英国生まれ、インド育ちのグローバルブランド
多くのライダーをトリコにする古くて新しいロイヤルエンフィールドの魅力
「ロイヤルエンフィールド」というバイクブランドを知っているのは、結構なバイク好きかもしれません。1901年に英国で生まれ、1955年からはインドでも生産を開始。1970年代にイギリス本社が倒産して以降も、インドでは生産が続いたというのはマニアの間では知られている話です。

ただ、ロイヤルエンフィールドが、今グローバルでも勢いのあるバイクブランドであることを知っている人は少ないかもしれません。昨年の全世界での販売台数は85万台。生産拠点の充実も進めていて、今期は100万台を睨む規模になっています。
特にアジア太平洋圏での躍進はめざましく、韓国では中排気量帯の販売台数では首位。タイでは2位、オーストラリアでは3位となっているとか。

ヒマラヤを走るなら「ロイヤルエンフィールド」
アジア圏で支持を集めている点について、同社のアジア太平洋事業責任者のアヌージ·ドゥア氏は次のように語ります。「1つはクラシカルなデザイン、2つめはライダーのコミュニティを重視していること、3つめはシンプルな構造でカスタムがしやすいことでしょう」。確かに、近年のバイクは電子制御が充実していて、カスタマイズがしにくい面がありますが、ロイヤルエンフィールドの車両は電子制御が最小限で、カスタムを許容しやすい作りになっています。
ロイヤルエンフィールドでは、ライダーの集まるライドイベントにも力を入れていますが、なかでも有名なのは、ヒマラヤの山脈を走破する「Himalayan Odyssey(ヒマラヤンオデッセイ)」や「Moto Himalaya」というアドベンチャーツーリング。
同社には、そのものズバリ「Himalayan(ヒマラヤ)」というアドベンチャーモデルがありますが、現地では「ヒマラヤを走るならロイヤルエンフィールドでないと」と言われるほど、走破性と耐久性の高さが評価されています。

Z世代ライダーに支持される「Hunter 350」を国内導入
同社のラインナップの中で、特に若いライダーから支持を集めているのが「Scram 411」と「Hunter 350」だとドゥア氏は語ります。この2モデルが導入されて、一気に若いライダーの率が増加したとか。どちらもシンプルな車体構成と、豊富なカラーバリエーションがラインナップされているのが特徴です。

その1車種である「Hunter 350」の日本国内での販売が開始されました。このマシンは349ccの空冷単気筒エンジンを搭載。エンジンは先行する「Classic 350」や「Mteor 350」にも搭載されているものですが、普通自動二輪免許で乗れる排気量のため、国内では人気の高いモデルです。

近年、国内ではホンダの「GB350」が販売台数を伸ばすなど、空冷単気筒マシンが人気ですが、シンプルな構造でバイクらしい造形が実現しやすいことと、独特の鼓動感のあるエンジンフィーリングによるもの。実は「GB350」も、インド市場でロイヤルエンフィールドの350ccマシンに対抗するために企画されたマシンという背景もあります。
「Hunter 350」に用意されているカラーバリエーションは合計6色。輸入車でこれだけバリエーションの選択肢が充実しているのは珍しく、好みやファッション、スタイルに合わせたセレクトが可能です。
バイクのプリミティブな楽しさを味わえる
日本導入に合わせて開催された試乗会で、実際に「Hunter 350」に乗ることができました。実車を目の当たりにすると、クラシックさを前面に出した「Classic 350」とは異なり、レトロな雰囲気はあるもののシンプルで”バイクらしい”造形。余計な装飾はないものの、丸目ライトとティアドロップ形状が美しいタンク、空冷フィンの刻まれ直立したシリンダーなど、バイクの基本ともいえるデザインに好感が持てます。

特に印象的だったのが、逆光のようなシーンで空冷フィンの向こう側から日光が差し込んでくるような場面。最近のバイクは、インジェクションをはじめさまざまな電子制御部品が詰め込まれている関係で、隙間のないような造形になっていることが少なくありませんが、このマシンはシンプルで適度に余白がある仕上がりです。
またがってみると、シート高が790mmと低めで車体がスリムなこともあって足つき性は良好。着座した位置から自然に腕を伸ばした位置にハンドルグリップがあり、ステップ位置も前過ぎず後ろ過ぎない絶妙な配置。タンクも膝の収まりが良いデザインで、車体との一体感が感じられます。

そして、エンジンを掛けると、歯切れの良い排気音が耳に届きます。かなり元気の良い音で、シリンダーの中で混合気が爆発している鼓動も体に伝わってきて、それだけでワクワクさせられます。クラッチをつないで走り出すと、その爆発が地面を蹴って車体を進めてくれるようで、数10m走っただけで思わず「楽しい!」という言葉が口から漏れてしまいました。

最高出力は20HP、最大トルクは27Nmと決して高い数値ではありませんが、実際に走らせてみると数字以上にパワフルに感じます。前述のエンジンが爆発している一発一発が確実に車体を加速させてくれる感覚が、寄与しているのでしょうか。プリミティブなエンジン付きの乗り物の楽しさが味わえます。

ホイール径は17インチと現代的なものなので、ハンドリングも小回りが利いて楽しい。街中を中心とした試乗コースでしたが、交差点を曲がるだけでもバイクを操る楽しさが感じられます。エンジンの気持ち良さと相まって、いろんなところに出かけたくなる感じ。一瞬、試乗会であることを忘れて郊外の峠道まで足を伸ばしたくなってしまいました。
ロイヤルエンフィールドが掲げるコンセプトは「Pure Motorcycling」。バイクに乗ることの純粋な楽しさを味わってほしいという思いが込められたものですが、その標語の通りの気持ち良さを味わうことができました。それでいて、バイクの側から乗り方や楽しみ方、ライド時の服装を決められることがなく、良い意味で余白がある感じ。カスタムも含めて、オーナーなりの乗り方や楽しみ方ができる点が魅力でしょう。