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ニコライ・バーグマン×奈良祐希「JAPANDI-NA」

陶芸と建築の二刀流!奈良祐希が創る新時代の土器

author: 岩崎かおりdate: 2022/01/07

銀行勤務の経験とアートの知見を生かして、“経済と芸術文化”が結びついた社会を目指す株式会社「THE ART」を設立した岩崎かおりさん。自身も現代美術のコレクターである岩崎さんが着目する作家や展覧会をセレクトし、Beyond世代のアートリテラシーアップに役立つ情報を紹介!

今回のテーマは350余年の歴史を誇る大樋焼(おおひやき)の窯元に生まれ、陶芸家・建築家として注目される奈良祐希さん。フラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんとの最新セッション展も話題だ。

岩崎さんが、奈良祐希さんの作品に着目されたきっかけを教えてください。

岩崎かおりさん(※以下、岩崎):京都のギャラリーで奈良さんの「Bone Flower」を拝見したのが始まりですが、大樋焼(※1)大樋長左衛門窯の伝統家系の若き作家で、建築も学ばれた方ということにも興味を持ちました。

私はその人にしか作れない、何かのモノマネではないものに引かれるのですが、彼の作品は建築を学ばれたからこそのデザイン。第一印象は、陶芸でこの形ができるなんて! という驚き。3D CADで設計されているのですが、作陶は焼く工程で縮みますから、この鋭い完成度はすごいと思いました。2018年のことで奈良さんが20代のときの作品です。

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上部が広がる縄文土器と丸みのある弥生土器モチーフがありますが、縄文のほうを購入されたそうですね。ご自宅で愛でる醍醐味とは?

岩崎:縄文土器モチーフで力強い印象です。3D設計された360度楽しめる作りなのでその日の天候や光の当たり方でも違って見えます。色は白と影の黒の世界で、質感は写真ではわからない独特の艶があり、温かみも感じます。次は丸みのある弥生土器型を購入したいです。

作品を購入した当時、勤務先の銀行で岩崎さんが立ち上げた有志の「アートクラブ」に若手作家の一人として奈良さんをご招待されたそうですね。反応はいかがでしたか?

岩崎:作品とともにご本人の製作へのお話に皆で感動しました。同僚社員は見たことのない作品に驚き、理数系の行員たちは構築的なデザインに興味を持ったようです。また顧客や一般の方に向けた日本橋支店内でのアート展示「アートブランチ」にも参加いただいたのですが、反響が大きくお客様とのコミュニケーション構築ができ、コレクターになられた方もいます。

コラボレーションで見えた新しい世界

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今回のニコライ・バーグマンさんとのセッション展の感想をお聞かせください。

岩崎:奈良さんの作品は花を生けると違う驚きがあって、植物に彩られた建築のようです。クリエイター同士が刺激しあって新たな作品に変化していく。そんな過程を見るのが大好きなんですが、今回も革新的で日本の伝統文化も重んじるニコライさんとのコラボで新しい世界が見えました。

ニコライさんの「フラワーボックス」にちなんで、禅の○△□を意識した白い花器とカラフルな花の対比も面白く、飾り方の発見もあり、明るい気分に。会場の店舗では花器とお花も一緒に購入できますし、自分で選んだお花も楽しめる。そんな幸せなことが世の中に浸透していくといいなと思いました。

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日本には陶芸家が数多くいるなか、近年奈良さんはジャンルを超え注目されています。多くの同業者から抜きん出る、伝統を打破して成功する方は何が違うと思いますか?

岩崎:お会いするとフレンドリーな方ですが、見えないところで相当な努力をされていると推察します。継承の使命を担う陶芸から距離を置いた時期もあったそうですが、建築を学んだ大学院では主席で卒業、陶磁器の研究所も主席で修了されています。

「Bone flower」の制作では、板状のパーツを一片ずつ成形し焼く作業の連続なのですが、途中で割れると作り直す根気のいる作業です。

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また、フットワークが軽く、社会と積極的に接することで多くの人たちと関わり、その要素を取り入れている。そんなところに魅力を感じています。

海外でも人気が高まりそうですが、世界市場で需要が高まると価格が上昇することも。購入するなら今のうちでしょうか。

岩崎:若手作家は長いスパンで購入する楽しみもありますので、いつでもいいと思いますが、今であれば価格的にも購入しやすく数十万円程度から購入可能です。

アートを日常に取り入れ、豊かな日本社会に

文化庁も国内での美術収集の拡充に取り組んでいくそうですが、日本は美術品の相続税など課税によって貴重な作品や人財が海外へ流出してきたとの指摘もあります。

岩崎:確かにアーティストやコレクターが日本と比べて美術品への課税が厳しくない国に拠点を持たれる傾向もあります。ただ、日本も税制改革を検討しているようで、近年の改正では法人として美術品等の取得が100万円未満なら経費にできるようになりました(※2)。企業のコレクションとしてアートも楽しみながら節税にもなりますからお勧めです。

―では民間でアート市場の発展のためにできることはどんなことでしょうか?

岩崎:日本はアート市場が海外と比べてまだ小さいので、少し大きくなるだけで違ってくると思います。例えばお金の使い道を考えている方がアートの価値に気づいて購入すると、アーティストが活動を続けるための収入にもつながります。

それにアートコレクションは楽しいですし、アートが家にある暮らしはいいものです。より多くの方に早くその楽しさに気づいてほしいです。最初の一歩は若手作家なら手頃な価格から購入できます。奈良さんの作品ですとインテリアにもなるので、生活に取り入れやすいと思いますよ。

※1:江戸時代に加賀藩主が京より千家茶道を取り入れた際、楽家に楽焼(ろくろを使わず手とヘラで作られる)の技術を学んだ陶工師、長左衛門が加賀で楽焼唯一の脇窯を開いたのが発祥。飴釉を使った独特の発色を生み出すなど大樋焼の窯元として発展を遂げ現在に至る。

※2:法人税基本通達の改正により2015年1月1日以後に取得する100万円未満の美術品等(改正前は20万円)は原則として減価償却資産に該当。事業の用に供しているものなど諸条件あり。

構成・執筆/黒部涼子

ニコライ・バーグマン 

フラワーアーティスト。デンマーク出身。フラワーボックスアレンジメントを考案し大人気を博すなど、北欧と和を融合したフラワーデザインを発表し続け、ファッションやインテリアなど幅広い分野で活動。現在は国内外に13店舗のフラワー・ブティック、カフェを展開。2022年春に箱根・強羅に「NICOLAI BERGMANN HAKONE GARDENS」をオープン予定。www.nicolaibergmann.com

奈良祐希(なら・ゆうき)

陶芸家・建築家

1989年石川県金沢市生まれ。大樋焼十一代大樋⾧左衛門氏を父に持ち、祖父は十代目(現・大樋陶冶斎で文化勲章受章者)。東京藝術大学大学院(美術研究科建築専攻)首席卒業、多治見市陶磁器意匠研究所主席修了。陶芸家・建築家として活動し、金沢世界工芸トリエンナーレ審査員特別賞、「Under 35 Architects exhibition 2021」ファイナリストなど数々の賞を受賞。陶芸作品は根津美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館などに収蔵。http://yukinara.jp/

ニコライ・バーグマン × 奈良祐希

北欧と日本のDNAから生まれる「JAPANDI-NA(ジャパンディーエヌエー)」展覧会

フラワーアーティストのニコライ・バーグマンと陶芸家・建築家によるセッション展。奈良祐希のデビュー作である「Bone Flower」シリーズの新作をはじめ、ニコライ・バーグマンのフラワーボックスにインスパイアされた「フラワーボックス”The Universe“」、二人の共作アートなど新作を披露!

会場: Nicolai Bergmann Flowers & Design Flagship Store
東京都港区南青山5-7-2 2F

期間:12月15日(水)〜2022年1月14日(金)(12月29日〜1月4日休館)
11:00〜18:00

主催:Nicolai Bergmann K.K./UENO JAPAN株式会社

イベントに関するお問い合わせ先:
ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン
Tel:03-5464-0716
E-mail:info@nicolaibergmann.com

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株式会社THE ART代表取締役社長
岩崎かおり

愛媛県生まれ。アート鑑賞と旅行が趣味の両親のもとで育ち、幼少のころから国内外のアート鑑賞が習慣に。大学院修士課程ではモノづくりの経営学を学ぶ。海外のアートフェアやギャラリーに通い続け、世界のアート関係者とのつながりを通じ、日本と海外のアート市場の格差や、アートがもっと活性化する余地が大きい国であることを痛感。2018年、当時勤務していた大手国内銀行で、有志によるアートクラブを発足。翌2019年、大手国内銀行にてアート企画推進を立ち上げ、日本橋支店の店内に現代アート作品を展示する「アートブランチ」プロジェクトを企画・リリース。国内金融初の試みは、数多くのメディアでも取り上げられた。アートバーゼルで名和晃平氏のPixCell作品を購入して以来、アートコレクションの魅力を知り、アートコレクターとしての顔ももつ。自身の現在のコレクション作品数は約250点。
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