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2022年に海外旅行はできるのか?

実感、海外渡航の難しさ2021年「カタール」編

author: 村田 尚之date: 2022/02/10

「そろそろどこかに旅したい……。出来れば海外、アメリカ西海岸の日差しが恋しいし、ベルリンのキーンと冷たい冬の空気も懐かしい」という方も多いのでは。COVID-19のパンデミックですっかり海外が縁遠くなった昨今だが、仕事で渡航する方もいるし、可能性はまったくゼロではない。

だけど、出入国や渡航先での手間を考えると、それに見合う意義や価値はあるのだろうか、というのも本音だ。そもそも、出入国ってどれだけ面倒なの? 航空ライターとして実際に垣間見えた各国の状況をレポートする。

刻一刻と変化する帰国時の水際対策

オミクロン株が猛威を振るう1月20日時点(※執筆時)、誰もが気になる帰国時(日本入国時)のルール、つまりたびたび耳にする「水際対策」だが……。

1:現地出国前72時間以内にCOVID-19に関する検査による「陰性」証明書が必要。

2:自宅または宿泊施設で7日間の自主待機

 オミクロン株の感染拡大地域の場合は入国から3日間、6日間、検疫所が確保した宿泊施設での待機(ホテル隔離)となる。ちなみに、対象国と地域は別途記載する。

3:入国者健康居所確認アプリ「MySOS」による、位置情報と健康状態の報告。

の3つが主で、この他に数多くの書類の提出、接触確認アプリ「COCOA」の利用なども求められる。

また、出国時はというと一層複雑で、渡航先が求める検査や書類を揃えないと、基本的には飛行機にも搭乗できないハズだ。

「ハズ」なんて無責任な、と思うかもしれないが、出入国の条件は日々変わっており、すべてを把握するのは正直に言ってかなり難しい。ただ、昨年は2回、仕事で海外渡航する機会を得たので、まずは実体験を含めて説明しよう。

役場巡りと医者巡りの海外渡航1回目

2021年、1回目の海外渡航は8月末のこと。仕事で6日間、中東の「カタール」に出張した。この頃、日本は感染のピークで新規陽性者数は1日あたり2万5000人を超えていた。一方、カタールは厳しい入国制限を課していて、1日あたりの新規陽性者数は200人前後。カタールの人口は280万人と、日本の1/50なので単純に比較はできないが、ワクチン接種も進んでおり、割合としては日本の1/3程度に抑えられていた。

ワクチン接種の証明書

また、この頃のカタールでは国別の感染状況により「グリーン国」「イエロー国」「レッド国」に分けており、日本は「イエロー国」だった……、のだが、直線に感染状況が悪化したため「レッド国」入りしてしまった(現在はレベル分け、日本のランクとも見直されている)。ゆえに、渡航にあたっては厳しい制限があった。

渡航にあたりパスポートと航空券以外で必要となったのは「渡航ビザ」、「COVID-19陰性証明、「ワクチン接種証明書」、現地の健康アプリ「Ehterazへの登録」の4つ。この頃は商用渡航についても制限があり、招待先によるビザが必要だったが、これは受け入れ企業が行ってくれたので手間はかからなかった。

陰性証明書はいわゆるPCR検査の陰性証明で、カタール政府指定の病院で受けるが、渡航72時間以内の結果とのことで、スケジュール的にかなり厳しかった。ちなみにカタール政府指定の病院だが国内4ヶ所、費用は約4万5000円ほどだった。

ワクチン接種証明書はいわゆるワクチンパスポートだが、日本のフォーマットが認められておらず、QRコード付きでなければ「外務省とカタール大使館のスタンプが必要」とのこと。

そもそも外務省にスタンプ押してください、なんて可能なのか?と思いつつ関係各所に尋ねたところ、東京、神奈川、大阪など一部地域の公証役場では公証人の認証、法務局の公証人押印証明、そして外務省の公印確認が一括で受けられると判明。

さらに、カタール大使館による認証印が必要となり、都内の公証役場とカタール大使館を往復した。費用は公証役場で1万1500円、カタール大使館は3500円を要した。

最後はEhterazというカタールの感染症拡大予防アプリで、個々の感染状態が分かるというもの。コレがないと空港への出入りに加えて、一般的な店舗にも入れないので食事も買い物もできない。申請は日本から行えるが、コレがないと事実上、入国できない。申請には上に挙げた書類をwebからアップロードする必要があるが、PCR検査が出発2日前だったので、急いでアップロードしても許可が下りる肝を冷やした。

「ほんとに帰国できるのか?」よぎる不安

さらにEhterazをアクティベートするには現地SIM(電話番号)が必要となるので、空港到着までに手配する必要がある。現在はアプリもアップデートされ、現地SIMまたは国際SIMに対応とのことだが、8月末時点では空港内でSIMの販売はなかった。これは現地の人間に手配して貰って、空港で無事にアクティベートできた。

さて、この頃のカタールだがデパートやレストランではほぼ間違いなくEhterazのチェックがあり、公共の場ではほぼマスク着用が保たれていた。内心、日本よりルーズなのでは、と思っていただけに少々驚いたが、罰則規定も運用されていたようなので納得といえば納得だ。

こうしてようやく現地で移動も食事ももちろん仕事もできるようになったが、次は帰国用のPCR検査だ。この検査で陰性でないと日本への帰国どころか飛行機にも搭乗できない。これも出国前72時間という制限があるので、日本出国時と同じくスケジュールの管理はかなり重要だ。

現地では鼻咽頭ぬぐい液、いわゆる鼻グリグリ式の検査を受け、結果は陰性。無事、証明書を得たが、日本の帰国用フォーマットとは異なる様式だった。日本の用紙を示して、そちらへの記載を求めたが、カタールでは発行された様式以外はなく、検査結果は政府の証明であるから問題はない、との見解だったので、そのまま帰国することにした。もちろん、確認には少々の時間が必要だったが、ドーハ空港から無事に飛び立つことができた。

となると問題は日本の入国、いや帰国だ。少々前には日本のフォーマットを満たしておらず、出発地に送還されたというニュースも目にしていたので不安がないわけではない。

ドーハを発った飛行機は約10時間のフライトを経て、18時30分頃に成田空港に到着。10分ほどで降機が始まるが、ここからが長い旅の始まりだった。まずは1次受付だが、ターミナル到着フロアにパイプ椅子が並べられた待合所で1時間ほど待機となった。

ここからは厚生労働省に提出する誓約書、渡航先で受けたPCR検査の陰性証明書などの確認と提出、スマートフォンにインストールするアプリ、「MySOS」と「COCOA」の確認など、部屋を移動しながら作業が続く。

空港もこうした事態を想定した設計ではないので、驚くほどの移動距離と時間が掛かった。途中、係員に爆発する外国人と思しき人も見かけたが、その気持ちも分からないではない。

また、外国人対応を意識してか、各所に外国人スタッフがいるのだが、彼らが日本人の対応を、日本人が外国人をというチグハグな対応になっており、それが行程に時間がかかる原因になっているようにも感じた。

いっそのこと、すべての行程で日本人と外国人を分離しても良いのでは……、と思うし、そもそも帰国確認や入国審査は別レーンなのだから。この辺りは逐次変更されているので、もしかしたら今は変更されているかもしれない。

帰国後は自宅までの帰路も考えておくべき

さて、肝心なPCR検査の陰性証明書だが、カタールのフォーマットのまま受理された。担当者によると必要とされる項目の記載があることが第一で、国ごとにバラつきや体制が異なることも理解しているとのこと。ただ、現場での判断もあるようで、受理を保証しているワケではないのでご注意を。

前後して新型コロナウイルスの検査になるが、唾液を採取して別室で1時間弱の待機となった。結果は待合室のモニターに掲示されるので、陰性であれば証明の紙をもらって、帰国の手続きに進む。

蛇足だが、日本国籍を有する日本人の場合、帰国は当然の権利なので”入国審査”ではなく”帰国確認”というのが正しい。その後は預けた手荷物を受け取り、税関を通過して、ようやく到着ロビーに出ることができた。この時点で到着から3時間半が経過しており、時計は22時を指していた。

隔離などもなく、このまま帰宅となるが公共交通機関は使えないので、自家用車で帰宅する。通常、成田までは自家用車か鉄道で行くが、今回は帰宅のことを考えて自家用車で行ったが、関東圏以外ではこの帰宅のアシを確保するのも簡単ではないので、事前にハイヤーやレンタカー、もしくは待機期間をカバーできる宿泊施設の確保が不可欠になる。

さて、帰宅後は14日間(現在は7日間)の待機期間に入ったが、それはまた後日。

ちなみに、帰国時に必要となる最新の手続きや手順はこちらをご参照いただきたい。

水際強化措置に係る指定国・地域一覧(※2022年2月10日現在)

1:検疫所の宿泊施設での10日間待機措置の対象国・地域→0か国

2:検疫所の宿泊施設での6日間待機(退所後、入国後7日目まで自宅等待機)措置の対象国・地域 (25か国・地域)

アンゴラ、イタリア、英国、エスワティニ、オランダ、韓国、ケニア、コンゴ(民)、ザンビア、ジンバブエ、 スウェーデン、タンザニア、デンマーク、ドイツ、ナイジェリア、ナミビア、ノルウェー、フランス、 米国(イリノイ州、カリフォルニア州、テキサス州、ニューヨーク州、ハワイ州、フロリダ州、マサチューセッツ州)、 ボツワナ、ポルトガル、マラウイ、南アフリカ共和国、モザンビーク、レソト

 3:検疫所の宿泊施設での3日間待機(退所後、入国後7日目まで自宅等待機)措置の対象国・地域 (63か国・地域)

アイスランド、アイルランド、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、イスラエル、インド全土、ウズベキスタン、 エクアドル、エジプト、エストニア、オーストラリア全土、オーストリア、カザフスタン、カタール、ガーナ、 カナダ全土、カンボジア、キプロス、ギリシャ、キルギス、クロアチア、コロンビア、サウジアラビア、シエラレオネ、 ジョージア、スイス、スペイン、スリランカ、スロバキア、スロベニア、セネガル、タイ、チェコ、チュニジア、チリ、 トリニダード・トバゴ、トルコ、ドミニカ共和国、ネパール、パキスタン、パナマ、ハンガリー、バングラデシュ、 フィジー、フィリピン、フィンランド、ブラジル(アマゾナス州、サンタカタリーナ州、サンパウロ州、パラナ州、 マットグロッソドスール州、ミナスジェライス州、 リオデジャネイロ州)、仏領レユニオン島、 米国全土(上記の州を除く)、ペルー、ベルギー、ポーランド、マルタ、メキシコ、モルディブ、モンゴル、 ヨルダン、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、ルーマニア、レバノン、ロシア全土

※外務省海外安全ホームページより抜粋。 2022年2月5日より適用。

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フリーランスライター・フォトグラファー
村田 尚之

1970年、東京生まれ。学生時代から雑誌の編集に携わる。自動車専門誌やメーカー広報誌などを手掛ける編集プロダクションを経て、2002年にフリーランスライター・フォトグラファーとして独立。クルマや旅客機、鉄道など乗り物関連の専門誌やニュースサイトを中心に執筆・撮影。「旅客機・エアライン検定公式テキスト」(徳間書店刊)、「ANAの本。」(誠文堂新光社刊)など、書籍制作にも参加。
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