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WAKAYAMAごんぱち家族の移住日記

ウメ食べ放題の梅(バイ)キング?それとも梅(バイ)トする?移住ってすごい!

author: 利根川 幸秀date: 2022/08/19

移住する前、和歌山と聞いて思い浮かんだのは、南高梅とみかんだけだった。梅の収穫量は日本一で、全国の収穫量の半分以上にもなる。さすがは和歌山、梅の産地とはいえない本宮町でも、梅の木は至る所に生えており、梅の季節が来るとご近所さんや知り合いから、「そろそろ収穫の頃だから梅取りにおいでやー!」と、あちこちから声をかけてもらうことが多くなり、どこの家でも「梅干しだ、梅酒だ、梅シロップだ!」と、“梅話”であふれかえるのも、田舎暮らしローカルオプション! 新参者ですが、利根川家も梅農家気分で、ファミリー梅(バイ)キングはじめましたー!

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 この時期、玄関先は梅農家  

どこもかしこも梅のお誘い! ありがたし!    

「6月になったら取りに来たらええ!」空き地のような柵のない庭に生えている、数本の梅の木を指差して「何もせんでも梅がよくなるわー」と、同じ集落に住むおじいちゃんが教えてくれた。

おじいちゃんが住んでいる場所は、集落の一番奥で、僕たちは勝手にそこを「桃源郷」と呼び、「さすがは桃源郷、梅もなり放題なんだ」と感心していたけれど、どうやらウチの離れ小屋の裏にも梅の木が生えていて、近所のヒデさんに聞くと「ウチの梅やけど、もう取らんから、梅がなったら好きに取ったらええよー! 昔はほんによくなったんやー」と、言ってくれた。

そして、梅の季節が来て見に行ってみると、数えきれないほど梅がなり、枝によっては梅の重さで今にも折れそうなほどシナっていた。東京にいた頃、毎年、梅干しを漬けていた妻のきみよは、無農薬の梅をわざわざネットで探して注文していたけれど、通常の梅の倍の値段はしていたようで、裏庭の梅がたわわに実った木を眺めながら「これヤバない!?」と満面の笑みでうれしそう。

当たり前なのだが、放置プレイで勝手に実っている梅たちは、完全無農薬無肥料の文字通り天然梅。わざわざ買っていた無農薬の梅が、「取ってくれたら無駄にならなくてありがたい」と感謝される。価値とは不思議なものだと思う。住めば住むほど、梅処、和歌山のポテンシャルを感じるばかりだ。  

梅うめ梅うめ、梅たわわ
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笑みもあふれる梅っぷり

触るとボロロン、ひらいた手のひら梅が笑う    

梅の収穫はいたってシンプル。とにかく取ればいい。手の届くところは手を伸ばし、上の方は木に登り、時には脚立をうまく使い、S字フックをバケツの持ち手にかけて木の枝にひっかけ、どんどん取ってはバケツに投げ入れていく。

コロンコロンとバケツが鳴るのは一瞬で、あっという間にバケツは、小さい青リンゴのような梅で満たされていく。木に登ると葉っぱに隠れて見落としがちな“梅たわわ群”の位置を、木の下からきみよが的確に指示を出す。

「あそこにめっちゃあるでー、その下もなっとるでー」

たわわに梅が実っている枝は、ちょっとさわっただけも、大物でも釣れたかのような枝の重量感がハンパない。そして手を伸ばすと、スーパーボールみたいな梅が、ボロンボロンと手のひらに転がり込んでくる。取りこぼした梅をポロポロ落としては、ガサガサと下で拾い歩く音がする。

たまに下から「ほんま贅沢やなー」と、きみよの一人言が聞こえてくる。農薬などの消毒をしていない梅には、ホクロのような黒い斑点があるけど、痛んでいるわけじゃないので気にしない。

むしろ無農薬印のドットマーク(笑)。梅の木は剪定した方が良いらしく、梅の木には棘があるので長袖作業で収穫しつつ、素人ながらに不自然な枝はなんとなく剪定していく。さてさて、気がつけばバケツは梅でいっぱいだ。 

ウメ玉つまめばポロリともげる
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木の上に登ってポンポン投げる

無農薬印のウメぼくろ

和歌山行ったら、“梅バイ”しようぜ! 

「和歌山といったら梅干し! 梅といったら収穫バイト!」

梅の季節には、梅収穫のバイトをやらないかという声が、けっこうかかってくるのだ。“梅バイト”のシーズンは、5月の末〜6月いっぱいくらいで、内容は梅を取る作業、落ちた梅を拾う作業、収穫後の選果作業と、工程はいたってシンプル。時給は¥1000〜1600ほど。

農家によって労働条件にかなり違いがあるので、時給が高いから良いとは限らないのが梅バイトの特徴だ。梅林がある場所は急斜面が多く、収穫作業をする梅林が平地か急斜面にあるかで、疲労度には雲泥の差がでてくる。それと、収穫しやすいように、梅林がちゃんと剪定され管理されているかでも変わってくる。

誘われて初めて行った農家さんは、平地の梅林が多く、剪定も行き届いていて、とても作業しやすい環境だった。そして何と言っても農家さんの人柄がよく、アットホームだったので、梅シーズンに毎年バイトに来ているメンツが多く、チームワークも雰囲気もとてもよかった。聞くと、梅シーズンには毎年小遣い稼ぎとして、梅バイトをしてきたと言う。

40年選手の“梅プロのおじちゃん”情報によると、農家によってバイトの扱いにはだいぶ差があり、「やたら時給が高いところは要注意だ」と教えてくれた。梅のバイトは1日作業をすると体はかなり疲れるが、ノーストレスで、脳みそが覚醒するのか、帰りの車の中では心地よい疲労感と充実感に満たされる。   

梅バイト、出荷する梅は美しい
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ヘタ取り作業に没頭中(自宅)  

<うめ川柳>うめ作業 みんなでやれば うめ遊び      

収穫した梅はどんどん熟れていくので、なるべく早く処理しないと、梅の香りに誘われた小バエが、どこからともなく大量発生してえらいことになる。この時期、玄関には梅の匂いが充満して、子どもの頃によく食べていたウメ味の赤ピンク色の板ガム(ロッテ)を思い出し、ノスタルジックな感情と唾液が口の中にあふれだす。

収穫後の処理は家庭によってそれぞれやり方が違う。ウチの場合は、選果した梅を一つずつ焼酎で拭き、爪楊枝でヘタを取ってから、焼酎にちょんちょんとつけて、梅干しにしたり、梅シロップにしたりしていくが、他の人に聞くと、もっと大雑把に梅を水で洗い、焼酎をかける程度などと色々なやり方があるようだ。

東京にいたころ、わざわざ買った梅をカビだらけにしてしまい、それ以来、几帳面にやるようになったが、逆に時間がかかるため収穫した梅が熟し過ぎてしまう問題も発生している。まだまだ梅処理の方法は手探りのようだ。

氷砂糖と梅を瓶に入れると、氷砂糖がジュエリーみたいにキラキラして見ていて心地よく、子ども達が氷砂糖を一粒舐めたいと寄ってくる。一粒ずつ口に入れてやると、口の中でゴロゴロして満足そうにしている。氷砂糖で膨らんだほっぺたを見ていると、アニメ『火垂るの墓」を思い出しては「お前等は幸せだな……」と、ボソリとつぶやいては「お前もな!」と、自分に突っ込んでしまう。

今回は氷砂糖の梅シロップ、黒糖の梅シロップ、それと梅干しを作った。シロップに入れた砂糖は、二週間もするとすっかり溶けてしまい、それなりにいい雰囲気が出てくる。梅干しは塩に漬けて1か月くらいしてから、ネットの上に敷き詰めて干すのがウチのスタイルだ。梅干しのおにぎりが食べられるのが待ち遠しい。     

玄関ウメニケーション

 

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今年もバッチリ仕上がりました    

氷砂糖をつまみ食い

 

読んで字の如く、梅干し中!
日の丸弁当、ホクロ梅!
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フォトグラファー
利根川 幸秀

1978年埼玉育ち、99年にインドよりエジプトまで陸路で旅して、途中イスラエルで旅費を稼ぎ、2000年ハンガリーより帰国、その後も東南アジアなどバックパッカーしたのち、職人などを経て、2006年写真家・𣘺本雅司氏に師事。2010年フリーランスとして独立。雑誌、webメディア、ポートレート、家族写真等、多岐にわたり撮影。趣味:川遊び、ダム瞑想。2021年、家族で東京より和歌山に移住。
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