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美しいニッポンを体験する旅

クラシック&プレステージカーで駆け抜ける日本版グランドツアー

author: 川端 由美date: 2021/10/29

インバウンド向けのクラシックカーの旅は、実は日本人にとっても自身の国の魅力を再発見する旅になる。緊急事態宣言が明けた今こそ、クラシックカーで美しい国ニッポンを巡ってみたい人にピッタリな、withコロナ時代のプレミアムな旅が生まれる瞬間を一緒に体験しませんか?

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 大谷石の採掘場跡地にて、クラシックカーを並べての記念撮影。

 外国人から見た日本の魅力。インバウンド観光の推進もあって、近年、よく耳にした言葉ではあるが、いざ、「日本のどこに行けば、外国の人たちが満足する素晴らしい景色や食や滞在先があるのか?」と聞かれると、答えに窮してしまう。そう、私たち日本人は、自らの足元の魅力を認識しきれていなかったし、外国にその魅力を発信し切れていなかった。ただ、コロナ禍で国外に出かけることが制限された今だからこそ、あえて日本の魅力に目を向けてみようと思う人も増えたはずだ。

 筆者自身、モーター・ジャーナリストという仕事柄、世界中をクルマで旅した経験を持つ。駄洒落のようだが、フェラーリ「カリフォルニア」の幌を下ろして、一週間かけてカリフォルニアの海沿いの道を走り抜けたしたこともあるし、イタリア・コモ湖の畔で発表されたばかりのロールス・ロイス「ファントム」を駆って、イタリア、フランスを抜けて、母国・英国に帰郷するグランド・ツアーを敢行したこともある。しかしながら、こと国内に目を向けると、自らの経験がお粗末だったことに気づかされる。

 英ファーナムに拠点を置く旅行会社が主催する「ドライビング・アドベンチャー」の日本編「ラリーラウンド サムライ・チャレンジ」の企画運営を担当した株式会社Musubi代表の増田恵美さんは、まさに「外国人から見た日本の魅力」をツアーとして組み立てて、クラシックカーのオーナーたちに提供してきた経歴の持ち主だ。2017年に日本で初開催された時には、英国はもとより、世界中から参加者を募って、24日間かけて33都道府県を巡っての、まさに「グランド・ツアー」が敢行されたのだ。蛇足ながら、グランド・ツアーとは、英国の富裕な貴族の若者たちが見聞を深めるために数年かけてイタリアまで旅した故事に端を発する。かのシェイクスピアも、若き日にグランドツアーで巡ったイタリアでの日々から多くのインスピレーションを得たとされる。

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緑の豊かなエリアをプレステージカーで走り抜ける。

閑話休題。

 アドベンチャーラリーでは、参加者が自らのクラシックカーで現地を走り、その土地の魅力を再発見するという趣旨の企画ゆえに、入念な準備を必要とする。増田さんが企画に参画したサムライ・チャレンジでは、英国から主催者であるリズ・ウェンマンさんに加えて、過去のラリーで優勝経験のあるエンジニアたちが事前に来日して、実際に現地を走り回って、入念に立ち寄る場所や宿泊地を決めたという。

「アドベンチャーラリーはもともと年3回開催されています。日本に来る以前にも、チベット、ブータンなど、エキゾチックな開催地を巡ってきました。ときには、欧州で2-3泊という短いものもありますが、目玉はやはり、数週間かけて巡るロングツアーです。今回、リズとこの企画を組み立てるにあたって、私自身も素晴らしい経験をさせていただきました。旅行会社としても数々のツアーに携わってきましたが、リズやエンジニアたちと共にした下見の旅はとにかく新しいことの連続でした。元ヒューレット・パッカードのエンジニアだったピーターさんは、初めて訪れる日本でも、GPSの情報からありとあらゆる道を探って、どんどん進んでいきます。高速道路を使うよりも、あえて古い街並みや日本の暮らしが垣間見れる一般道を選んで走りました。ただ、50台もの参加車両が立ち寄る先ごとに駐車エリアを探すのは至難の技でしたし、長旅の中で疲れないように、かつ楽しめるアクティビティを用意していく作業は、困難ではありましたが、旅行業を営む身としては、とてもワクワクする経験でした」と、増田さんはサムライ・チャレンジの思い出を語る。

サムライ・チャレンジの際に作ったブックレットには、日本の魅力ある見所が並ぶ。ツアーを主催する増田恵美さん。

 リズさんは事前に2回来日して、メカニック、医師、動画や写真や執筆を行うメディア陣までしっかり構成したという。さらに、クラシックカーが取り持つご縁で、サムライ・チャレンジを歓迎する日本側の協力者の輪も生まれた。「コッパ・デ・キョウト」という京都を舞台にしたクラシックカー・ラリーを主催する山田純司さんの協力をえて、外国人の方に着物の製造工程を体験してもらったり、佐渡では鼓童を体験する好機を得たり、まだ震災の傷跡も癒えなかった熊本では地域の幼稚園生との交流なども実現したのだ。阿蘇の保育園では、桜の植樹も行った。もちろん、そのためには地元の県警をはじめ、地元の人たちとも入念な打ち合わせを重ねたからこそ、そうした交流も生まれた。

「ラリーラウンドでは、参加する方の気持ちをとても大切にしてツアーを構成しました。せっかく異国の地まで愛車を持ち込んでいただくので、とにかくどんどん走ることに重きを置くのですが、同時に、同乗者の声も聞いて企画を作っています。だからこそ、しっかり走っていただくコースを設定すると共に、少しゆったりしたペースで文化・歴史、土地のいいところを堪能したツアーを計画したいと考えています」と、増田さんは当時の気持ちを語る。

 増田さんとリズさんの努力が身を結んで、第一回目のサムライ・チャレンジは好評のうちに幕を下ろした。そして、すでに第二回の開催が予定されていたものの、コロナ禍で開催が見送られてしまったのだ。そこで増田さんは一念発起して、観光庁の募集に応募して、見事に令和3年度の「アドベンチャーツーリズム等の新たなインバウンド層の誘致のための地域の魅力再発見事業」として採択された。

  

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クラシックカーやプレステージカーのオーナーが東京・パレスホテルを出発地点に、茨城県、栃木県を2泊3日で巡るルートを走る行程となる。

「このツアーは、2泊3日という日本の方に無理のない日程で組んでいますが、サムライ・チャレンジで培った精神を引き継ぐものとして企画し、日本の方々に日本の魅力を見つめ直していただくツアーにしようと心を砕きました。実際、自動車の旅ではないと見つけられないものがあると思います。例えば、ツアーを組むための下見で、島根にお邪魔したとき、松江まで辿り着けずに、浜田でビジネスホテルに泊まった際のエピソードがあります。臨席の方が話しかけてきて、リズが英国から来たことを伝えたら、奇遇にもアフリカで遭難した際に英国人のご家族が救難してくれたというご経験をお持ちの方でした。その恩返しにとおっしゃって、地元にある神楽の文化を見せてくださいました。彼らは、フランス大使館などに呼ばれていて、海外公演をするチームだったのです。さらに地元の方とのつながりで交渉してくださって、出雲大社を開けてくださることが決まり、ツアーに参加した全員を本殿に入れていただいて、玉串贈呈をしていただきました。その時の経験から、Musubiとして、今回のツアー組むにあたっても、出雲にとって重要なキーワードである「縁」を大切にしようと考えました」(増田さん)

今回企画されたツアーでは、古河ヒストリックエリアなどの雰囲気ある街並みにも立ち寄る予定だ。

今回のツアーでは、東京パレスホテルを出発して、茨城・古河のヒストリックエリアを巡り、初日は那須にある水辺が美しいブティック・ホテルであるアートビオトープに投宿する。二日目は、那須高原のドライブルートから紅葉シーズンの奥日光まで抜けて、中禅寺金谷ホテルに宿泊する。道中での立ち寄り先には、増田さんが入念に調べ抜いたスポットが用意されている。同じくクルマを趣味とする人たちが集まって、会話の弾むカクテルパーティやディナーを共にするのは、海外ではよくある光景ではあるが、日本ではまだ限られた好機に思える。

初日に投宿する栃木県・アートビオトープ那須では、豊かな水辺のエリアがある。

 ツアーの参加資格は、国内外のクラシックカーのオーナーに加えて、プレステージカーの愛好家にも門を広げている。インバウンド観光を掲げてはいるものの、今年はコロナ禍であることに配慮して、参加者は国内からに限定している。もちろん、各地での感染対策も入念に行っている。観光庁の採択事業という位置づけもあって、今後に向けたパイロットツアーの性格もあり、今年はわずか13組、ドライバーとナビゲーターを合わせて26人に限定されている。これほど入念に用意された内容であり、プレミアムな立ち寄り先の設定に加えて、保険やメカニックの準備なども含め、初めてのドライブルートであっても安心して走れる準備がなされていることを鑑みると、国内2泊3日の旅に49万5000円(税込)というプライスタグは、決して高くはないと思える。

2泊目の夕方には、栃木県・中禅寺湖を望むボートハウスにて、夕日を眺めながらアペリティフの時間が設けられている。

 これまで空路を急いでリゾートに赴いていた人でも、あえて陸路で行く旅での発見に目を向けてみるのも一興だろう。筆者自身、クルマで世界中の道を走ったことで、同行者同士はもとより、立ち寄る地域での温かい人々の交流に触れたり、見たこともない光景を目の当たりにしたことで、人生観が変わったこともある。すでに13台の募集枠は完売で、特別枠として2組を用意している(11月4日(木)募集〆切)。もし、あなたが2021年11月14-16日の3日間にスケジュール帳に余白を見出せるなら、ぜひ、プレミアムな日本の旅への参加を考えてみて欲しい。


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ジャーナリスト/戦略イノベーション・スペシャリスト
川端 由美

工学修士。住友電工にてエンジニアとして務めた後、自動車専門誌『NAVI』の編集記者に転身。『カーグラフィック』編集部を経て、ジャーナリストとして独立。自動車を中心に、新技術と環境問題を中心に取材活動を行なう。海外のモーターショーや学会を積極的に取材する国際派でもある。戦略コンサル・ファーム勤務後、戦略イノベーション・スペシャリストとして、再び、独立。現在は、ジャーナリストとのパラレル・キャリア。近著に、『日本車は生き残れるか』講談社刊がある。
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