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小山龍介が次世代に送るライフハック

インスタ時代に個性を表現するGR iiixの革新

author: 小山龍介date: 2021/10/26

GRといえば、高級コンパクトカメラとして1996年の登場以来、確固たるポジションを保ち続けてきた。写真作家からも絶大な信頼を寄せられ、たとえば森山大道がGRによるエネルギッシュなスナップ写真を発表した。「スナップシューター」といえばGRという、超強力なブランドを確立していた。が、そのGRに思わぬライバルが登場した。それがスマホだった。

スマホと丸かぶりしたGR

コンパクトカメラ売上の壊滅的な減少は、もうひとえに、スマホの登場が原因と言っていいだろう。高級デジカメはしばらく、その画質の良さで差別化を図っていたものの、スマホカメラの機能向上に伴って、すっかりその勢いに飲み込まれつつあった。

問題は、焦点距離だった。GRの代名詞である28mmの高画質レンズは、スマホのカメラと丸かぶりだった。ちょうど視界がそのまますっぽり取り込める28mm広角レンズは、スマホの自撮りの画角としてもちょうどよかった。僕もGRデジタルを所有していたけれども、その画角をスマホで対応するようになってから、すっかりご無沙汰していた。

この28mm、たしかに何も考えずに身体感覚のまま、ときには背面液晶も見ないままノーファインダーで即興撮影するのにぴったりくる。道路すれすれに見上げて撮影すれば、パースがばっちり効いた建物が迫ってくる。夕焼け空を写せば、マジックアワーに繰り広げられる美しいグラデーションを捉えることもできる。35mmよりもちょっと広い感じは、街撮りにもいい。この柔軟性が、そのままスマホの用途にもぴったり重なって、結果、画角が丸かぶりしてしまったのである。

iPhoneで撮影した写真。風景を広角で捉えるとき、コンデジとの違いがわからないくらいよく撮れる。ただ、派手な色合いがスマホっぽい。
こちらも実はiPhoneで撮影したもの。色味をちょっと調整すると、本当に見分けがつかない。

28mmのソーシャルディスタンス

個人的には、28mmはちょっと苦手である。一度購入したLEICA Q2も28mmの単焦点レンズで、50mmにするとせっかくの4700万画素が1500万画素までクロップされてしまう。フルサイズセンサーを無駄にするくらいなら、最初から50mmがいい。LEICA M10と50mmのSumicronに買い替えたくらいだ。

28mmの難しさは、その特徴である「視界全体が写る」というところにある。視界全体が映り込むので、視界の中の何かを切り取ることが難しい。切り取ろうとすると、ぐぐっと相当寄らないといけない。かなりの距離まで対象に詰め寄ることになる。これは、アフターコロナのソーシャルディスタンス的にも、きつい。

スマホで食事の写真が多いのは、食事がバえるということ以前に、そこまで寄り込んでも対象から文句がでないからである。ペット写真を撮るのにデジカメを新調する人が多いのは、寄らずに遠目から、ときには気づかれないままに自然な表情を撮れるからである。対象を意識的に切り取ろうとするとき、28mmで撮るときの距離感は近すぎるのだ。

GRの40mmは意識と無意識の間を捉える

GRの代名詞の28mm。もうGRは28mm以外にないと思いこんでいたところに、何の予告もないところに急に登場したのがこの40mm。GR iiixのxはExtension(拡張)のxであり、GRのポテンシャルの、まさに拡張だった。発売日に予約して手に入れた本機は、目からウロコだった。

40mmの写真には、28mmでは表現されない、自分の個性がどうにもにじみ出てくる。何に注目して何を撮ろうとしているのが明確である一方で、その周辺も無意識のうちに写り込んでくる。スマホでも望遠レンズを搭載するものが増えてきたが、それで同じものが撮れるかというと、撮れそうにない。

スマホで撮る写真は、どうも意識が強すぎるような気がする。何なら加工することが前提となっているスマホカメラは、どうもエゴが全面に出過ぎる。エモいを求めるエゴい感じが出てしまう。それがGRになったとたん、「写り込んだらしょうがない」という諦念のなかで、肩の力の抜けた写真が撮れてしまう。というか、片手で持って、片手でシャッターを切るGRは、覚悟を決めてシャッターを切るような大仰な所作は似合わない。

どうも、GRの40mmは、他のカメラの40mmとも違う。意識と無意識の間にある焦点距離のような気がする。

取り壊される予定の大学病院の前を横切る自転車。GR iiixでの撮影。スマホを取り出して撮影するのでは間に合わないし、なんら特別な瞬間でもないが、GRなら撮ってみようと思うスナップである。

インスタ時代に個性を発揮するためのガジェット

このGR iiixの登場に対して、Visual Signitureというキーワードを取り上げたブログが、GRの公式サイトの掲載された。

Visual Signatureとは写真家のラルフ・ギブソンが提唱した概念である。その写真を見れば誰が撮影したのかすぐわかるような特徴のことである。まるでSignature(署名)のような個性である。こうした個性を表現するのに、GR iiixはぴったりではないかという指摘である。完全に同意だ。

写真に真剣に取り組むようになって3年が経つが、個人的に、いよいよSignatureになるような表現を模索するタイミングに来たように感じていた。その背中を押してくれるのがこのGR iiixだった。似たような写真が並ぶインスタの中で、キラリと光る個性を表現したい人にはぜひおすすめしたい、インスタ時代のスナップシューターだ。

古い建物の錆びついた金属に、小学1年生の息子の影が落ちた瞬間。GR iiixでの撮影。
体育館のガラスに反射したサッカー練習中の子供たち。GR iiixでの撮影。
ゴミ置き場も、現代アートのよう。GR iiixでの撮影。
東京は意外に川が多い。水道橋駅付近。GR iiixでの撮影。
空の反射と植物のように伸びるアート。GR iiixでの撮影。
花に囲まれた、大山阿夫利神社近くのポスト。GR iiixでの撮影。
大山阿夫利神社に向かうバスにて。GR iiixでの撮影。

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ライフハッカー
小山龍介

1975年福岡生まれ。株式会社ブルームコンセプト代表取締役。企業のイノベーション支援、文化財を活用した地域活性化などを専門にコンサルティングを行う。複数のプロジェクトをこなす中で生まれたテクニックを紹介する元祖ライフハッカー。著書『IDEA HACKS!』訳書『Business Model Generation』など多数。名古屋商科大学准教授。京都芸術大学非常勤講師。
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