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Interview

Beyond SDGs vol.06:渋谷から“地球のタイムリミット”をカウントダウン

学生社会活動家が起こす、気候変動へのアクション

author: 大畑慎治date: 2022/08/31

本連載第6回目で登場いただくのは、「a(n)action(アナクション)」のメンバーとして、渋谷に「Climate Clock(クライメイトクロック)」を設置するプロジェクトを行う黒部睦(くろべ・むつみ)さん。学生社会活動家として、世界の気候変動危機にアクションする黒部さんが「SDGs 2.0」たる所以とは。大畑さんがナビゲートしていきます。

気候変動危機において、現在の二酸化炭素排出のペースでは、あと約6年後の2029年7月には取り返しのつかない未来が迫っているといわれています。

2021年の夏には北米で気温49.6度を記録し、ヨセミテ国立公園内にて大規模な山火事も発生しました。ベルギー・ドイツでは、大洪水によって約1,300人が行方不明に。ギリシャ、トルコでも大規模な森林火災が発生し、気候変動がもたらすものは未来にあるのではなく、すでに自然災害というかたちで私たちの目の前に迫ってきているのです。

そういった気候変動に対する行動の欠如に抗議するため、スウェーデンの環境活動家(当時・高校生)、グレタ・トゥーンベリさんがはじめた「Friday For Future(未来のための金曜日)」(以下、FFF/※1 )。黒部さんは、グレタさんの考えに共感し、気候変動についてより具体的な取り組みを行わなければと立ち上がった若者のひとり。アクションには、大も小もなければ、年齢も経験も関係ない。黒部さんの紡ぐ言葉には、一歩を踏み出してみたくなるヒントが多く詰まっていました。

学校のロッカーからはじめた、気候変動へのアクション

大畑:黒部さんは、現在大学3年生。気候変動に対するアクションは、いつからはじめたんですか? きっかけはどんなところにあったのでしょう。

黒部:高校1年生の冬に学校の先輩に誘われて、SDGsのワークショップに参加したのがはじまりでした。

その当時はSDGsがなにかということも知らなかったのですが、この考え方がもっと広まれば、みんながもっと幸せに暮らせるのではと感じて。総合学習の授業で、SDGsについて論文を書いたところ、その論文を見た学校の先生が、SDGsの海外研修に声を掛けてくれたんです。

大畑:へえ! どんな研修内容だったんですか。

黒部:少年少女国連大使として、スイスのジュネーブとスウェーデンのマルメ市に約1週間滞在しました。スイスでは、国際機関(国連欧州本部、WHO、ILO、UNHCR)で職員の話を聞く機会があったり、スウェーデンでは街の取り組みや、一般家庭における日本との違いを学んできたり。

大畑:日本よりも、すでに気候変動に対する取り組みが進んでいる国に行ってきたんですね。

黒部:スウェーデンの市役所に職員の方の話を聞きに行ったのですが、ちょうどその日が金曜日だったんです。同世代の子たちが市役所の前に座り込んで、気候変動対策を求めるプラカードを掲げていて。ニュースでは見たことがあったけど、「本当にやっているんだ」と驚きました。

同世代の子はもちろん、小学生の子も学校を休んでまで訴えている姿を見て、自分がなにもアクションをしなかったら、この子たちのやっていることがすごく無駄になってしまうと感じました。

大畑:それが、黒部さんのアクションのはじまりになった。

黒部:はい。それまでは、日本ってすごい進んでいる国だと思っていたんです。でもスウェーデンに行ったら、社会の仕組み自体が違っていて。なにかを削減しようとか、個人のアクションを促すよりも、社会のシステムごと変えようとしている感じでした。

それを間近に見て、日本ってまだまだやれることがたくさんあるじゃんと。帰国してからは気候変動対策や、みんなにできるアクションを発信するようになりました。

大畑:なるほど。具体的にはどんなことからはじめたんですか?

黒部:スウェーデンで座り込みをしていた子たちが持っていたようなプラカードを、学校の自分のロッカーに貼るということです。「貼りたい子は、一緒にやろう」とか、「貼らせてくれる人教えて」と呼びかけたところ、最終的に校内で60人くらいの子たちが賛同してくれて。それが毎週金曜日の恒例になりました。

大畑:黒部さんがひとりで、FFFをスタートさせたということですね。

黒部:そうなんです。その取り組みを、FFF TOKYOのメンバーがSNSで見つけてくれて「一緒に活動しない?」 と、声を掛けてもらいました。そこから現在の活動につながっていきます。

渋谷からカルチャーを変えていく

大畑:FFFの活動をこれまで続けながら、a(n)actionのメンバーとして、「Climate Clock(クライメートクロック)/※2」の設置プロジェクトも推進しています。Climate Clockは、どのような経緯でプロジェクト化したんですか。

黒部:Climate Clockは、2020年にニューヨークでスタートしたプロジェクトです。

産業革命以前と比べて、地球の平均気温上昇を「1.5度以下」に抑えるというのが世界的な目標なんですが、現在のCO2排出を続け、炭素予算(※3)を使いきるまでにはあと約6年しか残されていないんです。Climate Clockは、そのタイムリミットを示しています。

これを、日本にも設置したいねとFFFのメンバーのひとりが提案したのがプロジェクトのはじまりです。

大畑:ちなみに、「1.5度以下」というのは、どう定められた数字なんですか?

黒部:国連のIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)によると、世界における気温上昇を1.5度以下に抑えなくてはいけないといわれています。1.5度を超えてしまった時点で、人間がどう頑張っても後戻りができない状況になってしまうんです。

一例を挙げると、気温が1.5度上がってしまうことで永久凍土が溶けてきてしまい、再び凍らせることができないので、そこから負の連鎖が始まってしまうんです。

大畑:歯止めが効かなくなってしまうということですね。今回のプロジェクトでは、そのClimate Clockを渋谷に100基置くという目標を掲げて、クラウドファンディングで1,300万円を集めたことでかなり話題になりましたよね。あえて渋谷限定にした理由ってあるんですか?

黒部:それは、a(n)actionの理念にかかっているところが大きいです。a(n)actionでは最終的なゴールとして、気候変動や環境に対するアクションを当たり前のカルチャーにしていきたいと考えているんです。

アクションすることが格好よくて、「楽しそう!」というカルチャーをつくりたい。そう考えたときに、渋谷っていろんな若者のカルチャーが生まれた場所だから、そこから発信していきたいと思ったんです。

大畑:なるほど。でも、ニューヨークのClimate Clockはユニオンスクエアビルの大きな時計がひとつだけでした。今回は小さい時計を100基設置するのが目標なんですよね。

黒部:「1日渋谷で遊んでいたら何度も見かける時計」をテーマにしています。同じ街で何度も目につくことで、見た人が能動的にアクションできるようにしたいんです。

大畑:時計自体に、アクションできる仕組みがあるということなんですか?

黒部:そうなんです。カウントダウンの数字が出ている横に、QRコードを貼り付けています。それをスマートフォンで読み取ると、そのカウントダウンがなにを示しているかがわかるようになっていて。

さらに、「日本政府にもっと気候変動対策してほしいか?」という問いかけに対する、共感ボタンも設置されています。そのボタンが1万回押されるごとに、環境省に対して「これだけ共感者がいます」と、私たちが通知しにいくという仕組みになっているんです。

大畑:個人の小さなアクションを集めて、大きなアクションに変えられるという仕組みなんですね。さて、2021年12月からクラウドファンディングをスタートして、わずか2ヶ月で達成。それから約半年が経ちましたが、いま実際に稼働している時計はいくつあるんですか?

黒部:いま、動いているのは4基あります。そのうち2基は渋谷に、1基は全国の中学校と高校を回っていて、残りの1基は神奈川の企業にあります。渋谷にあるものでいうと、ひとつはハチ公前の観光案内所、もうひとつは子育て支援施設の「coしぶや」に置かせてもらっています。

学生団体であることのジレンマ

大畑:クラウドファンディングで宣言した、「Climate Clockを渋谷に100基置く」という目標において、現時点での課題やハードルはありますか。

黒部:「どこにでも置いていいよ」とハードルを下げてしまうと、SDGsウォッシュ(※4)に使われてしまうかもしれないですよね。たとえば、石炭火力に融資をしているような会社がClimate Clockを設置して、それを自社のSDGsに関する取り組みと発表されてしまったら、それは私たちがしたかったことではなくなってしまうんです。

だから、「置きたい」と申し出てくださるところがあっても、本来の目的に沿う場所なのかどうかを、先方とのやりとりのなかで見極めていく必要があります。そういったところで単純に人手不足だったり、学生中心の団体である難しさを感じています。

大畑:いま、渋谷をベースにプロジェクトを進めていますが、本当に目標を達成しようと思ったら、実際にはもっと広めていかなければいけないじゃないですか。そのためのステップは考えていますか。あと約6年しかないと考えると、時間がないなかで加速度的にやらなきゃいけないところもあると思うのですが。

黒部:いまの段階では、Climate Clockをもっとたくさん設置していくことが目標達成への近道だと思っています。ただ、現時点で実際に設置した数はふたつだけ。100基という数をしっかり実現していくというのが、早急に取り組まなくてはいけないことだと考えていますね。

小さなアクションを発信し続けること

大畑:Climate Clockのプロジェクトは、かなり大規模なものですが、一方で一人ひとりの小さなアクションこそが気候変動危機への対策としては大きなものになると思います。個人ができるアクションって、どんなことがありますか?

黒部:必ずしもSNSじゃなくてもいいので、「発信」をしてほしいと思っています。普段の生活のなかで、「ペットボトルを買いませんでした」とか「お店でストローをもらいませんでした」とか、そういう小さなアクションが減らせるCO2の量は少ないんです。

でも、それをあえて発信することで、「それなら私にもできるかも」と思ってくれる人が増えるはず。だから、小さな一つひとつのアクションに取り組む姿を発信することからはじめてほしいなと思います。

大畑:目標に向かって大きな流れを生むには、にわかファンをたくさんつくる方がいいと思うんですよね。そういう人をどうつくるかというと、きっかけを準備してあげるということだと思っていて。そういう意味で、黒部さんの日常にはアクションのヒントがたくさん落ちていると思います。ほかにもなにかあれば教えてください。

黒部:ソーラータイプのモバイルバッテリーや、コンビニスイーツを食べるとき用のスプーンを持ち歩いています。あとは、今日の服もそうですが、古着を着ています。

話題のきっかけになるように、あまり周りにいないような格好をあえてしているんです。それで友達に反応されたら、「これはお母さんの服なんだ」と。そこから、なぜ新品ではなく古着を着ているかということを話して、気候変動危機にも興味を持ってもらえるようにしています。

大畑:周りの人や家族は、黒部さんの活動を通じてなにか変化はありましたか?

黒部:両親は私たちの活動を知って、「太陽光発電を取り入れたい」とか「電気自動車に乗り換えようかな」と言っています。近くにいる人たちの変化はとても感じています。

大畑:一人ひとりが発信していくことで、家族や近い人たちから変わっていく。その発信を見て、気になった人たちが動きはじめたら、世の中はもっと良くなりますよね。

黒部さんの場合は、たまたま環境領域だったわけですが、黒部さんのようになにかアクションをしたいと思っているけど一歩を踏み出せない人に対して、前に進んでいくポイントとか、背中を押すようなメッセージがあればお願いします。

黒部:そうですね。「これをしなきゃ」と思わずに、自分だからできることを探すことですかね。自分が無理なく楽しくやれることを、小さなアクションから考えて行動に繋げていくこと。

個人のアクションレベルでは、6年後に迫ったタイムリミットまで、もはや間に合わないといわれてきています。「これだけやったから十分でしょ」ということはひとつもないので、一人ひとりの意識や行動が世界を変えていくと思います。

撮影:吉岡教雄 執筆:山下あい

※1 Friday For Future(未来のための金曜日):2018年、当時高校生のグレタ・トゥーンベリさんの学校ストライキをきっかけにはじまった、気候危機への対策を求める運動。現在では世界中に活動の輪が広がっている。日本では2019年2月、環境NPOでインターンしていた学生が中心となりFriday For Future Japanが始動。

※2 Climate Clock(クライメイトクロック):IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が発表した、気候変動の悪化の歯止めが効かなくなってしまう「臨界点」とされる2029年7月までのカウントダウンを表示する時計。2020年9月にニューヨークに最初の時計が設置され、グラスゴー、ソウルなどにおいて大規模なClimate Clockが設置されている。

※3 炭素予算:カーボンバジェット。人間活動を起源とする気候変動によって、地球の温暖化で気温上昇をある一定のレベルに抑えるために想定される、温室効果ガスの累積排出量(過去の排出量と将来の排出量の合計)の上限。

※4 SDGsウォッシュ:国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないビジネスのことを揶揄する言葉。多くの企業がSDGsの取り組みを進めるなか、「見せかけのSDGsに対する取り組み」を批判する声があがっている。

大畑慎治のSDGs2.0 POINT of VIEW

「直感」と「実感」によるサステナブルな未来の可能性


今回の黒部さんのお話から感じたポイントは「直感」と「実感」です。

少年少女国連大使の研修、FFF(Friday For Futire)の活動、a(n)actionでのClimate Clockのクラウドファンディング、渋谷からカルチャーをつくっていく挑戦など、黒部さん自身が「直感」を行動に移して「実感」を積み上げてきたことで、これまでのサステナブルアクションの挑戦が生まれてきたんだと思います。

初めは小さな興味であっても、その「直感」を大切にして一つ一つ行動に移していく。そしてそこでの経験や出会いが自分自身のリアルな「実感」となって、自分自身の活動がさらに力強く進んでいくし、周りの人たちへの巻き込みも加速していく。

まさにSDGs2.0時代のサステナブルアクションのお手本のようなお話でしたが、もっと多くの人がこの「直感」と「実感」への意識を大切に一歩を踏み出していければ、もっと多くのサステナブルアクションが世の中で生まれていく可能性がある。そんなヒントとなるお話でした。

黒部さん、貴重なお話をどうもありがとうございました。

a(n)action┃アナクション
黒部睦┃くろべ・むつみ


2001年生まれ、東京都出身。国立音楽大学3年。2021年11月から、日本の気候変動対策に新しい変化をもたらすために結成した、気候変動アクティビスト集団「a(n)action」として活動開始。排出をすることが許されたCO2(炭素予算)を使い切ってしまうまでのタイムリミットを表示する「Climate Clock(クライメート クロック)」の設置を、クラウドファウンディングで呼びかけ、1300万円以上の支援金を調達。現在、渋谷ハチ公前の観光案内所「SHIBU HACHI BOX」等に「Climate Clock」が設置されている。2019年度少年少女国連大使として活動するなかで環境問題の深刻さを知る。現在は「Fridays For Future Tokyo」のオーガナイザーとして活動中。


a(n)action


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ソーシャルマエストロ
大畑慎治

ソーシャルグッドの社会実装プロデューサー。メーカーのイントレプレナー、ブランドコンサル、新規事業コンサル、ソーシャルクリエイティブグループで一貫して、新たな事業や市場を生み出す仕事に従事。2016年以降は、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、エシカルなどの領域の企業変革、事業開発、ブランド開発、プロジェクトプロデュースなどを手がける。現在、O ltd. CEO、Makaira Art&Design 代表、THE SOCIAL GOOD ACADEIA(ザ・ソーシャルグッドアカデミア) 代表、IDEAS FOR GOOD 外部顧問、感覚過敏研究所 外部顧問、おてつたび ゆる顧問、MAD SDGs プロデューサー、早稲田大学ビジネススクール(MBA)ソーシャルイノベーション講師、ここちくんプロデューサー などを兼務。
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