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Review

コーヒーメーカー新世紀の始まり?

湯量・湯温・抽出速度を極めた「BALMUDA The Brew」

author: 小口 覺date: 2021/10/20

あのバルミューダが、ついにコーヒーメーカーを発表した。構想から6年だという。前々から期待されていたカテゴリーでもある。しかしコーヒーの世界は奥深く、それだけにうるさい輩、いや“違いがわかる男(女)”が溢れている。大丈夫なのか? 期待3割、不安7割ぐらいで、メディア向け発表会に臨んだところ、バルミューダらしさと強みが生かされている製品だった。そこで改めて製品を借りてレビューしてみようと思う。

メーカー希望小売価格5万9400円(税込)

バルミューダ

「BALMUDA The Brew」

ミルを内蔵した全自動コーヒーメーカーが流行りの昨今だが、「BALMUDA The Brew」は、ミルのないオープンドリップ式。ドリッパーにペーパーフィルターをセットし、コーヒー粉を入れ、上からお湯を注いで抽出するシンプルな方式だ。

ただし、ドリッパーには中央に穴がひとつ空いた円錐型を採用している。円錐型ドリッパーは、台形のドリッパーに比べてお湯の流れがスムーズなので、雑味のないスッキリとした味わいになる。問題なのは、狙った味にするには注ぐお湯の量や速度を細かくコントロールする必要があること。逆に、淹れ方で大きく味が変わる面白さもある。そのため、手動でお湯を注ぐハンドドリップでは、湯量と時間を計測する「コーヒースケール」を使う場合が多い。

特定の範囲では高い性能を発揮するが、挙動が神経質で誰にも簡単に扱えるものじゃない。自動車やバイクの世界でいう「ピーキー」というヤツだ。つまり、円錐型ドリッパーを採用=攻めているコーヒーメーカーなのである。

鬼のような湯量・湯温コントロール

「BALMUDA The Brew」を紹介するうえで、もっとも重要なビジュアルは、この図である。不安7割で臨んだ発表会だが、この図を見た瞬間「マジか、バルミューダやりおったな!」と驚いた。円錐型ドリッパーでは湯量や速度、そして湯温を適切にコントロールしなければならないが、バルミューダは、トースターで培った高度な温度調節機能を乗せている。

その挙動は実に細かい。まずは100℃のスチームでサーバーを温め、93℃でコーヒー豆の蒸らし、その後徐々に温度を下げつつ注湯し、さわやかな酸味とキレのある苦味、ほどよい甘み、コクのある苦味と温度ごとに成分を抽出していく。流量は0.2ml単位でコントロールしているという。スポイトの先端から垂れる滴が0.04mlなので、水滴5粒単位で調整されていることになる。まるでハンドドリップの達人の動きだ。

そして最後にドリップとは別に設けられたバイパス注湯口から直接サーバーにお湯が注ぎこまれ、クリアな後味に仕上がるという。お湯を足すなんて邪道だろうと思う人もいるかもしれないが、コーヒー豆の美味しいところだけ抽出し、お湯で味を整える「お湯差し」は、専門店でも行われている技法である。

「BALMUDA The Brew」の円錐型ドリッパー。そこに突起があって自立しないため、付属のドリッパースタンドに置いて作業する
当然のことながらペーパーフィルターも円錐型。同社のオンラインストアでも購入できるが、コーヒー豆を扱っている店で入手しやすいハリオの「V60用ペーパーフィルター」も使用できる
デザインのアクセントにもなっているノズル部。BALMUDAのロゴはここに入っている

凝った機構だが使い方はシンプル

それでは、「BALMUDA The Brew」の動作について、手順を追って説明しよう。この写真を見れば想像はつくと思うが、セッティングに難しいことはない。ペーパーをセットしたドリッパーにコーヒーの粉を入れ本体に差し込み、その下にサーバーを取り付ける。ミルは内蔵されていないので、別途ミルを用意するか、すでに挽かれたコーヒー粉を買う必要がある。当然、自前のミルをおすすめする。豆のまま保存した方が鮮度を保てるし、挽き方(細かさ)も好みに合わせて変えられるからだ。

水タンクは着脱式。ホット(REGULARおよびSTRONG)とアイスごとの水位線が刻まれている。水量は機械で調整するので、水タンクへは淹れたい杯数を満たしていればいい。一度に最大で3杯分(抽出量約360ml)。マグカップにたっぷり注いで2杯分淹れられる。

操作パネルはシンプル。電源ボタンを押すと暖かみのある色のランプが灯る。モードは「REGULAR(レギュラー)」「STRONG(ストロング)」「ICED(アイス)」の3種類。STRONGはバイパス注湯を行わないことでより力強い味わいで、カフェオレやウインナーコーヒーにも向く。ICEDは、抽出量をREGULAR比で62%、氷を入れても味わいを損なわないよう注湯間隔も変わる。

サーバーは真空二重構造のステンレス製。ヒーターによる保温は味が劣化するため、この方式を採用したという。コーヒーメーカーから外してデスクなどの上に置いておいても冷めないのはメリット。食洗機こそ使えないが、毎回水洗いする部品はドリッパーとサーバーだけなので、お手入れは容易だ。ちなみに、クエン酸水で内部を洗浄、真水ですすぎ・排出を行う洗浄運転も備える。

味や香りに「音」を融合したエンターテインメント

STARTボタンを押すと、「キッコッ、キッコッ」と古時計をイメージした音が流れる。しばらくすると、最初のスチームが出て、サーバーを温める。またしばらくすると、ドリッパーの上からスチームが出て、何度にも分けながらお湯が注がれる。よほどのコーヒー好き、プロでなければこのような細かい挙動をハンドドリップで日常的にやろうとは思わないだろう。ドリッパーが露出しているので、コーヒーの香りが部屋中に漂うのもよい感じだ。

最後にバイパス注湯でサーバーに湯が注ぎ込まれる。そして、完了したことを知らせるメロディーが流れる。スタートからかかった時間は、6分半ほど(REGULAR3杯の場合)。これは気温や水温によっても変わってくる。ゆっくりと時を刻むような音のせいか、ゆったりと心穏やかに待つことができた。

動作中に流れるサウンドについては賛否あるだろうが、元ミュージシャンの寺尾玄社長がこだわるところでもある。

勝手な想像だが、味や香りと音を融合したエンターテインメントを目指したのだろう。音楽は昔の記憶、思い出ともリンクしている。個人的な話だが、店内の閉店案内で使われる「別れのワルツ」(蛍の光に似た曲)が小学校の下校時間に流されていた。そのため、今でも別れのワルツを聞くと40年前に記憶が引き戻されそうになる。このコーヒーメーカーで育った子どもは、将来この音を聞くだけでコーヒーの香りを思い出す、コーヒーの香りを嗅ぐと脳内でこの音が再生されるのかもしれない。

スチームでサーバーを温める
93℃のお湯で蒸らす
時間の経過とともに湯温を段階的に下げ、コーヒーの美味しいところを抽出していく
仕上げとして86℃のお湯がバイパス注湯される(1杯分120mlのうち20〜25ml)

コーヒーメーカーの新トレンドはここから始まる!?

さて、味である。最初にいつも飲んでいる豆で試したところ、一口で違いがわかった。普通のコーヒーメーカーではありえない、丁寧に淹れたハンドドリップの味である。そして、豆の種類を変えても、「ストロング&クリアな味」が共通して感じられた。

マニア受けを目指すなら、スマホアプリと連携させるなどして、温度設定や湯量を細かく変更できる方法もあったであろう。しかしバルミューダは、ミュージシャンが「いろんな音は出せるけど、これがオレの音だ!」と言うように、「ストロング&クリアな味」の方向で決め打ちした。

それでいいと思う。

コーヒー豆の種類、焙煎、挽き方、分量を変えることで、ある程度は自分好みの味を追求することができるし、それ以上にマニアックに調整したいならハンドドリップで淹れればいいんだよ。「BALMUDA The Brew」の登場により、他社からも湯温・抽出速度を細かくコントロールする製品が出てくる予感がする。

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ライター・コラムニスト
小口 覺

雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆などを手がけるライター・コラムニスト。自慢できる家電「ドヤ家電」(日経MJ「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定)の生みの親。近年はトレンドやマーケティングをテーマに取材を重ねる。著書に「ちょいバカ戦略: 意識低い系マーケティングのすすめ」(新潮社刊)など。エンタメテックを主軸としたコンサルティングも務める。
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