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自分の居場所を公開し続けるってあり?

スマホネイティブのプライバシー意識は大人たちとどう違うのか

author: 鈴木 朋子date: 2022/08/16

自分の居場所を24時間共有し続けるアプリ「Zenly(ゼンリー)」が、女子高生の流行ランキングに入ったのは2019年のこと。現在地を複数の人に見せ続けるという斬新な機能が、大人たちに衝撃を与えた。「他人に居場所を知られたくない」「お互いに監視したいのか」「ストーカー被害の危険性はないのか」などの意見が上がるなか、若者はZenlyを愛し、今や定番アプリとなっている。

位置情報共有アプリ「Zenly」は友人の居場所がわかる

Zenlyの機能をおさらいしておく。Zenlyは「フレンド」と現在位置、滞在時間、移動速度を共有する。「学校にいる」「バイト先にいる」とフレンドの居場所がわかるほか、「電車に乗っている」「2時間ショッピングセンターにいる」「3日間家から出ていない」というように、行動も推測できる。

自分の居場所が誰にでも知られるわけではなく、承認したフレンドのみに公開される。知られたくないときには自分の居場所を隠せるが、フレンドに居場所を隠していることはわかる。さらにスマホの電池残量も表示されるため、「バッテリー切れちゃって居場所が共有できなかった」という言い訳はできない。また、スマホを触っていないことをセンサーで検知し、寝ていると判断されると「現在睡眠中」と表示される。「寝ちゃっててメッセージの返信ができなかった」と取り繕ってもバレてしまうのだ。

睡眠中と推測されるユーザーには「現在睡眠中」と表示される

なぜ、位置情報を共有するZenlyが若者の心を捉えたのか。それは、若者らしい「タイパ主義」が影響している。

タイパ主義とは、タイムパフォーマンスを重視する考えだ。例えば、「暇だから誰かと通話したい」と思った時、Zenlyを眺めれば、自宅にいる人がわかる。その中で暇そうな人に声を掛ければいい。LINEで「今、通話できる?」と尋ねても、相手はバイト中かもしれず、返信を待って数時間経つ可能性がある。しかし自宅にいる人を狙えば、無駄な時間を過ごす可能性が低くなる。

また、お互いに傷つく必要がなくなるといった「気遣い」もある。「今、通話できる?」とメッセージを送るケースでは、相手から断られる可能性がある。相手も断らなければならないため、不要な気遣いをさせるかもしれない。例えば、自分をのぞいて友人たちが集まっているとき、その場にLINEを送りたくはない。そこで、お互いになるべく嫌な思いをしないように、あらかじめZenlyで確認する。Zenlyなら、フレンド同士が集まっていることが画面上に表示されるので、リスクを回避できる。

ネットで繋がり続ける安心感

Zenlyでは、ずっと誰かと繋がっている安心感も得られる。特にコロナ禍では、お互いに家で過ごしている様子を見て、自分だけがステイホームを守っているわけじゃないと励まされることも多かった。

LINE通話も、繋がり続けるために使われる。お互いに用件があるわけではなく、とりあえず通話を繋ぎっぱなしにしている。

通話アプリ「パラレル」は、そうした若者のニーズの高まりにより、コロナ禍で注目を集めた。パラレルはユーザーの7割が24歳以下の若者だ(2021年6月時点)。誰かと話したいときに場を開くと、その時に暇な人達が集まってきてグループ通話をする。抜けたい人は抜けていき、また誰かが来る。まるでオンライン上の部室やたまり場のようなサービスだ。一緒にカラオケやゲームを楽しむこともできる。

通話アプリ「パラレル」はネットにたまり場を作る

パラレルを使って「オンライン同棲」状態になっているカップルは、通話を繋いだまま家族と食事をしたり、お風呂に入ったりする。時々話しかけて、そのまま眠る。相手が恋人なら理解できる面もあるが、友人同士で繋がり続ける人たちもいる。

つまり若者は自分のプライバシーに無頓着なのでは、と考える人もいるだろう。しかし、決してそうとは言えない。むしろプライバシーに関するリテラシーは高いと筆者は考えている。

若者は情報を渡す相手を選定する

若者がSNSを使う時、複数アカウントを運用する。友人や先輩と繋がるメインアカウント以外に、親しい友人とだけ繋がるサブアカウント、趣味の仲間で繋がる趣味アカウントなど、平均して3つ以上のアカウントを所有している。メインアカウントでは無難な発言を、サブアカウントでは本音を、趣味アカウントでは推しへの思いを存分に投稿し、仲間と共有する。

複数のアカウントを持つ理由は、自分が出す情報を相手によって切り分けているからだ。もちろん、アカウントを分けておくと人の投稿を読む際に情報が整理されるといった理由もあるが、基本的には相手に合わせて発信する情報をコントロールしたい気持ちの表れだ。

例えば、メインアカウントで自分の好きなアーティストの情報を発信し続けていたら、義理で繋がった人は「またか」と不快に感じるかもしれない。かといって、何も投稿しないと友人との交流ができなくなってしまう。そこで、アカウントを切り分け、自分と他人が快適に過ごせる状況を作っているのだ。

さらに、フォロワーを削除することで、受け手を選んでいる。ずっと以前に繋がったがすでに交流がない人は、フォロワーから削除する機能を使って縁を切る。ブロックするほど嫌ではないが、いつまでも自分の情報を見ていられるのは困るのだ。

フォロワーを削除して受け手を選ぶ(画像はInstagram)

Zenlyやパラレルも、自分が繋がる相手を選んでいる。選んだ相手にプライバシーを明らかにすることによって、効率的なコミュニケーションが可能となっている。誰にでもプライバシーを明らかにしているわけではない。

自撮り投稿にも変化が表れている。SNSに投稿する自撮りは、プリントシール機や美顔加工アプリでの撮影が多く、本人よりも盛れていることが重要だった。しかし今は、顔を映さずに後ろ姿を映してもらう「他撮り」や、モノやスタンプで顔を隠したりすることが多い。自己主張を控えめにしたい思いもあるが、自分のすべてをネットに上げることに不安を抱いている若者が増えているのだ。

ここで大人の場合に立ち返ってみると、居場所を明らかにすることや、通話を繋ぎっぱなしにすることはやはり抵抗を感じるだろう。アカウントの使い分けは正直手間がかかる。顔写真の投稿は、我が子を含めて特に顔を加工することもなく行っている人が多い。

すべて悪いこととは言えないが、スマホネイティブである若者の使い方とは異なっている。忙しくて細かな作業に手が回らない人は多いと思うが、若者の情報コントロール手段を真似ることで、効率的で円滑な交流が可能になるかもしれない。


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ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー
鈴木 朋子

SNSが専門でtoB、toCともに取材し、最新トレンドを常に追っている。身近なITに関する解説記事も執筆しており、初心者がつまずきやすいポイントをやさしく解説することに定評がある。スマホ安全アドバイザーとして、安全なIT活用をサポートする記事執筆や講演も行う。近著は「親が知らない子どものスマホ」(日経BP)、「親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)。著書は監修を含め、20冊を越える。
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