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ソニーの360度立体音響スピーカー

全身を音に包まれる! 没入体験型オーディオを聴いた

author: 山本 敦date: 2021/04/29

ソニー独自の立体音楽体験「360 Reality Audio(サンロクマル リアリティ オーディオ)」に対応する、ソニー初のワイヤレススピーカーが春の訪れとともに発売を迎えます。今回はソニーの新製品をレポートしながら“没入体験型オーディオ”の醍醐味に迫りたいと思います。

ソニーが提案する「音に包まれる音楽体験」

360 Reality Audio(以下:360 RA)は、2019年1月にアメリカで開催されたエレクトロニクスショーでソニーが初めて発表した立体音響技術です。

筆者が360 RAに注目しているポイントは大きく2つあります。

ひとつは映画館でも体験できない“足もと”にまで広がる360度立体音響を実現する希な技術であること。そしてもうひとつはその360度音楽体験を、家庭用のスピーカーやヘッドホンで手軽に楽しめることです。

筆者は360 RAが発表されたエレクトロニクスショーを取材した時に、初めて会場でそのサウンドを試聴しました。とにかく迫力あふれる音を耳だけで聴くのではなく、全身を包まれながら体で感じるような没入感がすごい!ソニーは録音による音楽の解像度をCDを超える音質にまで高める「ハイレゾ」の技術を推し進めているメーカーでもあります。音楽の密度の濃さを耳でじっくりと味わうハイレゾに対して、360 RAは音楽のプールに飛び込んで身を委ねながらフワフワと浮かぶような、あるいは大空を駆け巡るみたいに全身で感じる「新時代のエンターテインメント」になると筆者は確信しています。

2019年にアメリカで開催されたエレクトロニクスショーでヴェールを脱いだ「360 Reality Audio」に大きな注目が集まりました。

360体験に必要な環境とは

360 RAを体験するためには専用のソフトウェアを使って制作された楽曲のほか、360 RAの音楽データの再生に必要なデコーダーを搭載するスピーカーなどのハードウェア、またはモバイルアプリの組み合わせが求められます。

音楽コンテンツの制作段階では360度全天球に広がる仮想音響空間の中に、最大24個の音源を「オブジェクト」として配置できます。音源がリスナーの前後、足下から鳴り響いたり、前後左右方向へダイナミックに移動することによって360 RAならではと言える、音楽の世界に入り込んでしまうような没入感が得られるのです。

360 Reality Audio対応のコンテンツを制作するためのプロフェッショナル向けツール「Audio Creative Suite」も2021年4月にダウンロード販売を開始。サウンドエンジニアが対応コンテンツを作りやすい環境がますます充実します。

360 RAに対応する音楽配信は、2019年の発表後にまず欧米からサービスが開始されました。続いて日本では同年の冬に、アマゾンの音楽配信サービス「Amazon Music HD」が360 RA対応の楽曲を配信を開始。現在もスマートスピーカーの「Amazon Echo Studio」を使って聴ける環境が整っています。

最新のソニー360対応スピーカーを聴いた

そして4月16日には、いよいよソニーが360 RAの没入感あふれるサウンドをわが家でも満喫できるワイヤレススピーカーを2機種発売します。今回、筆者はソニーの試聴室で新製品を試聴する機会を得ました。

鼓の形をしているワイヤレススピーカーが上位モデルの「SRS-RA5000」です。それぞれの向きを変えて配置する計7基のスピーカーユニットで360 RAの技術による立体音響空間を再現します。良質なオーディオシステムで音楽を聴いても広がり感の豊かな音楽を味わうことは可能ですが、360 RAの場合はまるで高いところから天井を突き抜けて“音が降ってくる”みたいに、上下方向にも移動する音のインパクトが際立っています。RA5000は音のつながりがとても良く、複数の音のオブジェクトがつぎはぎ状にならずに、リスナーの360度全周囲をやわらかく包み込む質感の滑らかさにも引き込まれました。

上位モデルの「SRS-RA5000」。ソニーストアの販売価格は66,000円(税込)

RA5000よりも一回りほどコンパクトながら迫力に満ちた没入体験を引き出せるSRS-RA3000も実に良質な360 RA対応スピーカーでした。市場想定売価ががRA5000のおよそ半分ほどになりそうなので、「360 RA入門」に最適なソニーの高音質スピーカーとしてオススメします。どちらの機種も360 RA対応の音源以外にも、幅広い音楽コンテンツが楽しめるWi-Fi/Bluetooth対応のワイヤレススピーカーです。Googleアシスタント、またはAmazon Alexaをボイスアシスタントに設定すると音声による操作も可能です。

エントリーモデルの「SRS-RA3000」。ソニーストアの販売価格は36,300円(税込)

注目の360対応・邦楽作品が続々登場

ソニーが2機種の360 RA対応スピーカーを発売するタイミングに頃合いを合わせて、これまでは洋楽が中心だった360 RA対応の音楽コンテンツにも数百曲の邦楽作品が追加されます。中にはこの春にサブスク解禁を迎えた大滝詠一のアルバム「A LONG VACATION」のほか、森高千里のライブアルバム「この街 TOUR 2019」、アニメ・鬼滅の刃で人気キャラの竈門禰󠄀豆子(かまど ねづこ)を演じた声優・鬼頭明里の初ライブツアー盤「Colorful Closet」など、360 RAと相性抜群の注目作品が目白押し。まるでアーティストが目の前に歌をうたい、楽器を弾いてくれているみたいに生々しいコンサートホール体験が、わが家にいながら味わえる贅沢に期待を膨らませてしまいます。

でも、いくら360 RAがスゴいからと言ってもすぐに専用スピーカーは買えないし、買ったところでわが家で大きな音は鳴らせないという方が大半だと思います。ご安心を。360 RAはスマホと一般的なステレオヘッドホン・イヤホンの組み合わせでも楽しめるからです。

一般的なヘッドホン・イヤホン、360 Reality Audioに対応する音楽アプリとの組み合わせでも立体音楽体験が味わえます。

モバイル環境で360 RAを楽しむためには、360 RA対応の音楽コンテンツを配信するアプリが必要です。今後は無料で聴けるサービスと有料のサブスクリプション契約が必要になるものが様々に増えてくるものと思いますが、第1弾として先行するのはDeezerとNugs.netです。配信される360 RA対応作品はDeezerが邦楽+洋楽、Nugs.netは洋楽オンリーです。Amazon Music HDもまたモバイル対応に向けた準備を進めているとのこと。

ソニーの技術提供を受けて、360 RA対応のコンテンツ制作に対応するスタジオが国内外に勢いよく増えています。360 RAは当初は音楽コンテンツからスタートしますが、映像付きのミュージックビデオ、立体サウンドを聴いて楽しむオーディオドラマにも可能性を拡げつつあります。その先には映画やドラマ、ゲームを360度全方向から包まれる音と一緒に楽しめるエキサイティングな体験もきっと見えてくることでしょう。それどころか360 RAは音楽再生の枠を超えて、音で楽しむバーチャル旅行や、何人もの同僚と向かい合いながら熱い議論を交わすリモート音声会議のような、まだ見ぬ体験をいつの日にか叶えてくれるかもしれません。

取材協力:ソニー

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スマートエレクトロニクス・ライター
山本 敦

オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はオーディオ・ビジュアルからIoT、ウェアラブルまでスマートエレクトロニクスを幅広くカバー。ヘッドホン・イヤホンは毎年300を超える新製品に体当たり中。国内・海外スタートアップの製品やサービスを多く取材、開発者の声を聞くインタビューなどもしています。
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