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Dyson V12 Detect Slimのすごい技術<後編>

毛絡み防止スクリューツールがメンテナンスフリーな理由

author: 滝田 勝紀date: 2021/05/26

Dyson V12 Detect Slimの魅力は、微細なホコリなどを分析、可視化するだけではない。実際に床面に接してゴミやホコリを取り除くノズルは、もうひとつの主役。用途に合わせていくつものツールが付属しており、うまく使い分けると掃除の効率は劇的に向上するからである。その最新ノズルが、今回Dyson V12 Detect Slimに付属する「毛絡み防止スクリューツール」だ。

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前編はLaser Slim Fluffyクリーナーヘッドの秘密とは?

1993年にダイソンの初代機「DC01」が発売された時、付属のノズルは2種類しか存在しなかったと記憶している。床を掃除するための樹脂製ノズルと、壁と家具の間を掃除するための「隙間ノズル」である。しかし、その後約30年間で、ダイソンは15種類以上ものツールを生み出してきた。それは、「課題をみつけ、それを解決する」というダイソンの企業理念の一端を体現し続けてきた結果である。ブラシの届かないところ――ホコリや塵が残ってしまう場所は、ダイソンの掃除機にとって“課題”であり、それを“解決”するのが彼らの役割だからだ。

ただ、彼らにとって解決する課題はそれだけではない。付属ノズルに残ってしまう毛なども大きな問題として捉えた。ロングヘアーの方やペットユーザーにとって、部屋中に落ちている長い髪の毛やペットの抜け毛を吸うことは日課であり、同時に憂鬱な時である。なぜならそれらの毛は時にブラシの回転を止め、掃除が終わった後もそこに残り続けるため、ハサミなどでカットする必要があるからだ。毛が絡まないブラシが搭載されたツールというのは、まさに彼ら彼女らにとって待望の救世主。今回はその「毛絡み防止スクリューツール」の開発経緯や円錐型のブラシバーを採用した理由について、ダイソンのデザインエンジニア アーロン・テオ氏に、英国マルムズべリーの研究デザイン開発拠点取材経験もあるBeyondMagazineプロデューサーの滝田勝紀がさらに迫った。

ダイソン デザインエンジニア アーロン テオ氏

日本人の約31%が不満に思っているブラシの毛絡みを解決する進化版ヘッド

――ダイソンは付属品としてさまざまなヘッドを開発していますが、今回、新たに登場した「毛絡み防止スクリューツール」は、どのような目的をもった付属品ですか。

テオ 「毛絡み防止スクリューツール」は、既存のミニモーターヘッドの進化版という位置づけで開発しました。ダイソンでは、これまでもさまざまな毛絡み防止に挑んできました。そういう中で、髪の毛やペットの毛がヘッドのブラシに絡んでしまう課題を解決する技術として行き着いたのが、この独特な円錐型をした「毛絡み防止スクリューツール」です。

毛絡み防止スクリューツール

――ユーザーにとっても、ヘッドに毛が絡むとメンテナンスが面倒ですよね。

テオ 日本で掃除機に対する不満について調査した際には、約31%もの人がブラシに毛が絡むことへの不満を持つということがわかりました。そういったユーザーの声に耳を傾けた結果生まれたのが本製品です。

――「毛絡み防止スクリューツール」の開発においては、どのようなプロセスをふんだのでしょうか。

テオ ダイソンの研究開発の主な工程にNew Product Innovation(通称 NPI)と New Product Development(NPD)が存在しています。通常NPIは様々なアイディアを提案し、それが実際に具現化可能なタイミングで、実際の製品化に向けたNPDへとプロジェクトが移行するのです。

「毛絡み防止スクリューツール」の場合は、このような特殊な形のブラシバーが実際に製造できるのか、捕集力を最大化するのには何が必要かなど、製品化にあたってのさまざまな課題が検討されました。「毛絡み防止ツール」の担当メンバーだけでなく、ほかのプロジェクトのエンジニアなども加わって、あらゆる観点から検討が進められ、チェックを重ねます。

アルキメデススクリューの応用でまとわりつく毛を吸い上げる

――「毛絡み防止スクリューツール」最大の特徴は、この円錐型のヘッドバーとらせん状のブラシです。その仕組みを詳しく教えていただけますか。

円錐形のスクリューにらせん状のブラシがついている

テオ 毛絡みを防止するために我々が考えたのは、「アルキメデススクリュー」を応用することでした。アルキメデススクリューとは、古代エジプトで水位の低いナイル川の水を吸い上げるのにも使われていた方法です。傾斜した筒の中で、らせん状のスクリューを回転させることで、連続的に水を汲み上げることができるようになります。特に粘り気のある液体を組み上げるには有効な方法です。

「毛絡み防止スクリューツール」では、アルキメデススクリューに見立てたらせん状のブラシバーが円錐形のヘッドの中で回転。液体の代わりに髪の毛のような“まとわりつくゴミ”が、ヘッドの上部側へと移動します。そこから吸い上げられたゴミは、ダイソン独自のパワフルなDyson Hyperdymium™モーターが生み出す強力な吸引力で、クリアビンまで集められます。さらに特許技術のサイクロンで微細なホコリまで捕集。この仕組みよって、ヘッドブラシに毛が絡むことのない、快適な掃除が実現します。

――開発時はトライ&エラーを相当数繰り返したと想像しています。素材選びや形状の設計なども含め、どんな点で苦労しましたか。

テオ 課題はたくさんありましたね。まず、重要なポイントとなったのが、ブラシの毛の角度でした。数多くのテストを繰り返し、毛はブラシバーに対して水平でまっすぐつけるより、6°だけ角度を傾けるのがベストだということがわかりました。

ブラシの毛の素材選びも大変でした。 毛が絡みにくい素材にはゴムなどがありますが、これらはカーペットとの相性がよくありません。逆に硬い素材のブラシになるほど、毛が絡みやすくなってしまいます。ブラシの毛が掃除する面に対して、しっかり曲がりながら回転することでゴミを集めるので、耐久性も必要です。

あらゆる素材をテストして、最終的に採用したのがナイロン6でした。ほかにも、毛の本数や直径、長さなど、細かくバリエーションを試しながら最適化して、この形となりました。

設計時に描かれたスケッチ。円錐形のブラシバーの形状やブラシをつける角度、さらに空気の流れをいかにロスすることなく、直接髪の毛などを吸い込むことなどをイメージしていた

――開発途中では、イメージ通りに毛が吸い込まれないという壁もあったのではないでしょうか。

テオ もちろん、そういうことは何度もありました(笑)。毛絡みを防止することと、高い捕集力を維持するということは、相反する機能です。ブラシバーを硬くして捕集力を高めると、絡んだ毛が外れにくくなるんです。この2つの要素を同時に可能にするのが、円錐型のデザインでした。

重さ7.55kg、長さ3879km分もの髪の毛で
毛絡み防止をチェック

――ブラシツールが非対称な形状で、空気の風路が複雑になっている設計は難易度が高かったのではないでしょうか。

テオ その通りです。空気はヘッド内で複数回曲がるため、流入効率は悪くなります。そういう複雑な動きをする中でも、吸引力を落とさないことが課題でした。ブラシバーが回転する際に生まれる空気の流れを増幅させることで、その後空気が曲がることにより発生するロスを相殺。強い圧力で空気の流れをキープして、しっかりゴミを吸い取り続けられる設計となっています。

犬や猫がソファで過ごした後は抜け毛などがついていることも。「毛絡み防止スクリューツール」があれば簡単にきれいになる

――上から見ると、アクリルカバー越しに、ブラシが回転する様子がよく見えるデザインになっていますね。

テオ 「毛絡み防止スクリューツール」はダイソンが開発した、まったく新しい技術です。この最先端の技術を、ユーザーにもぜひ目で確認してもらいたく、透明のアクリルカバーを採用して、中身が見えるようにしました。アクリルカバーの素材は、クリアビンと同じポリカーボネートを使用しています。

――「毛絡み防止スクリューツール」は、どのような場所を掃除するのに向いているのでしょうか。

テオ 硬いフローリングよりも、表面がやわらかい場所の掃除に向いています。カーペットのような素材の場所であれば、どこでもきれいに掃除できます。毛足の長い絨毯、寝具、ソファ、クルマのシートなどの掃除には最適ですね。カーペットに絡んだペットの毛もしっかり吸い取り、ヘッドブラシにも毛が絡みません。寝具などの内部から発生するホコリはもちろん、梅雨時などに繁殖しやすいダニなども吸い取ります。

――実際のテストでは、髪の毛などを使い、本当に毛が絡まないかを何度もチェックしたと思いますが、どのくらいの分量を使ったのでしょうか?

テオ テストでは、直毛やカール、縮れ毛などの違う種類の髪の毛や、長さもいろいろ取り揃えて行いました。テストに使用した髪の毛は、全部で7.55kg、長さにすると累計3879kmにもなります。髪の毛の長さは、14インチ(35.56センチ)をベンチマークとして、この長さの髪の毛が毛絡みせずにクリアビンまでしっかり吸引できることを目指しました。

汚れた場所で自動的に吸引力もアップ
長時間稼働に合わせたスイッチボタンも進化

一方、Dyson V12 Detect Slimは当然のことながら、コア技術であるモーターやサイクロン、さらにはスイッチなどもそれぞれ進化している。例えばモーターはDysonHyperdymium™モーターになり、スイッチもほとんどのモデルはトリガーだったが、今回のモデルは存在感ある赤いスイッチが搭載されている。ここからはあらためて前編でLaser Slim Fluffy™クリーナーヘッドやピエゾセンサーなどについて語ってくれた、ダイソンのデザインエンジニア アサフ ウー・ウェイアン氏に、本体のコア技術や気になる進化ポイントなどについて教えてもらおう。

ダイソン デザインマネージャー アサフ ウー・ウェイアン氏

――ダイソンといえばモーターがコア技術です。それはV11など、これまでモーター名が製品名にそのまま採用されていることにも表れていました。よりその独自性を強調するため、昨年からモーターの名称を”Dyson Hyperdymium™モーター”と変更したそうですね。今回の製品に搭載されているDyson Hyperdymium™モーターは何がポイントになりますか?

ウェイアン たしかに、これまでモーター名を製品名に使うことで、モーター水準の高さを示してきました。ただ、昨年から使用しているモーターの名称そのものを変更しています。今後発売する新製品のモーターは、すべてDyson Hyperdymium™モーターとなります。Hyperは「スピード」を意味し、dymiumはモーター内部で使用される小型軽量かつ強力な素材「ネオジム磁石」に由来します。

今回のモーターの改良点としては、モーターのディフューザーを追加して空気の循環をさらに強力にしたこと。また、モーターバケットを入れ替えて、フィルターを伸ばすことでより強い吸引力を実現しています。

より強力になったモーター「Dyson Hyperdymium™モーター」

――ダイソンのクリーナーには筒状のサイクロンが傘のようについていて、強力な吸引力を持続することがポイントです。サイクロンの数は機種によって違いますが、Dyson V12 Detect Slimのサイクロンの数はどのようになっていますか。

ウェイアン Dyson V12 Detect Slimには11個のサイクロンがついています。サイクロンの数はモデルごとに、それぞれ最大限の吸引力というパフォーマンスを発揮できるように設計しています。Dyson V12 Detect Slimでも11個のサイクロンで、最大10万Gの遠心力が強力な吸引力を維持できるようになっています。

クリアビンの気流、シュラウド(メッシュフィルター)、サイクロン、プレモーターフィルター、ポストモーターフィルターの5段階でゴミを捕集する設計で、0.3ミクロンもの微細な粒子を99.99%閉じ込め、部屋の空気よりもきれいな空気を排出する。*

――Dyson V12 Detect Slimでは普段よりもゴミやホコリ、微粒子が多いと、Dyson Hyperdymium™モーターが自動で回転数を高め、吸引力をアップするオートモードという機能があります。この機能は、今回初めて搭載したものだと思いますが。

ウェイアン ピエゾセンサーでは振動の衝撃の大きさと、それがどれだけの時間続いたかを判別することができます。それを電子信号に変換して伝えることで、その場所がどの程度汚れているのかがわかります。これにより、汚れている場所だと判別すれば、自動的により強い吸引力にアップして掃除できるという仕組みになっています。

――これまでのダイソンのクリーナーの多くは、手元のトリガーがスイッチでした。Dyson V12 Detect Slimでは、ボタン式のスイッチが採用されてますね。

ウェイアン これは「スイッチのオン・オフをボタンにしてほしい」というユーザーの声に応えたものです。Dyson V12 Detect Slimは稼働時間が40分以上あり、長時間使い続けることができるので、より使いやすいボタン式スイッチを採用しました。

ボタンのデザインは、まるで緊急時のストップボタンのような赤くて大きなサイズになっているのも、わかりやすいと思います。これはジェームズ・ダイソン自らがデザインしたもので、必要なときに簡単にポンと押してオン・オフが使いやすくなるように考えたものです。

大きくなった電源ボタンは咄嗟に止めたい時などにも便利。トリガーボタンと比較して、掃除機を動かし続けても指が疲れない

清潔基準の高い日本市場の期待に応える

――Dyson V12 Detect Slimはすでに米国や中国で先行発売されています。発売後、どのような反応がありましたか。

ウェイアン 発売して間もないので、まだ正確なフィードバックが私たちの元には届いていませんが、実際に購入した使用感を多くのユーザーがSNSなど発信しています。そういった声を聞いていると、「レーザーで見えないゴミや粒子が見える」という点を大きく評価してくれているようです。あらゆるゴミを見える化して吸い取り、きれいになったことが液晶表示されることが、満足度の高さに繋がっていると思います。

着脱式のバッテリーで単体でも充電可能。Laser Slim Fluffy™クリーナーヘッド、毛絡み防止スクリューツール以外に、ダイレクトドライブクリーナーヘッド、隙間ノズル、コンビネーションノズル、フトンツール、延長ホースと、Total Cleanは付属品ツールも充実、さまざな交換式のツールであらゆる場所の掃除がしやすい

――日本はダイソン製品の価値を高く評価している代表的な国であり、ファンが非常に多い国です。新たに発売されるDyson V12 Detect Slimの新機能は、よりセンセーショナルに大きな期待を持って受け止められそうですね。

ウェイアン はい。日本人は「清潔である」ことに非常に敏感な国民ですから、「レーザーで見えない粒子まで見える化する」ということを最も歓迎してくれる市場だと考えています。Laser Slim Fluffyとピエゾセンサーという新技術で、微細なホコリを見える化して、ダイソンのコアテクノロジーであるパワフルなモーターとサイクロンで、0.3ミクロンもの微細な粒子を99.99%捕えるということはもちろん、60分稼働可能なエコモーター、より長時間使えるバッテリー、毛絡みなどの解消、集めたゴミを清潔に手軽に捨てられるクリアビンなど、さまざまな技術が日本ユーザーの期待に応えるものだと断言します。

*ASTM F1977-04に基づくSGS-IBR(米国)および自社による試験結果(2020年に実施)。試験は0.3μm以上の粒子を使用し、強モードで実施。


Dyson V12 Detect Slim Total Clean
価格/オープン価格

  • 本体製品サイズ(※1)/W121×D342×H234mm
  • スティック時の製品サイズ(※2)/W250×D1095×H234mm(※3)、W250×D1130×H234mm(※4)
  • 本体質量(※1)/1.50kg
  • ステック時の本体質量(※2)/2.20kg(※3)、2.40kg(※4)
  • 形式/SV20 ABL
  • JANコード/5025 155 057117
  • (※1)バッテリー含む
  • (※2)バッテリー、パイプ、標準クリーナーヘッド含む
  • (※3)Loser Slim FluffyTMクリーナーヘッド装着時
  • (※4)ダイレクトドライブクリーナヘッド装着時

Text:工藤千秋 Photo:岡村昌宏(CROSSOVER)

前編はLaser Slim Fluffyクリーナーヘッドの秘密とは?


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Beyondプロデューサー・家電スペシャリスト
滝田 勝紀

Beyond Magazineのプロデューサー。電子雑誌「デジモノステーション」の元編集長。All Aboutの家電ガイドとして活動中。楽天のショッピングSNS「ROOM」の家電公式インフルエンサーを務め、フォロワー数は40万人(2021年3月現在)以上を抱える。ベルリンで毎年開催される世界最大の家電見本市「IFA」ほか、海外取材の経験も豊富。インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とともに、オフィス兼「家電とインテリアのショールーム」をオープン。コンサルティングクリエイターとしても活躍中。
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