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どうせ買うならこれがいい vol.1

リサイクルガラスから誕生。光が透けるお香立てwa/terの『INCENSE STAND』

author: 日比楽那date: 2024/03/28

たくさんのものが溢れる現代、「おしゃれ」「便利」はもはや当たり前。インテリア、ファッションアイテム、雑貨……どれもせっかく買うならエシカルなものが良いと考えている人も多いのでは。そんなあなたに向けて、本連載では「どうせ買うならこれがいい!」と思えるようなプロダクトやサービスを紹介する。

今回ピックアップするのはwa/terの『INCENSE STAND』。よく見る平たいプレート状のお香立てと異なり、厚みのある形と思わず触れてみたくなるような質感が目を引くこのアイテム。どうやらリサイクルガラスを原料に一つひとつ手作業でつくられているらしい。

そんなお香立てが生まれた背景やプロダクトの特徴について、作り手の小倉寛之さんにお話を伺った。

wa/ter 『INCENSE STAND』

INCENSE STAND 75φ

サイズ: 75φxH30(mm)
カラー:ライトイエローグリーン/ブルーグレー
値段:8250円

INCENSE STAND 90φ

サイズ: 90φxH30(mm)
カラー:ライトイエローグリーン/ブルーグレー
値段:1万1550円

※写真はINCENSE STAND 75φ ライトイエローグリーン

再生ガラス工場で出合った素材に魅せられて

wa/terは、内装設計やインテリアデザインを手がけるDRAWERSのオーナー兼デザイナーである小倉さんが展開しているプロダクトブランドだ。もともとどのようなきっかけで立ち上げられたのだろうか。

「内装やインテリアの仕事を10年以上続けてきたなかで、納期などさまざまな制約に縛られずに自分たち自身が使いたいものをつくってみたいという思いが芽生え、2020年にwa/terを始めました」

そう話す小倉さんは、プロダクトをつくるにあたって工房や工場を訪ねて改めてさまざまなものづくりの現場に触れ、そこで働く人々の声を聞くことで、発想を広げていったそう。

そんななか、再生ガラス工場で出合った素材に引き込まれた小倉さんによって生み出されたのがHAMONというプロダクトだ。

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「リサイクルガラスの質感に魅せられたので、その素材自体を感じてもらえるようにしたかったんです。使い方を規定したり無理に機能性を持たせたりせず、文字通り波紋を思わせるようなオブジェとしてデザインしました」

そして、そのHAMONをベースにお香を立てるための手が加えられたのが『INCENSE STAND』である。

「きっかけはコロナ禍で、都市から離れた環境のいいところにリモートオフィスをつくろうという流れになり、淡路島の物件に巡り合ったことです。

現在、その海沿いの物件でISLAND LIVINGという貸別荘の事業を行っているのですが、周辺のものづくりを見ていくなかで、淡路島がお香生産量日本一の、“香りの島”であることを知りました。

淡路島でお香の工場を見学したり香りのアーティストに会いに行ったりしながら、wa/terのプロダクトとしてもお香作りを始めたところ、プロダクトとプロダクトを紐付けられる可能性を感じて、HAMONにお香を挿すアイデアが生まれました」

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小倉さんが再生ガラス工場で出合った素材と淡路島で出合ったお香の交差点で生まれたというその『INCENSE STAND』、一体どんな工程でつくられているのだろうか。

「まず、高温で溶かしたトロトロのリサイクルガラスを分厚い鉄の型に流し込みます。その後、ガラスが固まっていく途中に手作業で鉄の棒をぎゅっと挿し込むことで、お香を挿せる口ができた状態のまま固まります」

ガラスを抜ける自然光が忘れた感覚を思い出させてくれる

カラーは、ブラウン管の再生ガラスを使用したブルーグレーと、蛍光灯の再生ガラスを使用したライトの2色。サイズは、それぞれ75φと90φの2サイズを展開している。

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ブルーグレーのものは水面を、ライトのものは陽だまりを連想させるような出立ちで、洗練された印象でありながらしっかりとした存在感もある。また、細部を見ていくとたしかに、その絶妙な色合いと、透けたり写ったりするガラスならではの質感に、吸い込まれるような不思議な魅力がある。

分厚いガラスの塊であることでひんやりとそっけなく感じるかとも思ったが、製造過程で鉄の棒が挿し込まれたときにできたであろう、窪みの周りの曲線や、つやつやした表面がなんともかわいくて、嫌な冷たさは感じない。

ウェブサイトには「稀に小さい気泡や白い粒がガラスに交じることがございますが、リサイクルガラスを溶かす上での副産物としてご理解下さい」と記載がある通り、個体差として現れる風合いの違いを楽しめるのもこのプロダクトの良さだと感じた。

「自然光が入って風が抜けていくような空間、たとえば窓際などにさらっと置いてもらえたら」と話す小倉さんの言葉に、素敵な絵が思い浮かぶ。季節や時間帯、置かれる場所ごとの光の差し方によって、表情が変わるのも『INCENSE STAND』の魅力だそうだ。

お香立てとしてのみならず、サイズ違いで並べてディスプレイしたり、縦にしてまた新しいシルエットを楽しんだり、少しの水を張って小さな植物を挿したり、といった使い方をしている人もいるという。

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「この『INCENSE STAND』は五感でいろいろなことを感じてもらえるプロダクトだと思うので、置くことで普段の生活で鈍りがちな感覚を取り戻すきっかけになったらいいなと思います」

実際に75φの『INCENSE STAND』を使ってお香を焚いてみた15分間、リラックスして穏やかな時間を体感しながら深呼吸ができた。90φの『INCENSE STAND』であれば、さらに長く30分程度燃焼するお香を使うことができる。

光に透かしてその素材の魅力を感じられるのも、手に取ったときにガラスならではの重みが感じられるのも、ひと息ついて自分自身の感じ方に向き合う時間を作るのにひと役買ってくれる。

リサイクル“だから”見える素材の表情

もともと小倉さんがリサイクル工場の見学に行ったのは、内装やインテリアの仕事のなかで小倉さん自身が見てきた廃棄物の多さに対する問題意識があったのだという。

「現場に行って、改めて捨てられてしまう素材に向き合いました。『こういう素材が廃棄になってしまうけれど活用してもらえないか』と相談を受けることもあります」

ものが溢れる現代で、リサイクル素材を使っていながら、それだけが理由ではなく、ものとしての魅力を感じて手に取りたくなるこうしたプロダクトがあるのはうれしい。

wa/terでは他にも、リサイクルウールを使用したサウナハットやブランケット、これまで廃棄されてきたアクリルを使用したフラワーベース、間伐材や端材を使用したブロックやオブジェクトなど、リサイクル・リユースの素材によるさまざまなプロダクトがラインナップされている。

手作業でつくられている商品は大量生産ではなく小ロットで、無理に広げず、自社のオンラインショップの他にはブランドのコンセプトを共有できるショップに卸しているという。

wa/ter

デザイン事務所DRAWERSが2020年7月に立ち上げたプロダクトブランド。「人や環境と共に循環していく」ことをテーマに掲げ、時代の中で必要のなくなった素材にも新たな価値を与え、長く愛されるものを生み出している。プロダクト開発のほか、貸別荘の運営なども行う。

WEB:https://water-sup.com/
Instagram: @water_products_design

Text:日比 楽那
Photo:wa/ter 提供
Edit:白鳥 菜都


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ライター・編集者・写真家
日比楽那

2000年生まれ。ライター・編集者・写真家。14歳から役者として活動開始。その後、10代後半から執筆活動を始める。現在は、主にウェブメディアでインタビューやレポートといった記事の企画や制作を担当。ゴールデン街でも働いています。
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