくるのではないでしょうか。

日本人の多くが「モノを持つこと」を苦手だと思い込んでいる理由は、すべてを「ショート」で考えているから。発想が「ショートターム」なんです。「断捨離」が流行るのも、スニーカーを買ってすぐ転売しちゃうのも典型的な「ショート」。僕も昔はそうだった(笑)。必要な物だけを買えば、発想は必ず「ロング」になってきます。

──株だって、ちょっとでも株価が下がってしまえば、すぐ売りたくなっちゃいますもんね(笑)。

大城さん:株なんて「ロング」で持てば確実に上がっていくものなんです。リバウンドして株価が上がった瞬間に売ればいいのに、それまで我慢ができない。大半の人たちは“なけなしのお金”をすべて張ってしまい、しかも「投機」という観点が強すぎるから、少額の損の気配だけでもすぐ売りたくなってしまう。

「投資」という着眼でなにかを買う場合は、余剰資金で補うのが鉄則──そういう意味でも「アート」はオススメの分野だと大城さんは微笑む。

大城さん:「物」で一番わかりやすいのは「金(きん)」なんですけど、金って……別に観ていて楽しいわけじゃないですから。愛(め)でることができない(笑)。

対して「アート」は予想が外れたとしても、飾って楽しめる──「投資」という側面もあるいっぽうで、「自分の生活を豊かにする」という側面もあるのが「アート」の最大の魅力なんです。

大城 崇聡(おおぎ・たかとし)


1980年福岡県生まれ。西南学院大学経営学部を卒業後、住宅設計、インテリア設計を経て、不動産業に携わる。2020年に「株式会社between the arts」を起業し、日本初となるアート管理サブスクリプションサービス「美術倉庫」をスタート。現在、約600点以上ものアート作品を自社の資産管理サービス「COLLET」にて管理・公開している。2021年1月には元麻布にアートコレクターのためのアートギャラリー「between the arts gallery」を開設。

between the arts: http://bwta.jp
COLLET: pocorizm
Instagram: @pocorizm




【artworksとは?】

「アートをはじめとしたコレクションが生み出す資産価値を大切に守ることを理念とし、アート領域でさまざまなDX推進事業を手掛ける「between the arts」が運営。アーティストが創作活動に集中できる環境づくりのため、多角的なサポートを行なっている。「一作品からの預かり・管理」「アーティスト専用ページの作成」「作品登録代行」から「額装・配送手配」「展示・販売会の開催」など、そのサービス内容はフレキシブルかつ多岐にわたる。

URL:
https://bwta.jp/services/artworks/

登録アーティスト一覧:
https://artworks.am/artists


author

文筆家・イラストレーター
山田ゴメス

1962年大阪府生まれ。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するコラムニスト兼ライター&イラストレーター。『麗羅』(漫画原作・作画:三山のぼる/集英社)、『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版)、『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(菅原道仁共著/ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。特に身体を張った体験取材モノはメディアからも高い評価を得ている。2019年、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)カウンセラー資格取得。2020年、温泉マイスター取得。
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