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匠の技とAIが共存する、彦根工場のいま

手のひらから世界へ。パナソニック シェーバー70年の挑戦

author: Beyond magazine 編集部date: 2025/09/29

パナソニックが国産シェーバー1号機を製造したのは1955年。今年で70周年を迎えるシェーバー事業の拠点となるのが、滋賀県にある彦根工場だ。1962年の操業以来、新製品の開発で革新を生み、確かな品質で消費者に確かな安心を届けてきた。Beyond magazine編集部は、そんな彦根工場を訪ねて、シェーバー事業の根幹を取材した。

日本初の電動シェーバー、概念を変えた「パームイン」

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パナソニックの電動シェーバーの歴史は、当時の松下電工社長の号令で始まった。日本初の国産電気カミソリ「MS-10」は、安全カミソリが主流の時代に登場した画期的な製品で、発売から1年9か月で約15万台を販売した。

以降、モーターの改良や刃の耐久性向上を重ね、1990年代には業界初のリニアモーター駆動シェーバーを開発。2002年にはフラッグシップブランド「ラムダッシュ」が誕生し、進化を続けてきた。

そして2023年、従来のシェーバーデザインを覆す「パームイン」が登場。デザインと技術を起点に手のひらサイズを追求し、感度の高い若者から従来のラムダッシュユーザーまで幅広く支持を集める人気モデルとなった。2025年には70周年記念モデルも投入され、シェーバーは実用品を超えて、贈り物やファッション小物としても存在感を増している。

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試作品として最初に作られたパームイン

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シェーバー事業70周年記念モデル「パームイン」

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シェーバー事業70周年記念モデル「パームイン」の試作品の数々

受け継ぐ技術、更新する技術

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パナソニックのシェーバーが長く愛されてきた理由は、確かな技術と安心して使える品質の高さにあるだろう。70年の歴史の中で変わらず受け継がれてきた軸は、精密に鍛えられた複数枚刃と、毎分約1万4000ストロークのリニアモーター。この二本柱が深剃りと肌へのやさしさを両立させ、ブランドの信頼を支えてきた。

1962年に操業を始めた彦根工場では、刃の鍛造から最終組み立てまでを一貫して担い、年間180万台規模の本体と450万枚の刃を生産。技術とテクノロジーが融合する“ものづくりの現場”こそ、変わらない強みだ。

また、見学した彦根工場では、刃の製造から商品組立に至るまで徹底した品質評価が行われている。フロート寿命試験や転倒試験、流水試験といった評価試験を重ねる姿勢は、製品に対する責任感の強さが伝わってきた。

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一方で、時代に合わせて変えてきたことも多い。検査工程にはAIを導入し、“匠”と呼ばれる熟練工の目を学習させたシステムによって検査効率を約50%高めている。物流面では自動化システムを整備し、在庫保管スペースを削減する計画も進む。現場では「匠の技」を継承しつつ、効率化や高度化を並行して推し進めている。

環境への配慮も、これからの時代に欠かせないテーマだ。従来は加熱が必要だった外刃加工を常温工法へ切り替え、CO₂排出量を削減。さらに海洋ミネラルを配合した新素材「NAGORI®」を採用するなど、サステナブルなものづくりへと踏み出している。こうした取り組みは「しがCO₂ネットゼロみらい賞」の受賞にもつながった。

変わらない技術の礎と、変わり続ける社会や価値観への対応。その両輪が噛み合うことで、パナソニックのシェーバーは次の10年に向けて、新しい日常を形づくっていく。

国境を越える、手のひらサイズの革命

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国内での成長を足がかりに、パナソニックは世界市場にも視線を向けている。グローバル累計出荷台数はすでに2.4億台を突破。欧米と日本ではヒゲの質や剃り方の習慣が異なるため、同社は各地域で生活者調査を重ね、実際に試作品を使ったシェービングテストから得られるインサイトを製品開発に反映している。

例えば、日本では青ヒゲ対策や切れ味の良さが重視される一方、欧米では首回りの長いヒゲの剃り残し対策などが課題となる。こうした違いを読み解きながら、地域ごとに最適な方向性を見極めている。

2023年に登場した「パームイン」は、国内での評価にとどまらず、CES 2024ではアワードを受賞するなど海外ユーザーからも高く評価された。2025年に発売された70周年記念モデルはインバウンド需要でも支持を集め、贈り物や日本発のデザインアイテムとして注目を浴びている。今後は2030年度までに海外販売を2024年度比で2倍に拡大することを目標に掲げ、新たな市場を切り拓こうとしている。

日常を彩る“新しい身だしなみ”へ

パナソニックのシェーバー事業が歩んできた70年は、変わらない技術と、変わり続ける挑戦の積み重ねだった。複数枚刃とリニアモーターを磨き上げてきた職人技。AIや自動化、サステナブル素材による最新化。国内でのパームインの成功と、グローバルでの新たな需要開拓。

シェーバーは単なる「身だしなみの道具」から、生活を彩るパーソナルアイテムへと進化を遂げつつある。70周年を経た今、その先にあるのは「より美しく、より健やかに」という普遍的なテーマと、生活者の価値観に寄り添う新しいスタイルの提案だ。

変わらないものと、変えていくもの。その両方を胸に、パナソニックのシェーバーは次の10年を切り拓いていく。70周年の節目を迎えたシェーバーは、実用品からカルチャーへと広がり、次世代のライフスタイルを形づくろうとしている。

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Beyond magazine 編集部

“ユースカルチャーの発信地“をテーマに、ユース世代のアーティストやクリエイター、モノやコトの情報を届けるWEBマガジン。
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