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Column

Z世代のアドベンチャー(冒険者)たちに捧ぐ

山田Gの「大人の社会見学」vol.4:高地ボクシングトレーニング

author: 山田ゴメスdate: 2022/07/21

還暦間際のベテランライターが老体に鞭打ちながらも「考えるな! 感じろ!」と自身を奮い立たせ、あらゆるジャンルの「新しい経験」にチャレンジ! そこで得た感動と成長を、Z世代の『Beyond』読者諸君にもお伝えすることを旨とする体験ルポ型の本連載──第4回目は「高地ボクシングトレーニング」であります!!

中高年世代にとって大切なのは「お金・友だち・筋肉」!(島田紳助)

「基礎体力の強化」は、より大柄な創造に向かうためには欠くことのできないものごとのひとつです。(村上春樹)

わたしはこれまで「テニスに必要な筋肉はテニスで、野球に必要な筋肉は野球でつける」といった、大雑把に申せばイチロー的な考えの持ち主であった。したがって、この60年間──還暦を迎える今年2022年初頭まで、一度もスポーツジムには足を運んだことがなかった。

しかし、去年あたりから急激な肉体の老化を多くの局面で痛感するようになり、筋力を「鍛える」のではなく「維持する」ために、忌み嫌っていた「ジム通い」をやむなく解禁し、この4月から週に1~2回のペースで都内某区の健康センター内にあるスポーツジムに通っている。

で、いざ通いはじめるとコイツがなかなかに楽しくてたまらない。マイルス・デイビスのアグレシブで難解なエレクトリック期のアルバムだとかルドルフ・セルキンによるモーツアルトのピアノコンチェルトだとかヤン・ガルバレクの神々しく透き通ったサックス演奏だとかジャンク・フジヤマのベスト盤だとか……の自宅で“しっかり”と聴くのはつい避けてしまいがちだった音源を、スマートフォンからBluetoothでコードレスのイヤフォンへと飛ばす。ボリュームはMAXにして、ランニングマシンやらレッグ・ショルダー・チェスト……諸々のプレスマシンやらを黙々とこなす。すると、なんだか自分がものすごくイノベイティブな営みをしているような気分になり、そのストイックな反復運動がある瞬間、カチッという音を脳内で鳴らし「苦行」を通り越して「恍惚」へとスイッチする……。

また、飽き性である反面、凝り性でもあるわたしとしては、いったんハマってしまったら欲張りでマゾヒスティックな性分が抑えられず、「もっともっと…」と身体をいじめたくなってくる。こうやって人は「筋トレ」に魅せられていくのだろう。

そんななか、わたしの友人であり、2011年にはミス・インターナショナル日本代表に選ばれ、現在は「トーナルビューティデザイナー」の肩書きを持つ村山和実ちゃんから、

「一度、私が経営するジムで開催している『高地ボクシングトレーニング』の体験をしに来ませんか?」

……とのお誘いが! 「高地」「ボクシング」「トレーニング」……と、いかにも筋肉に無駄のない最短距離的な負荷を与えてくれそうな響きのあるワードがてんこ盛りではないか!! 毎度のごとく「行く行く~!」と二つ返事で快諾した。

村山和実ちゃん。2011年ミスインターナショナル日本代表で、トータルビューティーデザイナーとして活躍している。マラソンやトライアスロンにもチャレンジするアクティブな美女だ!

都会でもできる「高地トレーニング」って?

JR横浜駅の西口から徒歩約5分の場所にある「Green Terrace」は、「首都圏で高地状態を体験できるトレーニングスタジオ」をキャッチコピーとするスポーツジム──この日は「オレも行きたいっす!」と、猛然と食いついてきた草野球のチームメート・Fクンも同行。40歳男子(※職業は某赤文字系女性誌の編集者)で、身長も2メートル弱(※正確には187センチ)あって、なのに顔の大きさはわたしの3分の2くらいしかない、生まれつきの骨格にも恵まれた、「スペックお化け」との異名をとるイケメンである。

Fクン(※向かって左)。野球にサーフィンにフットサルに……キックボクシングにいたってはアマチュア日本一の座に輝いたこともある、「アンタいつ仕事しとんねん!」とツッコみたくなるほどのスポーツフェチ。ナチュールワインを好んで嗜むグルメでもある

受付に到着したら、いきなり村山和実ちゃんが全身ピタピタのトレーニングウェア姿で、朗らかに出迎えてくれる。

「こんにちは~!ご無沙汰してます~!!」

彼女もまた、均整のとれた長い四肢がしなやかな筋肉とヘルシーな美肌にシールドされたミラクルボディの持ち主で、わたしと同じ種類の人間だとは思えない。こういうヒトたちに囲まれていると、かの有名なモノクロ写真「トレンチコートを着た諜報員風の男二人に捕獲された宇宙人」のような気分になってくる。ボクだって、年齢のわりにはそこそこ若々しい体型をキープしてるつもりなんですけどね~。

イラストレーターとしても活躍する山田G作画。山田Gのイラストアカウントもチェックしてみてください!@gome_sketch_note

話がネガティブな方向にそれてしまった。本題に戻ろう。

「高地トレーニング」とは──本来はマラソン選手などが、標高が高く気圧が低い「低圧低酸素環境」の「高地」に一定期間滞在して行う、体内の酸素運搬ほかの能力改善を目的とするトレーニングのことである。

「Green Terrace」が有する横浜市内最大規模の「低酸素スタジオ」は、空気中の酸素・窒素を取り除くようコントロールし、標高2500m、富士山だと5合目に該当する環境を再現しているらしい。つまり、「短時間で効率の良いトレーニング」ができるわけで、

  • スポーツパフォーマンスの向上
  • 代謝・免疫力のアップ
  • ダイエット
  • 細胞を鍛えることによる内側からの健康な体づくり

……etc.と、平地では得られないさまざまな効果が期待できるという。

スポーツはせいぜい草野球を週2~3回、テニスは月イチ程度しかやっていない(わりとやってるw?)、しかもジム歴たった3ヶ月のわたしなんかがいきなり挑むには、いささかハードル高すぎなのでは……と、若干の不安もあったが、気圧を表すhPa(ヘクトパスカル)は平地とほぼ変わらず、酸素濃度だけが低い「常圧低酸素室」なので、具合が悪くなったり、耳がキーンと鳴ったりするようなこともない、まさに運動初心者からトップアスリートまでが気軽に利用できる、良いことづくめのトレーニングなのだ!

元世界チャンプが特別トレーナーに!

「Green Terrace」には「低酸素スタジオ」が2室あって、一室にはランニングマシーン6台とバイクマシン3台が設置されており、1枠30分。もう一室ではボクシング・ヨガ・ピラティス・TRX……などのグループレッスンが、1枠35分で定期的に開催される。

今回、わたしとFクンがトライするのは「ボクシング」のグループレッスンで、「35分って短くね?」みたいな軽口をFクンと小声でささやき合っていると、和実ちゃんから

「そーいうこと言ってたら、あとで後悔することになりますよ」

……と、笑顔で嗜(たしな)められる。そして、その35分後……我々は彼女のこの“忠告”を、全身全霊をもって痛感することになる。

「そーいうこと言ってたら、あとで後悔することになりますよ」な、村山和実ちゃん

このたびのレッスンはなんと!「Green Terrace」が入居している同じビル内にある「大橋ボクシングジム」から“特別トレーナー”として招かれた、ミニマム級・フライ級・ライトフライ級の3階級を制覇した伝説の元世界チャンピオン・八重樫東(やえがし・あきら)さん!! 

大橋ジムに所属する選手や練習生も、この「低酸素スタジオ」を頻繁に利用するらしく、

元ミニマム級・フライ級・ライトフライ級世界チャンピオンの八重樫東さん!

「ボクシングにかぎらずトレーニングっていうのは、長くやればやるほどケガのリスクが増えてくるので、低酸素状態で全身に負荷をかけ、短時間で効率良くトレーニングをこなすことは、結果としてケガの防止にもつながるのです」

……と、八重樫さんは「高地ボクシングトレーニング」のメリットを訥々と語る。

レッスン開始! 最初はシャドーボクシングから。

なにを隠そう、わたしは30代半ばごろに3年ほどボクシングジムに通っていたことがあり、スパーリング中も「お! けっこうスジがいいね~。今度アマチュア大会に出てみる?」とホメられたこともある一応の“経験者”ゆえ、正直ちょっとだけ自信はなくもなかった。

が、八重樫さんからは「手打ちだから、もっと肩を入れて拳を振り抜くように!」と、あっさり矯正される。

なるほど、あの「スジがいいね~」は“練習生離れ”を防ぐための社交辞令でしかなかったのか……? 八重樫さんが見せてくれたお手本の根太いパンチは、当たれば地球の果てまで吹っ飛んでいきそうだ。キックボクシング元アマチュア日本一のFクンは「指導の必要なし」と判断されたのか、一人で鏡に向かい真剣な表情でシャドーに集中している。

まだ5分も経っていないのに息が荒くなってきた。早くも「もしかすると自分はとんでもないトレーニングに無謀にも手を出してしまったのではないか…」という、後悔の念がよぎりはじめる。

2セットのミット打ちでTKO状態に…

次はいよいよ“メインイベント”のミット打ち。

1ラウンド2分を2セット……とのことだが、すでに「短くね?」なんて軽口を叩ける余裕は微塵たりとも残っていない。「一刻も早く“ノルマ”を終えて、この低酸素な空間から退出したい!」との想いばかりがつのり、生ビールだとかスーパー銭湯だとかフィンランドサウナだとかの“絵”が止めどなく脳内に浮かんでくる。

体育座りでスタジオの隅に佇(たたず)みながら、額にうっすらと汗を浮かべ無言で呼吸を整えるFクンは一体なにを想っているのだろう? まさか「早くオレの順番来ないかな~」とでも胸をときめかせているのではなかろうか。まったくもって忌々しい男だ。

わたしのミット打ちは、もはや「ミット打ち」と呼べるシロモノではなく「ミット撫で」でしかなかった。ゴングが鳴ったはじめの数発こそ「スパンスパン!」と小気味良い音を響かせていたが、あくまでこれは八重樫さんがわたしのパンチの軌道を予測して、ミットの中心を「当てにきてくれた」からにほかならない。

次第に八重樫さんのフォローをもってしてもミット音が「パスンパスン」へと変わり、やがて“無音”になっていく……。

2ラウンド目にいたっては、しょっぱなからかつてのミッキー・ロークばりの「猫パンチ」状態で、両腕は萎え、手首は痛み、まるでぜん息患者のようにビューヒューと喉を詰まらせながらも、どうにか2分を終える。後半1分はマジで頭が真っ白になった……。

さすがのFクンも2ラウンドを終え、「やっぱ3ラウンド目に行くのは厳しいっすよね…」と、息を切らしつつ、でも爽やかな笑顔はキープしたままでつぶやいている。

完全グロッキー状態!
へばっても爽やか!

「ボクシングは無酸素運動である筋トレと、ランニングと同様の有酸素運動を同時にこなし、さらには両手両足もバランスよく動かせるので、ハードではありますけど、トレーニング効果としては理想的なスポーツなんですよ。3回ほど通っていただければ、キツさにも慣れてきますから」

……と、八重樫さん。

「体質自体を健康的に改善するには短時間じゃダメ。続けることが大事なんです」

……と、和実ちゃんもアドバイスする。が、ごめんなさい……続けるの……たぶん無理です……。

しかし! トレーニング終了後にシャワーを浴びて、鏡を見てみたら……どことなく自分の肉体がマッチョになっている……っぽい感じがした。こんな贔屓目チックな“幻想”を糧にして「また頑張って来よっかな…」と、人は「筋トレ」へと魅せられていくのかもしれない。

帰り、横浜駅前にあった居酒屋でFクンと飲んだ生ビールは本当に美味かった! けれど、年齢差だけでは片付けられない圧倒的なフィジカルの違いをまざまざと見せつけられ、「コイツとだけは二度とここに来たくない…」とも思った。

中央の女性は、たまたまスタジオに来ていた友人のヤエさま

かつてのミッキー・ロークばりの「猫パンチ」:映画『レスラー』で2009年英国アカデミー賞主演男優賞を受賞し、見事復活(?)を果たしたミッキー・ロークだが、1991年に俳優からプロボクサーに転身している。翌年、両国国技館で行われた、ダリル・ミラーとの対戦で、猫パンチ一閃。ダリル・ミラーにKO勝利。ゴメス世代にとって「猫パンチ」とは、ミッキー・ロークの(八百長試合として)記憶されている。当時の映像はYouTubeでも見ることができる。

村山 和実(むらやま・なごみ)
2011年「ミスインターナショナル」の日本代表に輝く。モデルとしてさまざまな誌面を飾り、2015年「KOBE COLLECTION2015 AUTUMN/WINTER」にランウェイモデルとして出演。ウォーキングスタイリストの資格を所持し、ウォーキングトレーナーとしても活躍中。女性の美を多方面でサポートしていく「トータルビューティーデザイナー」でもあり、ウォーキングだけでなく「美しく見える立ち方」=「姿勢改善」「話し方」「メイク」などのレッスンから「カラーコーディネート」まで幅広く提案している。趣味として、マラソンやトライアスロンにもチャレンジしアクティブな日常を送っている。

Green Terrace

住所:神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町1-7-12 6F
アクセス:JR横浜駅西口 徒歩5分
電話:045-620-7009
営業:月〜金 10:00-22:00/土・日・祝 9:00-18:00
定休:第2・第4金曜日、夏季・年末年始
申し込みフォームURL:https://hypoxia-greenterrace.com/join/



author

文筆家・イラストレーター
山田ゴメス

1962年大阪府生まれ。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するコラムニスト兼ライター&イラストレーター。『麗羅』(漫画原作・作画:三山のぼる/集英社)、『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版)、『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(菅原道仁共著/ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。特に身体を張った体験取材モノはメディアからも高い評価を得ている。2019年、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)カウンセラー資格取得。2020年、温泉マイスター取得。
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