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Column

SNS疲れの反動?

欧米のZ世代にウケている、自分を飾らないSNS

author: 鈴木 朋子date: 2022/07/18

地震が起きればTwitterを開き、グルメ情報を知りたいならInstagramで検索ーー我々の生活はSNSと密接に繋がるようになった。一方で「SNS疲れ」もよく聞かれるようになった。常にSNSに投稿することを考えて外出し、いいねがもらえる投稿を心がけ、友人の投稿にいいねをし続ける。義理で繋がった人からのコメントにも対応しなければならない。SNSに囚われてしまう風潮に誰もが疲れ始めた今、アメリカを中心に「次世代SNS」と呼ばれる新たなサービスが続々と立ち上がっている。どのサービスも、中心となっているユーザー層はZ世代の若者だ。

2分以内にリアルをシェア「BeReal」

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 友達にリアルを見せる「BeReal(ビリール)」
https://bere.al/en

「BeReal」は、その名の通り、リアルを重視するSNSだ。アプリから通知が来たら、2分以内に写真を撮ってシェアしなければならない。通知は1日1回だが、時間はランダム。しかも、フロントカメラと背面カメラの同時撮影により、自分と背景が1枚に収められる。

つまり、寝起きでひどい顔をしていても、そのまま撮影するしかない。とはいえ、2分以内にシャッターを押せばよいので、映しても良い場所に移動することはできる。しかし、それが精一杯だろう。

撮り直しもできず、加工もできない。スマホに保存した画像も投稿できない。撮影時に自撮りの顔も確認できない。投稿するまで、友達の投稿を見ることができない。制限の先にあるのは、まさにリアルの共有だ。

もし2分以内に撮影できなかった場合でも、投稿はできる。しかし、遅れた時間が投稿に記載される。プライバシーについては、公開範囲を親しい人だけに絞ることで守れる。

本当のリア充でなければ「映える」写真は投稿できないが、BeRealは人気上昇中だ。アメリカの調査会社「data.ai」によると、BeRealのダウンロード数は1000万以上(2022年5月時点)で、2021年第4四半期から390%も増加している。ダウンロードが多い地域は欧米で、主にZ世代が使っている。

筆者も使ってみているものの、通知が来るときは仕事中や就寝前など、とても人に見せられる状態ではないことが多く、かなり厳しいアプリだと感じている。しかし、このゲーム性と偶発的なリアルの面白さがZ世代を惹きつけているのだろう。

他撮りしか載らない「Poparazzi」

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パパラッチをもじった「Poparazzi(ポパラッチ)」
https://www.poparazzi.xyz/

Poparazziは、「アンチセルフィ」をコンセプトに作られたSNSだ。たっぷりと加工をした自撮りは載せられない。友人が撮影した「他撮り」だけが自分のプロフィールに掲載される。

その仕組みを説明しよう。例えば、友人と写真を撮ったとする。その画像をPoparazziに投稿したいとき、自分のアカウントから自分のプロフィールには投稿できない。自分ができることは、友人のアカウントをタグ付けして、友人のプロフィールに載せることだ。自分のアカウント名はその投稿に載る。

つまり、自分のプロフィールには、自分ではない誰かが撮った写真がずらりと並ぶことになる。もしリアルな友人がいなければ、そしてその友人が投稿してくれなければ、プロフィールには何も載らないのだ。

そしてこれまでのSNSのように、アプリ内でフォロワーを増やしたとしても、実際に会わなければ自分の画像が投稿されることはない。

このアプリもZ世代に人気だ。リリースから約1年後の2022年6月1日にはダウンロード数が500万回を超え、共有された画像や動画は1億枚以上。アクティブユーザーの95%が21歳未満と、ほとんどが10代だと発表されている。

10代は学校や部活、バイトなど、誰かと一緒にいることが多いため、お互いを撮影して投稿することは難しくない。しかし、相手に好意を持たれていなければ、投稿まで至らないだろう。これもまた、リア充度が試されるアプリだ。

まるで使い捨てカメラのSNS「Dispo」

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エモい写真が撮れる「Dispo(ディスポ)」
https://dispo.fun/

Dispoは、写真を共有するSNSだ。ただし「使い捨てカメラ(disposable camera)」に現像する時間が必要なように、翌朝9時まで撮影した写真を見ることはできない。シャッターボタンを押したら待つという不自由さが若者にウケて、欧米を中心に人気アプリとなった。

Dispoを発案したデビッド・ドブリック氏は、スマホで撮影した写真をすぐに確認、時間を掛けて加工してから投稿するといった作業から、自分たちの生活を取り戻すというコンセプトでこのアプリを設計した。

しかし、2021年2月の正式リリース後、デビッド・ドブリック氏が自身のスキャンダルにより辞任したこともあり、アプリの方向性が転換している。

2022年3月には、翌朝9時まで待たなくてもすぐに写真を確認できる機能が登場した。すぐに写真を見たいというユーザーも多かったのだろう。

しかし、Dispoの魅力である「エモさ」は引き継がれている。Dispoで撮影した写真は、どこか懐かしいようなエフェクトがかかる。ローンチ後、エフェクトにあたる「カメラ」が定期的に更新されるようになり、複数のカメラから好きなものを選んで撮影できるようになっている。どのカメラも、レトロな加工で味わい深い写真が撮れる。

「翌朝9時まで」のコンセプトが撤廃されたのは残念だが、Dispoで撮影する若者はおそらくさっさと撮影を終え、リアルを楽しんでいるはずだ。なぜなら、アプリの小さなファインダーでは画角を細かく調整してもよくわからず、とりあえずシャッターを何回も押して良さそうならシェアするからだ。アプリで撮影した写真しか投稿できないため、その場で加工に燃えることはない。

Dispoもタグ付け機能を追加している。背面カメラしかないため、友達を撮影してタグ付けする機会が増えそうだ。

リアルがネットでの映えになる

Z世代に人気が上昇しているSNSを3つ紹介したが、どれも「リアルの重視」がコンセプトとなっている。SNSの虚構に疲れた若者にサービスがうまくハマった形だ。

さらに、若者がリアルの良さを実感した時期だったことも注目される理由だろう。コロナ禍で、人々は対面することが難しくなった。オンラインでは交流できたが、それでは物足りなさを感じるばかり。対面コミュニケーションの良さを改めて感じ、リアルで充実することの重要さを見つめ直したのだ。

どのアプリでも、公開投稿には欧米の若者たちが楽しそうにしている姿が映っている。リアルが充実していなければ撮影できない写真だ。かえってつらくなる若者もいるかもしれないが、その場合は盛れるサービスを使えばよい。ネットで完結するSNSではなく、リアルの世界ががっちり融合するSNSが生まれたのだ。

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ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー
鈴木 朋子

SNSが専門でtoB、toCともに取材し、最新トレンドを常に追っている。身近なITに関する解説記事も執筆しており、初心者がつまずきやすいポイントをやさしく解説することに定評がある。スマホ安全アドバイザーとして、安全なIT活用をサポートする記事執筆や講演も行う。近著は「親が知らない子どものスマホ」(日経BP)、「親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)。著書は監修を含め、20冊を越える。
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