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「DIG SHIBUYA 2024」が体現するシブヤのイマ

カオス化を続けるシブヤは「混沌」を肯定する

author: Naomidate: 2024/01/05

世界中を見渡してみても、渋谷ほど 「カオス」 という言葉がしっくりくるエリアはないだろう。100年に一度と言われる大規模な再開発工事が続くこの街に、毎日、多種多様な人々が訪れている。特にこの数年、国内外のWeb3やAIなどのスタートアップ企業やコミュニティ、テックカルチャーのクリエイターらが集う場にもなっているが、その背景には彼らをサポートする行政の存在があった。2024年1月12〜14日に渋谷をあげて開催される「DIG SHIBUYA 2024」を前に、渋谷区産業観光文化部の宮本安芸子(あきこ)さんに、変わり続ける渋谷の “今“と ”これから” を聞いた。

国内外のスタートアップ企業や
クリエイターが渋谷に集まる理由

宮本:渋谷という街を一言で表わすと、「これから何かを始めよう、チャレンジしよう、という人たちがジャンルレスで集まり、出会い、刺激し合う街」だと思います。その象徴が渋谷駅前の「スクランブル交差点」でしょう。

”谷底”に位置する駅を中心にあらゆる「人種」が一同に集まり、おのおのが自分たちの目的地へと向かって歩いていく、まさに“交差”点です。世界の大都市と比較して、比較的安心・安全な場所でありながら、良い意味で本当に「カオス」ですよね。

渋谷といえば、1990~2000年代にかけ、インターネット関連のスタートアップ企業が集中し、「ビットバレー」と呼ばれていた。かつてのベンチャーだったサイバー・エージェントやGMO、DeNAなどは、日本を代表する大企業へと成長し、今も渋谷に拠点を置く。

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宮本:渋谷区は行政として、これまでも多くの起業家やクリエイター、スタートアップ企業を応援し続けてきました。特にこの数年は、「渋谷で起業したい」という海外のスタートアップやクリエイターをサポートする取り組みも積極的に行っています。オフィスとしてコワーキングスペースを用意したり、住居の賃貸契約や銀行口座の開設や、ほかにも生活面の細かなところまでサポートしたり。

これらの取り組みについては、世界各地で行われるスタートアップイベントに参加するほか、LinkedInを活用して英語でも情報発信をしていて、年間数百件の問い合わせがきている状況です。

渋谷区が主体となって海外の起業家を積極的に誘致することは、同じく渋谷を拠点にする日本人の起業家やクリエイターたちにも、大いに刺激になっているという。

宮本:単に海外からスタートアップを誘致するだけはなく、渋谷に集う人たちの刺激になり、互いに成長していける環境をどうやって作っていくか。数年にわたって試行錯誤してきましたが、まさにスタートアップのエコシステムが生まれつつあります。

来日した彼らを受け入れることで、グローバルスタンダードの起業とはどういうものか、が、我々も理解できますし、日本人の起業家たちも彼らと交流することで、自然と世界を視野に入れて自分たちのビジネスを考えるきっかけになっていますね。

変わり続けることを許容し
何かがはじまりそうな「余白」や「遊び」

現在の渋谷には、ただでさえ訪日インバウンドが密集し、遊ぶ人、働く人、住む人が混沌と混じり合い、カオス化をたどる一方だが、それでもなお渋谷区が主体となって世界からベンチャー企業を誘致に邁進する必要があるのだろうか。

宮本:渋谷区は2023年時点で区制施行91周年。2032年の区制100周年を前に、「ちがいを ちからに 変える街」というビジョンを掲げています。この街の歴史は、外からの刺激や尖った新しいものも、ローカルにあり続けたものも、ありとあらゆる変化を許容して、対立したり混ざり合ったりしながら、大きな変化を繰り返してきました。

まさに今も、多種多様な人々が世界中から行き交って変化し続けていますし、何か新しいものがゼロから生まれるのは、そんな「カオス」のような場所からだと考えています。

今の風景からは想像できないが、ほんの100年前の渋谷は、茶畑が広がるのどかな場所だった。1920年に明治神宮が創建され、第二次世界大戦後、今の代々木公園のエリアに「ワシントンハイツ(在日米軍施設)」が完成。これを契機に、外国人が多く暮らす表参道界隈からグローバルな文化が広がっていき、高度経済成長や東京オリンピック(1964年)を経て、渋谷は目まぐるしく変化し続ける街へと変貌していった。

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一方で、宮本さんは、「渋谷のローカルコミュニティにいる人たちが、居心地良く感じられる街でなければ、外から渋谷を訪れる人たちにも魅力に感じてもらえない。思い思いに暮らしていられる、やりたいことができることも、とても重要」と話す。

宮本:行政としても、新しいカルチャーやムーブメントを起こすようなスタートアップやクリエイターを応援し続けていきたいですが、そのためには、街のなかで、いろいろなコミュニティの人々がゆるく集まり、思い思いに時間を過ごしたり、ずっと話したりしていられる、開放された広場のような「余白」とか「遊び」の存在が大切なのかもしれません。

東京という大都市の、渋谷のド真ん中ですから、経済論理に基づいた都市開発という観点も当然必要です。ただ、だからこそあえて、目的や用途を決めすぎない「余白」や「遊び」を、都市の中に意図してつくる必要がある。今回の「DIG SHIBUYA」でも、「余白」がポイントです。

「DIG SHIBUYA」では、渋谷区やパートナーが管理しているスペースや物件などを開放し、公募を経て採択された多種多様なクリエイターの作品発表の場として提供する。まさに都市の中に点在する「余白」で、新たな表現と交流が生まれるイベントとなる予定だ。開催準備を進めるにあたり、渋谷区の地域の方々に「DIG SHIBUYA」の説明に伺った宮本さんは、とても驚き、気づいたことがあったという。

宮本:高齢の方もたくさんいらっしゃっている区民の会合などにお邪魔してご説明したときに「よくわからないけれど、そういうものをやるんだね」と受け入れていただけたのは、非常にうれしかったです。自分がわからないものを拒絶せず、デジタルアートやNFTアートってものがあるらしいね、と受け入れ、応援しようとしてくれたり。

渋谷という街に暮らす方々や、地域のコミュニティにいる方々が、「それは渋谷らしいね」というスピリットをお持ちなのは、変化し続けてきたこの街ならでは、かもしれません。

渋谷から世界に発信する
「DIG SHIBUYA」が目指すもの

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「DIG SHIBUYA」を構想を詰めていくうえで参考にしたのが、2023年5月、NFTアート体験型ギャラリー「Bright Moments」が渋谷で開催されたことだったという。「Bright Moments」は、これまでにニューヨーク、ベルリン、ロンドンなど世界各国で開催され、各都市でデジタルアートを体験する場を創り出してきた。7つ目の都市として選ばれた渋谷では、代官山にある重要文化財・旧朝倉家住宅が会場となり、世界中のNFTアートコレクターが集まったのだ。

宮本:渋谷区は区内にある150を超える文化・エンターテインメント施設を「区の文化的な資産」と位置づけ、文化・観光・産業の活性化を実現しようとしています。

これまでも渋谷区が管理する文化財施設を提供しイベントをサポートしてきましたが、「Bright Moments」では、クリエイティブテックの文脈におけるトーキョー・カルチャーやシブヤ・カルチャーへのグローバルの期待値の高さ、渋谷という場所で開催することの意義を実感しました。

同時に、渋谷区内のクラブでオープニングパーティーやアフターパーティーが開かれるなど、さまざまな場所で多くの関連イベントが行われた様子に、小さな飲食店からさまざまな文化・エンタメ施設まで、街全体を元気にしたり、新しい体験を作っていったりすることが、まさに「渋谷らしい」取り組みと言えるのでは、と考えたのです。

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今回、第1回目となる「DIG SHIBUYA 2024」では、ロサンゼルスベースの「FriendsWithYou(フレンズウィズユー/写真上)」をメインアーティストに迎え、公共の場などを活用した彼らのインスタレーションやパフォーマンスが披露される。

宮本:「DIG SHIBUYA 2024」は、渋谷で遊ぶ人、働く人、住む人、すべての人が、テクノロジーとアートがかけ合わさった最新カルチャーを体験していただけるイベントです。1月12〜14日の3日間、渋谷にある商業施設や店舗など各所で同時多発的にデジタルアートを絡めたコンテンツが展開され、回遊できるプログラムを準備しています。

渋谷パルコから代々木公園まで続く渋谷公園通りを交通規制し、世界各国でインスタレーションを行っている「FriendsWithYou」の作品が街を盛り上げます(1月13日12〜15時)。また、3日間のイベント期間中、24〜25時にかけて深夜の渋谷スクランブル交差点では、スクリーンを使った映像作品「Shibuya Crossing Night Art」を上映します(参加アーティストはこちら)。

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「渋谷で表現したいこと」をテーマに公募を経て採択されたのは、クリエイティブテックの領域で多種多様な表現活動をする国内外のクリエイターだ。どんな作品が展示されるのかは未知数。「混沌すらも許容する」という姿勢は、世界中を見ても渋谷でしか実現できないのかもしれない。最後に宮本さんは、「DIG SHIBUYA」の準備に際して、もっとも大事にしていることを話してくれた。

宮本:このアート&テックのショーケースイベントは、参加する人々にとってできるだけオープンでフラットなコミュニティであることを目指しています。参加団体を公募・採択するときも、誰にでも展示するチャンスがあるように、多様なバックグラウンドの方々に、「そもそも渋谷らしさって何ですか」といったところから検討してもらったうえで、選考をお願いしました。

世界中からさまざまなクリエイターが集まっている渋谷では、誰かからのお墨付きやセレクトをしてもらえないと、作品を発表できないような場ではなく、自分の意志で誰もが発表できる、「何かをつくりたい」「表現したい」と思った誰もがクリエイターになるチャンスがある街でありたいのです。

区制から100年が経とうとしていてもなお、「変化し続けること」が渋谷の象徴であり、「カオスを肯定」できるのが、世界的にも稀に見る「SHIBUYA」という街の姿なんだと思います。

DIG SHIBUYA 2024



期間:2024年1月12日(金)〜2024年1月14日(日)
開催場所: 渋谷公園通り周辺エリア、代々木公園ケヤキ並木、渋谷区立北谷公園、などの公共スペースや周辺のギャラリースペース、Spotify O-EASTほか
URL: https://digshibuya.com/

【Talk, Installation+Meet Up-DIG SHIBUYA 2024 OPENING SESSION】
日時:2024年1月12日 (金) 開場13:00、開演14:00-19:30
会場:Spotify O-EAST 渋谷区道玄坂2-14−8
URL: DIG SHIBUYA 2024 OPENING SESSION(Peatix)

【DIG SHIBUYA – Opening Party supported by JOHNNIE WALKER BLUE LABEL 】
日時:2024年1月12日 (金) 23:00 OPEN
会場:Spotify O-EAST 渋谷区道玄坂2-14−8
URL: DIG SHIBUYA 2024(Spotify O-EAST)

Photo:下城英悟
Edit:山田卓立

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アートライター・文筆家
Naomi

服作りを学び、スターバックス、採用PR、広報、Webメディアのディレクターを経てフリーランスに。「アート・デザイン・クラフト」「ミュージアム・ギャラリー」「本」「職業」「生活文化」を主なテーマに企画・取材・執筆・編集し、noteやPodcastで発信するほか、ZINEの制作・発行、企業やアートギャラリーなどのオウンドメディアの運用サポートも行う。好きなものや興味関心の守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダレス。
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