お気に入りのあの曲を聴いていると、「自分がMVの主人公だったら……」なんて具合に、頭の中で勝手に映像が浮かんでくる。気分はもう、バンドマン。そんな妄想に覚えがある人もいるのでは?
「たかが妄想だ」とそのままにしておくのは、ちょっともったいない。だったら一度、本気でやってみよう。今回バンドマンになってくれたのは、東京を拠点に活動するクリエイティブクルー・COMETの4人。雑誌をつくり、イベントを仕掛けてきた彼らは、いつだって「頭の中のやりたいこと」をリアルにしてきた。そんな彼らと一緒に、妄想を形にしてみました。
もしも僕らが、バンドマンだったら?

COMET
東京を拠点に活躍するアーティストのYAMEPI©︎、グラフィックデザイナーのTAKERU、フォトグラファーのKOUSEI、彫刻家のJUJIRO、エディターのRINの5人で構成されたクリエイティブクルー。写真左からRIN、KOUSEI、TAKERU、YAMEPI©。
Instagram:@comet_001_
We are COMET!
──まずは、自己紹介をお願いします。
YAMEPI©:アーティストとしてイラスト制作を中心に活動しています。COMETは俺がメンバーに声をかけて、活動し始めました。

左奥からRIN、KOUSEI、YAMEPI©、前列がTAKERU
TAKERU:YAMEPI©の双子の弟で、COMET MAGAZINEの編集長、グラフィックデザイナーとして活動しています。
KOUSEI:普段は広告系の会社でカメラマンとして仕事をしながら、個人でも活動しています。もともとCOMETのメンバーとは同じ大学の友だちで。最初はYAMEPI©と仲良くなりました。あるとき街で「YAMEPI©じゃね?」と思って声をかけたら、別人だったんです(笑)。しかもそれが何回もあって、友だちの間で「YAMEPI©のドッペルゲンガーがいる」って話題になって。
TAKERU:まあ、それ俺なんですけどね(笑)。双子なので間違えられることが多いかも。今日は不在ですが、彫刻アーティストとして活動しているJUJIROも同じ大学の友だちだったんです。
YAMEPI©さんのイラストをJUJIROさんがフィギュアに落とし込んだ作品
YAMEPI©:全員が芸術系の学科に所属していたので、やりたいことをすぐ形にできるメンバーが揃っていて。自然と一緒に制作するようになったのが、COMETの始まりっすね。
クルーを組んで自分たちのやりたいことをガンガン形にしている先輩たちの姿に影響されて、「せっかく一緒に活動しているなら、ちゃんと名前をつけてクルーとして動いたほうが絶対いいじゃん」と思ってCOMETとして動くようになりました。
──RINさんは後からCOMETに加入したメンバーだとか?
RIN:初めてYAMEPI©が個展を開いたとき、その会場でインターンしてたんです。そこから一緒に遊ぶようになって、いつの間にかCOMETに入っていましたね。
YAMEPI©:COMETって英語で彗星という意味なんですよ。元々、彗星のモチーフが好きで色々調べていたときに「彗星に図面を引く」というフランス語の慣用句に出会ったんです。意味は「できもしない無謀な計画を立てる」「無謀な挑戦を企てる」的な意味があって、俺らもそういうスタンスでどんどん活動していきたいなって。クルーの名前として即決っすね。
KOUSEI:YAMEPI©がやりたいことが頭のなかにめちゃくちゃあって、アイディアとか活動の方針はYAMEPI©中心で決まっていくのが僕らのスタイルです。

──COMETとしてどのような活動からスタートしたんですか?
TAKERU:まずは俺とYAMEPI©がやりたかった「雑誌をつくること」から活動をスタートさせました。俺は文章執筆や取材、編集作業、デザインなど全てを担当しています。撮影はKOUSEIとKOUSEIの弟であるShoui Okuboがほとんどやってくれています。
RIN:僕はCOMETの窓口としてメディアやプロジェクトの調整をしたり、TAKERUと一緒に編集や文章を書いたり、幅広く担当していますね。
TAKERU:雑誌『COMET MAGAZINE』は、これまでにISSUE05まで刊行しています。『COMET SNAP』というSNAP版もISSUE02まで展開していて、ありがたいことに『COMET MAGAZINE』はISSUE03までは完売することができました。雑誌以外にも、Tシャツやビーニー、キーホルダーなどのアパレルグッズも手がけています。

KOUSEIさんが着ている緑のTシャツはオリジナル
YAMEPI©:そのほかにも最近は、CC STOREというCOMETの店をオープンしたり、自分たちでアーティストをブッキングして開催したライブイベント「COMET SOUNDS」をZEROTOKYOで開催したりと、活動の幅がどんどん広がってきていますね。
──COMETの最初の一手が雑誌だったのは、なぜだったんですか?
YAMEPI©:俺たちが好きなカルチャーを、“手に取れる形”で残したかったんですよね。今はInstagramやTikTokでいろんなカルチャーにいつでも触れられるけど、情報が流れるスピードが早すぎて、10年後に見返せるかっていうと、難しいと思ってて。
自分の好きな90年代~00年代のファッションも、当時の雑誌を読めば空気感ごと感じられる。それってやっぱり、“形として残っていた”からこそ触れられたんだと思うんです。
雑誌だけじゃなくて、音楽イベントでも、なるべく記憶と手元に残るものを作りたくて。アーティストごとにカードっぽいものを配ったりして、「あれ、あったよね」って10年後にも思い出せるようなものを残したい。そういう思いが、根っこにある気がしますね。
あとは僕らの世代を取り上げてくれるメディアがなかったので、なら自分で作ってしまおうという気持ちもありました。
結婚式で歌おうな
──ファッションやアートを中心にカルチャーに対しての興味関心が高いCOMETのみなさんですが、普段はどんな音楽を聞くんですか?
YAMEPI©:俺はカネコアヤノがめっちゃ好きっすね。優しい歌が自分にあっている感じがして、絵を描くときもそういうバンドの音楽を流していることが多いです。恋愛ソングとかも恋してなくても聞いちゃいます。

TAKERU:ハマったらその人しか聞かないことが多くて、最近はKIRINJIとaikoばっかりっすね。
KOUSEI:僕はTHE ALFEEが最近のお気に入り。バンド系の音楽を聞くことが多いかもしれないです。

──意外ですね(笑)。今回は「もしもバンドマンになったら」という妄想をリアルに落とし込もうという企画なんですが、普段考えたりしますか?
RIN:お話いただいたときに、ちょうど僕らで「結婚式の余興はみんなでバンド組もうな」って話していて、タイムリーでびっくりしました。
KOUSEI:甲本ヒロトさん(以下ヒロト)、真島昌利さん(以下マーシー)を中心に結成された↑THE HIGH-LOWS↓の『千年メダル』をやろうって話してたんですよ。歌詞がもう最高で。
YAMEPI©:千年メダルは、愛の歌なんですけど「たとえば千年 千年じゃ足りないか」という歌詞がこれまたしびれるんすよ。ヒロトが作る音楽にはめちゃくちゃ影響を受けていて、↑THE HIGH-LOWS↓の前に組んでいたバンドのTHE BLUE HEARTSとかも大好きです。『ラブレター』『リンダリンダ』『TRAIN-TRAIN』『情熱の薔薇』とか、イベント終わりの打ち上げでみんなとよく歌います。
TAKERU:ヒロトがつくる音楽はもちろんですけど、彼のスタイルや考え方がめちゃくちゃかっこいいですし、自分たちも90年代~00年代のストリートカルチャーが大好きなので通ずるものがあって。
YAMEPI©:俺らがバンドを組むなら彼らみたいなスタイルがいいなあと思いますね

バンドマンCOMET、誕生
──今回は、バンドマンの聖地のひとつ下北沢にあるスタジオに来てみました。
COMET一同:うわ、本物じゃん、テンションあがるな。

KOUSEI:とりあえずギター持って構えてみたら、なんかそれっぽく見える気がする。でも弦を押さえるのってこんなにムズいんすね……。アーティストのみなさん、すげえ。
RIN:ベースをなんとなく持ってみたけど、どう構えるのが正解かわからないな。女の子とかに弾いてあげたらかっこいいかな(笑)。
──では、バンド・COMETのみなさんに登場していただきましょう。

バンドやるならこんな感じ?

変身前
YAMEPI©:おお~、楽器に触れたことがないし音楽をつくることだけは今後やることがないと思っていたので、新鮮っすね。デビュー(仮)するからにはみんなの記憶に残るようにカマしたい。
TAKERU:デビュー曲は、やっぱり優しい歌がいいかな。自分たちに馴染みのある、ラブソング的な。

RIN:じゃあ歌詞は僕かTAKERUで。普段から雑誌の文章書いてるんで、その延長でいけそう。
YAMEPI©:ボーカルは俺ですね。やっぱ目立ちたいんで(笑)。
KOUSEI:思ったよりもギターがしっくりくるかも。
──もしもみなさんが本当にバンドを組むなら、どんなバンドになりそうですか?
YAMEPI©:名前はCOMETしかないっすね。
──デビューしたらまず何をしたいですか?
YAMEPI©:ヒロトと対バンしたい。あと、いきなりフジロック出ちゃうみたいな。
KOUSEI:めっちゃ大物新人じゃん(笑)。
目指せ武道館
RIN:Mステも出てみたいですね。小さい頃から見てたし。で、アイドルと共演しちゃったりなんかして(ニヤニヤ)。
TAKERU:モテたいだけだろ(笑)。
YAMEPI©:海外よりも日本でライブしまくりたいっすね。言葉をちゃんと届けたいし、日本が大好きなんで。
TAKERU:MVは原宿で撮影したいな。俺たちといえば、っていう場所だからデビュー曲のMVにふさわしいと思う。

YAMEPI©:結婚式でやろうなって話してた、あの妄想がまさかこういう形で、先に叶うなんて不思議な感じっすね。普段から頭の中にある妄想を、無謀かもしれないけど形にしてみたら、想像以上に楽しかったです。やってみたいことを、妄想のままで終わらせるのってもったいないなと改めて思いました。COMETの活動に通ずるものがあったかもしれないです。
……というわけで、マジでデビューしたらCD買ってくださいね(笑)。

【YAMEPI】
ニット 7万7000円、Tシャツ 3万4100円、パンツ 6万3800円、ウォレットチェーン 3万800円、スニーカー 4万2900円(doublet / ENKEL 03-6812-9897)
※その他は本人私物
【TAKERU】
レザーベスト 29万7000円、ニット 6万1600円、Tシャツ 4万7300円、パンツ 6万8200円、靴 22万円(doublet / ENKEL 03-6812-9897)
※ソックスはスタイリスト私物、その他は本人私物
【KOUSEI】
ジャケット 15万1800円、スニーカー 5万3900円、ポーチ 1万9800円 (doublet/ENKEL 03-6812-9897)、Tシャツ 2万8600円、パンツ 6万8200円(KIDILL / Sakas PR 03-6447-2762)
【RIN】
ジャケット 11万3300円、オールインワン 19万5800円(KIDILL/Sakas PR 03-6447-2762)、Tシャツ 2万8600円、サングラス 4万700円、クラッチバッグ 15万4000円(doublet / ENKEL 03-6812-9897)
※靴、ソックスはスタイリスト私物
Photo:Cho Ongo
Styling:Soichiro Kobayashi
Hair & Make:夏子(アッパークラスト)
Edit & Text:舩岡 花奈