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『VAIO Z | SIGNATURE EDITION』自腹買いレビュー

45万円越えのVAIO Zを買う意味がここにある!

author: 山下 達也date: 2021/06/09

国内PCメーカーの雄、VAIOがその持てる技術力を惜しげもなく盛り込んだフラッグシップモデル『VAIO Z』がこの春登場。スペックもさることながら、その強気な価格設定も話題になっています。そこでここでは、本誌ライターが自腹購入したプレミアムエディション『VAIO Z |SIGNATURE EDITION』のレビューをお届け。総額46万円強のノートPCに、それだけの価値はあったのでしょうか?

10万円以下でPCが買える時代に46万円のモバイルノートPCを買った!!

皆さんは自宅のノートPCにどのくらいの予算をかけて、どのくらいの期間で買い換えていますか? デジタルグッズライターとしての私のおすすめは「3~4年に1度、20万円くらいの製品に買い換える」なのですが、現実的には多くの方が10万円以下のマシンを求め、しかもそれを5年以上使っているようです。それどころか最近は自宅にPCがないという人も増えました。

そんな中、この2月に私が購入したVAIOの最新モバイルノートPC『VAIO』のプレミアムエディション『VAIO Z | SIGNATURE EDITION』は、最低構成でも36万6080円(VAIO STORE価格)というかなりの高額モデル(ベースモデル『VAIO Z』は27万2580円~)。しかも欲しいスペックにカスタマイズした結果、なんと46万8050円に。いくらこういう仕事をしているとは言え、これまでノートPCにここまでの金額を投資したことはありませんでした。

そこで今回の記事では、実際のこのマシンを1か月以上使った実感を踏まえ、一般的な相場の倍以上するノートPCにどんな「価値」があるのかを解説させていただきたいと思います。

強くて軽い。そしてなにより美しい。『VAIO Z | SIGNATURE EDITION』のフルカーボンボディ

そもそもなぜ『VAIO Z | SIGNATURE EDITION』は高いのか? それは『VAIO Z』に使われている外装が従来のPCとは大きく異なっているから。多くのモバイルノートPCはマグネシウムやアルミニウムを外装素材に採用しているのですが、『VAIO Z』はここにカーボンファイバー(炭素繊維)を用いました。

カーボンファイバーは高級自転車のボディなどに使われていることから分かるよう、軽さと強さを兼ね備えた夢の素材。反面、加工が難しく、価格も高いことから、従来モバイルノートPCでは天板部分だけなどごく一部での採用に留まっていました。

それを『VAIO Z』では製品のほぼ全体に採用。この「フルカーボンボディ」化ににどんな苦労があったのかは公式サイトの開発ストーリーなどを読んでいただきたいのですが、ともかくそれによって本体の剛性を損なうことなくボディの大幅な軽量化を実現することができました(フルカーボンボディ化=軽量化によって何を実現するのかがこの製品のポイントなのですが、それについては後述します)。

そして『VAIO Z』の特別モデル『VAIO Z | SIGNATURE EDITION』では、ボディ表面に塗布する塗料を透明のものにすることで、カーボンファイバーの繊維の質感をユーザーが目視できるように。

安っぽいアウトドアガジェットにありがちな、ギラギラテカテカした「カーボン!!」という感じではなく、近くまで寄って凝視しないとわからないところが奥ゆかしくて気に入っています。カーボンファイバーが縦方向、横方向に何層にも重ね合わされているのが分かりますか?

立体的な加工が難しいと言われているカーボンをまるで金属素材のように大きく曲げていることも『VAIO Z』の技術的見どころのひとつ。分かる人には、これがどれだけハードルの高い加工か分かるはず。少なくとも量産品ではあり得ない形状です。いろいろとコモディティ化してしまっているノートPCですが、このフルカーボンボディは最先端技術を持ち歩くよろこびを与えてくれます。

なお、素材の特性上、カーボンファイバーには繊維のわずかな乱れが生まれ、それぞれのマシンに個体差を与えます。たとえば私のマシンではキーボード左上とトラックパッド上部にちょっとした乱れが見てとれます。そうした乱れを革製品のように愛でられるのも『VAIO Z | SIGNATURE EDITION』の楽しいところ。気になる場合は表面がしっかり塗装されるスタンダードな『VAIO Z』がおすすめです。

カーボン素材表面に塗布されている塗料も気が利いています。これがしっとりと手に吸い付くような触感を生み出しており、長時間利用を快適にしてくれます。ペタペタしないし、なにより手垢や脂の跡が残りにくいのがいいですね。

ふだんの何気ない作業にこそハイパフォーマンスが活きる

フルカーボンボディ化でケース部分が劇的に軽量化した『VAIO Z』ですが、製品そのものの重量は900g台と実はそこまで軽いわけではありません(他社製品では600g台というものもあります)。では、削った重量はどこに行ったのか?

『VAIO Z』では、それを「快適さ」の実現に使いました。中でも特に力を入れているのが、ハイパフォーマンスCPUを搭載するための熱対策強化。外観は一般的なモバイルノートPC然としている『VAIO Z』ですが、その内部には徹底した放熱機構が組み込まれており、巨大なヒートパイプや2基の空冷ファンによって内部の熱を効率的に外部に排出できるようにしています。これはもうほとんどゲーミングノートPC級。実際、一般的なモバイルノートPCには搭載不可能なハイパワーCPUを搭載しており、かなりヘビーな作業をさせてもスイスイ動きます。

内部の放熱機構

ちなみに『VAIO Z』に搭載されているものと同じCPUを搭載する他社PCは軒並み画面サイズ15型、重量2kg前後クラス。それを快適にモバイルできるサイズにできたのはひとえにフルカーボンボディの恩恵と言えるでしょう。しかも、プレミアムエディションを謳う『VAIO Z | SIGNATURE EDITION』では、なんと最大5.00GHz駆動という、この2月に追加発表された“Special Edition”なCPUを搭載しています。

正直言えば、そのハイパフォーマンスを常に必要とする人はほとんどいないでしょう。しかし、だからといって、それが全くいらない(過剰な)高性能かというとそんなことはありません。余裕のあるパフォーマンスは、普段使いにおいて実はきわめて有効。複数作業時のレスポンスや安定性に大きな違いが生まれるほか、本体の発熱や空冷ファンのノイズなど、快適さの部分でも大きな差を感じられるはずです。

たとえば私の用途ではビデオ会議中に重めのファイルを共有しながら作業してもファンが回らなくなりました(厳密には回っているのですが、ほとんど聞こえないレベルに抑えられています)。昨今のテレワーク流行でいろいろな「ビデオ会議あるある」が生まれていますが、『VAIO Z』なら、自分のマシンの空冷ファンが爆音で回り始めて顰蹙を買うという「あるある」がなくなります。あれ、恥ずかしいですし、会話の邪魔になりますから、できることなら避けたいですよね。

その他、呆れるほど速いSSD(VAIO曰く、スタンダードなSSDの3倍以上高速)なども普段使いの快適さ向上に寄与。Wi-Fi 6と5Gによる高速インターネット接続が可能なほか、外部インターフェイスも最先端のUSB4およびThunderbolt 4に対応しているので、長く快適・快速に使い続けられるはずです。

一度慣れたらもう離れられない細かな工夫の積み重ねが生み出す快適さ

そして個人的に『VAIO Z』最大の美点と考えているのが、至れり尽くせりな使い勝手の良さ。使い勝手、使用感ってスペックシートには記載されないところなので軽視されがちなのですが、『VAIO Z』はそのあたりもしっかりと妥協なく追求。超高額モデルならではの価値を提供してくれています。

まず最初にアピールしておきたいのが、顔認証・指紋認証センサーと人感センサーを組み合わせることで強固なセキュリティを使いやすくしたこと。昨今のマシンではノータッチで認証できる顔認証と、マスクをしていてもOKな指紋認証に両対応した製品が増えていますが(便利!)、『VAIO Z』はそこに人の存在を検知する人感センサーを組み込むことで、さらに使い勝手を向上させているのです。

具体的にはスタンバイ状態の『VAIO Z』の前にユーザーが座ると人感センサーがそれを検知して自動的に顔認証処理をスタートさせることで、本当の意味でのノータッチログオン(VAIOでは『着席オートログオン』と呼称)や、『VAIO Z』の前から離れると、間を置かず自動的にPCをロックする(『離席オートロック』)を実現。人感センサーが人を検知している間は画面をスリープさせない『在席ノーロック』もとても気に入っています。

また、ライター的にはキーボードの品質の高さも特筆しておきたいところ。VAIOのキーボードはもとより高品質だったのですが、『VAIO Z』ではその構造を1から見直すことで、さらなる高みに到達しました。キートップ中央をわずかに窪ませることで指への吸い付きを良くしたり、打鍵時に発生する音を小さく、耳障りでないようにするなど、業界トップクラスのタイピングフィールを実現しています。強固なフルカーボンボディの恩恵でキートップを押し込んだ時の本体のたわみなどもほとんど感じられません。

これ、実際に店頭などでタイプしてもらえれば言っていることが通じると思いますので、ぜひお試しください。もし静かな場所で試せるのなら、指がキートップに触れた瞬間のわずかな振動が生み出す音と、指を離した瞬間の残響音を確認してみてください。「カシャッ」というタイプ音の「カ」と「ッ」の部分が特に違って感じられるはずです。

なお、VAIOではかねてより日本語配列キーボードと英語配列キーボードを自由に選択することができましたが(オンラインでの購入時限定)、今回は日本語キーボードのかな刻印の有無も選べるように(店頭モデルではかな文字なしが標準)。『VAIO Z | SIGNATURE EDITION』では、黒いキートップに黒文字で刻印を施した「隠し刻印」キーボードも選ぶことができます。英語配列キーボードを選べるメーカーは他にもありますが、合計5種から選べるメーカーというのは他にないんじゃないでしょうか。

なお、私は今回、英語配列キーボードを選択。並行して使っているiMacと近い感覚で使えるよう、キーアサインをいじって使っています。新しいキーの配置をテープで示した結果、ちょっと見た目にDIY感が出てしまったのが悩みどころ。せめてつや消しブラックのテプラが出てくれるともう少し良い感じになるんですけどね……。

また、トラックパッドも従来モデルと比べてグッと大きくなりました。なぜか国産ノートPCってトラックパッドが小さく、触感もザラザラしているものが多かったのですが、『VAIO Z』ではグローバルで主流の大きく滑らかな触り心地のものに刷新されました。その上で、物理2ボタンは堅持。これ、個人的には和洋折衷の良い落とし所だと思っています。

細かなところではビデオ通話に使うフロントカメラに物理シャッターを追加。使わない時に物理的にカメラを無効化できるようになっており、うっかりカメラをオンにしてしまったという「ビデオ会議あるある」を防ぐことができます。また、マイクについても同様に強制的にオフするショートカット(Fn+F2)を新設。外部マイクも含めてまとめてオン・オフできるようになっています。

さらに別売アクセサリーとして専用の『のぞき見防止フィルター』も用意。本体にあらかじめ用意されているスリットに差し込んで固定できるので、みっともないシールを貼る必要はありません。着脱も容易なので、自宅では外して使うこともできます。一部メーカーから出ているディスプレイ内蔵型ののぞき見防止フィルター機能はオフ時の画質にまだ問題があるため、現時点での対策としてはこれが正解なのではないでしょうか(でも、将来的にはワンボタンで切り換えられるようになってほしいですね)。

後悔のない買い物だったと断言できる『VAIO Z』購入良い仕事をしたいのなら道具にしっかり投資すべき

ここまでで紹介したこと以外にも、180度フルオープンするディスプレイや、新開発の小型ACアダプター(USB Type-C接続)など、多くの点で価値ある製品に仕上げられている『VAIO Z』。約1か月使って感じた不満点は、4Kディスプレイ搭載時のバッテリー駆動時間がやや心許ない(液晶輝度80%&モバイルデータ通信常時接続状態で実測約5~6時間)ことくらいでしょうか。ただ、いざと言う時は市販のモバイルバッテリーから充電することができるので、今のところ使えなくなったということはありません。また、フルHDモデルでしたらカタログスペックで約34時間という長時間駆動が可能です(4Kディスプレイ搭載モデルのカタログスペックは約17時間)。

VAIOがソニーから独立し、VAIO株式会社になってからまもなく7年。独立後はビジネスモバイルに舵を切っていたこともあり、地に足の付いた堅実な製品が多いというイメージでしたが、『VAIO Z』は久々に往年のVAIOファンが興味を惹くような先進性あふれる製品に仕上がっています。もう少し分かりやすいガジェット感があると、まさに「俺たちのVAIO」という感じなんですが(笑)、それはさすがに求めすぎというものでしょう。

冒頭で最近は自宅にPCがないという人が増えたと書きましたが、新型コロナ禍の影響で、その状況が変わりつつあります。そうした中、繰り返しになりますが、私は皆さんにできるだけ良いPCを買ってほしいと考えています。たしかに『VAIO Z』は高額な商品ですが、この先もテレワークが続くのであれば、1日8時間(あるいはそれ以上)、ずっと触るものになるわけですから少しでも快適に作業できるものを選ぶべきです。40万超えのノートPCはデジタルグッズライターを名乗る私にとっても高価な買い物でしたが、実際に購入し、1か月以上使ってみて、『VAIO Z』には間違いなくその価値があると感じました。

……正直、46万円は人に勧めにくいところではあるのですが、『VAIO Z』はベースモデルでも充分に快適。30万円なら検討の余地、ありませんか? これからやってくるニューノーマルな働き方の中で、より快適に、より良い仕事をするための投資としてぜひ、検討してみてください。分かる人には分かる、はず。

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デジタルグッズライター
山下 達也

ジアスワークス有限会社所属。「デジタル」が世の中に浸透し始めた90年代後半から、さまざまな情報誌・オンラインメディアで、PC、カメラ、スマートフォン、AV機器など、幅広いデジタル機器を紹介してきた。近年はサブカルチャーやテクノロジーなどの分野でも活動中。合理性、機能性だけでは説明できない“トキメキ”のあるガジェットをこよなく愛する。
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