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2022年に海外旅行はできるのか?

海外渡航の難しさ「ヨーロッパ編」

author: 村田 尚之date: 2022/03/08

なかなか出口の見えない新型コロナウイルス感染症のパンデミック……。果たして今年は海外に行けるのだろうか? また、海外渡航にかかる手間や帰国後は何が待っているのだろう。

前回は海外渡航から帰国した際のルールと、2021年夏に体験した出国・帰国の流れをご報告した。後半はヨーロッパ渡航の実体験と自主待機についてレポートしたい。

前回記事はこちら

 ※新型コロナウイルス感染症に伴う渡航制限の情報等は、記事執筆時(2022年1月20日時点の情報です)。2022年3月時点とは異なる可能性がありますので、公的機関などの情報をご参照ください。なお、3月1日現在では入国後の待機期間は大幅に緩和されており、条件を満たす方は待機なしとなっています。

詳細はこちら

2回目の海外渡航は意外にあっさり

2021年2度目の海外は10月の中旬、これも仕事でフランスに1週間というスケジュールだった。前回は準備段階での手間が際立ったが、今回は拍子抜けするほど容易だった。

筆者が渡航した時点で、出発にあたり必要だったのは「航空券」と「パスポート」、フランスで提出する「宣言書」のみだった※1。とはいえ、現地で行動するには「衛生パス」、つまる「EUワクチンパスポート」が必要になる。

※1(2022年2月20(土)時点)
日本からの渡航者で、ワクチン未接種者またはワクチン接種未完了者は、陰性証明書が必要となるが、フランス到着後の検査や隔離はなし。
なお証明書は、出発の72時間以内に受けたPCR検査または出発の48時間以内に受けた抗原検査の陰性証明書(仏文もしくは英文)が求められる。もしくは医師が作成した「コロナ完治証明書」(陽性から11日から6か月以内を経過したことを証明するもの)も有効。
12歳未満の未成年には以上の条件は免除される。〈在日フランス大使館 公式サイト参照〉

内務省 公式サイト 申請はwebから可能で、「日本のワクチン接種証明書」「航空券」「パスポート」といった必要書類の画像をアップロードする。発行までの期間は数日と言われており、実際には4日で発行されたが、2種間近く掛ったという人もいるようだ。

渡航ルートは羽田からドイツを経由してフランスに入ったため、EU入域はドイツのフランクフルトだ。入国審査にあたっての質問は結構入念で、どんな仕事をするのか、宿泊するホテルの予約日数まで聞かれたが、これはケース・バイ・ケースだろう。また、ここで日本の「ワクチン接種証明書」の確認が行われたが、「衛生パス」の有無はチェックされなかった。

こうして無事にEU域内便に乗り継ぎ、フランス南部、トゥールーズという街に降り立った。すでにEU圏内に入っているので、特に入国の審査などはなく、そのまま税関を通過して、あっけなくフランス国内に入ることができた。

ここからはカフェでコーヒーを飲むにも、商店で水を買うにも衛生パスが必要になる。到着時点で衛生パスは「審査中」のままで進展がない。だが、空港内にはツーリスト向けのコロナ検査施設があり、ここで抗原検査を受け、陰性であれば「72時間の期限付き衛生パス」を取得できる。また街中にもこうした検査施設が各所にあり、簡単に検査を受けることができるが、費用はまちまちで、空港では39.1ユーロ、街中では22ユーロだった。結果はその場で紙の証明書が発行されるが、追ってメールでもQRコードが届く。

なので、費用さえ気にならず、数日程度の滞在であれば72時間パスで乗り切ることも可能だ。では、日本で申請した衛生パスは? というと、こちらも翌日には申請が通り、専用サイトからダウンロードが可能になった。

さて、現地での仕事も終わり、帰国となるがやはりネックになったのは帰国用の「PCR検査の陰性証明書」だ。今回は日本でフランス語のフォーマット用紙を印刷して持参。検査時にこの用紙に記載してもらったが、正直にいえばなかなか骨が折れる。パリならまだしも、フランス第6の街とはいえ地方都市の彼らにしてみれば、滅多に来ないアジアからの珍客。まず、日本では決まった書面に、検査を行った医師や医療機関のサインやスタンプが必要であることから説明せねばならない。

訝しがられつつも、先方の同意を得てフォーマットへの記載とサインをもらったが、当然、間違いだって起こる……。ちなみにフランスで数度の検査を受けたが、抗原検査もPCR検査も鼻咽頭ぬぐい液、つまり“鼻グリグリ方式”だった。

帰国はフランス国内線でパリ=シャルル・ド・ゴール空港へ、そこから羽田への便に搭乗した。シャルル・ド・ゴール空港ではチェックイン時に必要書類の確認があるのだが、なんとここで帰国用の「PCR検査の陰性証明書」に不備が見つかった。なんと、日付に誤りがあったのだ。

航空会社の職員が気付き、その場で訂正の手続きを行ってくれたので問題はなかったが、注意すべき点はある。陰性証明書に本人が記載できるのは氏名やパスポート番号などで、検査結果に関する部分の記入はできない。だが、航空会社職員による修正は認められているとのことで、手続きはすぐに終わった。罰則こそ明示されていないが、帰国時に要らぬトラブルを避けるためにも自筆での記載や変更は避けるべきだろう。

ともあれ無事、帰国便に搭乗して約11時間、羽田空港に到着。到着したのは午後3時頃。そこから帰国のために誓約書や各種書類の確認・提出という流れは成田と同じだ。またも空港内を右に左にと移動するが、感染者の入国や帰国を防ぐためには、この『水際対策』一連の手間も含めての海外渡航だと認識すべきだ、と思うべきだろう。とはいえ、帰国者と海外からの入国者の混在と動線の悪さについては、改善の余地はあると思うのだが……。

この工程におけるハイライトといえばコロナの検査だが、思わぬ発見があった。検査は唾液による抗原検査なのだが、乾いた機内からの空港内移動で、採取ブースに貼ってあるレモンの写真を見ても、ヨダレのひとつも出てこない。そこで係員にその旨を告げると鼻咽頭ぬぐい液の検査も行っているとのこと。鼻グリグリもツラいが、乾ききった雑巾を絞るように唾液を絞り出すのも難しいのだ。

検査結果は思いのほか早く1時間弱で発行され、到着ロビーに出たのは午後5時半頃。今回は2時間半ほどで帰国を果たすことができた。もちろん、自宅までは自家用車で帰宅した。

帰国者で話題の“ホテルガチャ”

前回も触れたが、現在はアメリカをはじめ、多くの国や地域からの帰国者は検疫所が確保した宿泊施設で、帰国翌日から数日間の待機※2、つまり隔離の対象となっている。

宿泊先は空港付近だけでなく、1時間ほどのバス移動を伴う場合もあるという。さらに、ホテルも小部屋のビジネスホテルからシティホテルまでさまざま。基本的に宿泊先は選べず、食事の内容にも差があるようで、帰国者からは“ホテルガチャ”と呼ばれているようだ。

とはいえ、この宿泊施設待機の宿泊費、食費などは税金で賄われている。また、帰宅するまでが海外旅行、海外旅行は自己責任の理論に基づくならば、この現状は受け入れるべき措置だろう。冷たい食事に文句のひとつでも…、という気持ちは分かるがここはグッと飲み込もう。

※2(2022年1月28日(金)時点)
日本入国前に滞在した国・地域に応じて、検疫所が確保する宿泊施設で待機し、検査を受ける。
検疫所へ「誓約書」の提出が必要。7日間(指定国・地域は14日間)の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存・提示、接触確認アプリの導入等について誓約することになる。〈厚生労働省 公式サイト参照〉

「自主待機」は気の持ちようで何とでもなる

現在はオミクロン株の出現により、出入国に関する水際対策が再度強化されているが、2021年8月から10月にかけての出入国事情はこれまで記したとおりだ。そして、帰国者全員が直面するハードルと言えば帰国後10 日間の「自主待機」だ。

渡航先により指定隔離施設で3日、6日、10日間の待機が課された場合は、残りの期間を自宅や自己手配のホテルで待機。対象外の場合は10日間を自宅にて待機。この間、PCR検査を行い、陰性であれば隔離後は自宅などで待機となる。※3

2021年に渡航した2か国は、帰国時点では隔離の対象外だったので自宅待機となったが、この間まったく外出できないといことではない。健康維持のために近所の散歩、食品など必要な日用品の買い物などは認められているので、人の少ない早朝や夜間などに、散歩を兼ねて近所のスーパーマーケットには出掛けた。普段から締め切り期間はカンヅメになるのも珍しくないので、精神的なツラさは感じなかったが、体力面はどうにもならないので、自宅マンションは階段を使うようにした。

また、この間、入国者保険確認センターから『MySOS』アプリによる居所確認が1日数回、AIによるビデオ通話が1日1回、さらに健康状態のアンケートもある。海外に出た者の務めとして協力したが、2度目の帰国時はビデオ通話に出られないと再度、複数回にわたり連絡が来るように進化していた。

※3 ※2参照

これを見事にすべて“ぶっちぎる”のは余程の精神力の持ち主だと思うが、実際にすべて無視するツワモノもいる。一定以上、無視を決め込むと罰則規定があり、氏名や渡航先が公表される。すべてにおいて政府に賛成とは言わないが、一定の抑止力はあるだろう。また、同時に反旗を翻したくなる気持ちも分かるが、個人的にはゴルフの練習などはもってのほか、と思う。

とはいえ、会社勤めであれば10日間も自宅にいるというのは、リモートワークが普及しても、現実的にはかなり難しいと思う。また、現在は停止中だが10月の帰国時には所定の検査を10日目に受ければ、待機期間が3日間短縮される措置も取られていた。オミクロン株は潜伏期間が短いことから、現在は帰国者すべてが10日間に短縮されている。叩かれてばかりの政府だが、状況に合せた修正も行っている。

もちろん、14日が10日に短縮されても、出勤が伴う職種であれば状況は大して変わらないだろう。この辺りは新型コロナウイルス感染症の発生から時間も経過しているし、政府にはシステムの見直しや効率化を望みたい。

では、いつになったら以前のように、気軽に海外旅行に行けるのかといえば、正直まったく見当がつかない。長期的には徐々にハードルが下がるだろうが、ワクチンパスポートなど自分の状況を示すシステムは残るのではないだろうか。先にも述べたが、日本の感染状況が落ち着いても渡航先の事情もあるし、その逆も然りだ。ただ、一進一退はあるけれど、各国とも感染状況が落ち着けば出入国のハードルは下がるし、そのためには最終的には個々の協力が不可欠だろう。

ちなみに、対応が遅いと批判されていた日本版の新型コロナウイルスのワクチン接種を証明する『新型コロナワクチン接種証明書アプリ』も2021年暮れから運用が始まった。海外渡航用としてはアメリカやカナダ、イギリスなどで入国時の防疫措置免除や緩和の対象となるが、レストランなどの立ち入りについては保証されていない。ゆえに、渡航時には行き先の情報収集は不可欠だ。

いまさらワクチン接種の可否やPCR検査の有効性を論じるつもりはないが、恐らくやってくるであろう第7波、第8波がオミクロン株より穏やかである保証もない。まずは個人ができる範囲で、COVID-19の感染がこれ以上“爆発的”に拡大しないよう心がけることが、なにより海外渡航再開への近道だろう。

日本、そして海外もまだまだ厳しい制限が課される海外渡航。各国政府の対応も絶え間なく変わるので、最後に情報収集用に出入国関連の情報をまとめたリンク集を記しておく。ちなみに、日本は省庁ごとに情報が分散しているのだが、個人的に役立ったのは国内大手エアラインの渡航情報だ。


国内大手航空会社の海外渡航情報ページ

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フリーランスライター・フォトグラファー
村田 尚之

1970年、東京生まれ。学生時代から雑誌の編集に携わる。自動車専門誌やメーカー広報誌などを手掛ける編集プロダクションを経て、2002年にフリーランスライター・フォトグラファーとして独立。クルマや旅客機、鉄道など乗り物関連の専門誌やニュースサイトを中心に執筆・撮影。「旅客機・エアライン検定公式テキスト」(徳間書店刊)、「ANAの本。」(誠文堂新光社刊)など、書籍制作にも参加。
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